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会場が開けたところでそろそろ1分が過ぎようとしている。
「先着で合格なら同校で潰し合いはない…寧ろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋…!皆!あまり離れず一塊で動こう!」
緑谷の言い分は尤もだ。
だが。
「フザけろ遠足じゃねえんだよ」
「バッカ待て待て!」
爆豪が早速単独行動を開始した。それを追って切島も離れていく。
「俺も。大所帯じゃ却って力が発揮できねえ」
「轟くん!!」
「ごめんなさい、私の個性も集団の中で使うと危険だから単独で動くわ」
「栂野さんまで!?」
遠くからカウントダウンが聞こえ始めている。
緑谷も遠ざかっていくクラスメイトを追うより今の状況の維持を優先した。
『4 3 2 1 ……STAAAAAAAAAAART!!!!』
(ほら)
来た!!!!
零仔の目の前にざっと数倍の人員の他校生が躍り出た。
やはり雄英を潰しに来たのだ。そりゃそうだ、自分だって他校生ならそうしただろう。
そしてこの混乱に乗じて漁夫の利を狙いに来る輩だっている。
「見つけたぜェ『温度操作』の個性のカワイコちゃん!!」
「先手必勝だァ!!!」
「直接的な攻撃力がねえ個性だからな!!潰せ!!」
一斉に、浴びせられるように降りかかってくるボール。
予測していた。ならばやる事は、簡単だ。
まずは絶対的に安全な防衛ラインを引く事。自分の要塞を作り上げよう。
「へえ…」
ニィ、と零仔が笑んで見せる。
ボールを投げつけた大勢の中の数名が、その笑みに嫌な予感を覚えた直後。
ジュッ、と音を立てる間もなく、ボールは『蒸発した』。
「な…っ!?」
ひとつ残らずボールが蒸発する。
ゆらゆらと零仔の周囲に陽炎が立ち込める。まるで不可視の炎に囲まれているかのようだ。
「暑っっっちぃい!!??」
「なんだこりゃ…!」
「ええ。私に触れたら火傷じゃ済まないわよ」
一歩踏み出す。それに合わせて、周囲の地面があまりの熱に融解し始めた。
「コンクリートが熔けて…!!」
「そうよ。今私の周囲の温度は――――――3000℃よ」
「「「!!?」」」
3000℃。息も出来ない程の熱だ。
太陽の表面温度が6000℃程なのだから、その2分の1。
「ほら。今の私はがら空きよ。どっからでも来なさい」
「……おいおい……チートだろ……」
「来ないならこっちから、行くわね」
熱の壁を消し、その名残の中で極限まで冷やした空気を作り出した。
次の瞬間。周囲を消し飛ばす程の大爆発が起こった。
《!!!??なんだ!!!??》
放送が聞こえる。目良の声だ。
風を軽く起こして土煙を晴らす。スゲークレーターが見えた。
(ちょっとまだ制御難しかったかな……うん…やりすぎた…)
吹っ飛ばされた他校の面々にはあらかじめ空気のクッションを作っておいた為に大事には至らなかったものの、見事に全員失神している様子。
だが好都合だ。これ幸いとボールを手に失神した皆さんの所に行き、ポイントをこれ幸いと取らせてもらう事にする。
(2人とか言ってたけど勿体ねえし皆貰うか!)
折角なので皆から頂いた。すまねえな!
貰ったところで、零仔の身体につけられたターゲットが3つとも光った。
『通過者は控室へ移動してください』
「喋った…」
『早よ』
「何故急かす」
《えーと!?早くも1人目通過!!脱落者24名!!ちょっとびっくりして軽く目が醒めましたわ》
そりゃよかったな。
直後、凄まじい揺れを地中から感じた。
あちらの岩山の方だろうか。地震の個性を持つ誰かが暴れているんだろう。ここが新たな戦場となる前にさっさと控室に避難しよう。
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