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コスチュームに着替えたあと、零仔達は説明会会場に集められた。
他の学校の生徒達で会場は溢れかえっている。
(やっぱり…周りにライバルばっかりってのは却って落ち着かないわね)
雰囲気が受験前の教室のようにピリピリとしている。
いや、鈍った精神を叩き戻すには寧ろ丁度いいといったところだろうか。今からやるのは期末のような優しいものじゃない。
ましてや雄英の受験のようなものでも。
れっきとした席の奪い合いが始まる。この、大勢の中で。
(…それにしても、何だ?やけに視線を感じる)
盗み見ているつもりか?バレバレである。
間違いなく他の学校の生徒達は零仔を、いや雄英生を見ている。いかに強豪校とはいえ注目を集め過ぎではないだろうか。
一方士傑は雄英程は集めていない。寧ろ一部の士傑生すらも雄英を盗み見ていた。
グルか?いや。考えにくい。
つまりこれは、他校の中で自然に芽生えているもの。
―――そうだ。雄英は雄英体育祭で個性が割れている。そりゃあそうだ、この中で個性が割れているのは雄英『だけ』だ。
しかも圧倒的強豪校。皆出る杭を打ちに来るに決まっているだろう。
試験が始まれば雄英が集中放火される可能性が高い。
零仔の個性は集団行動の中では極めて扱いにくい。中々厳しいが、始まれば単独行動をした方がいいだろう。
他校への対策を脳内でシミュレーションしまくっている所で、説明会が始まった。
「えー…ではアレ、仮免のヤツを、やります。あー…僕、ヒーロー公安委員会の目良です。好きな睡眠はノンレム睡眠。よろしく」
なんか…目の下の隈がスッゲエ人来たな。大丈夫か。
「仕事が忙しくてロクに寝れない…!人手が足りてない…!眠たい!そんな信条の下ご説明させていただきます」
(((疲れ一切隠さないな大丈夫かこの人)))
会場の心が一つとなった。
まあ、それはさておいて。
「ずばりこの場にいる受験者1450名一斉に、勝ち抜けの演習を行ってもらいます」
勝ち抜け。ざっくりとした説明だが、つまりはこうだ。
現代はヒーロー飽和社会と言われ、ステイン…ヒーロー殺し逮捕以降ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくない。
『ヒーローとは見返りを求めてはならない』。『自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない』。
動機がどうであれ命がけで人助けをしている人間に「何も求めるな」は現代社会において無慈悲な話ではある。
とにかく、対価にしろ義勇にしろ多くのヒーローが救助・敵退治に切磋琢磨してきた結果、事件発生から解決に至るまでの時間は引くくらいに迅速になっている。仮免を手に入れれば我々ヒーローの卵たちはその激流の中に身を投じる事になるのだ。
そのスピードについていけぬ者はハッキリ言って厳しいだろう。
厚い皮膚より早い足、試されるのはスピードだ。
提示されたそれは『条件達成者、先着100名』。
「待て待て1540人だぞ!?5割どころじゃねえぞ!!?」
「まァ社会で色々あったんで…運がアレだったと思ってアレしてください」
目良さんよ、我らは年寄りじゃないからアレだのソレだので通じる年代じゃないんですよ。
目良が提示した条件というので見せられたのは、ポインターとボールだ。
このポイントは3つ、身体の好きな場所で尚且つ常に晒されている所に取り付ける。足の裏や脇では駄目だ。
そしてボールを6つ携帯する。このポイントはボールが当たった場所のみ発光する。3つ発光した時点で脱落だ。
3つ目のターゲットにボールを当てた人が倒したことになり、そして2人倒した者から勝ち抜くという事だ。
それが先着100人。雄英生は21人いる。
(なんて厳しいんだ…全員は無理かもしれないわね…)
悔しいが、入学試験や体育祭とは比べ物にならない程に苛烈なルールだ。
「えー…じゃあ『展開後』ターゲットとボール配るんで、全員に行き渡ってから1分後にスタートとします」
「…展開?」
轟の疑問の声のその次の瞬間、突如会場の天井が「開いた」。
こ、これは。なんという金の使い方だ。
天井だけではなく、四方の壁も外に開いていく。
そこから見えたのはビル群、岩山、工業地帯、住宅街、森といった様々なパターンのコースだ。
こりゃあ目良さん、そりゃ寝られねえわな。
(さて、私はどうしようか?)
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