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「炎と風の熱風牢獄か…いいアイデアだ。並の敵であれば諦め…泣いて許しを乞うだろう。…ただ、そうでなかった場合は?」
炎の渦の中、ギャングオルカは一切動じなかった。
腰のホルダーから海水の入ったペットボトルを取り出し、頭から勢いよくそれを被る。
最大の弱点である乾燥は、轟と夜嵐の決死の足掻きはその瞬間水泡に帰した。
「撃った時には既に…次の手を講じておくものだ」
次の瞬間、超音波の衝撃波で一瞬にして炎の渦を払った。
そして、さて、何事もなかったかのように。
「で?次は?」
打つ手なしだ。万事休す。
轟と夜嵐は手を尽くしてしまった。
ギャングオルカが夜嵐に一歩歩みを出そうとしたその時、2つの影が空から突っ込んでくるのを確認し咄嗟にギャングオルカは腕でガードする。
「二人から」
「離れなさいッ!!!」
緑谷と零仔の蹴りと拳はギャングオルカに敢え無く防がれる。
それでもいい、なんとかしてこの二人を守らなければ。
「栂野ッ…!緑谷…!!」
(おまえらは、どこまでも…!!)
その時、会場にホイッスルが鳴った。
そのあまりの音に驚いて肩を跳ねさせる。
《えー只今を持ちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。誠に勝手ではございますがこれにて仮免試験全行程終了となります!!》
「終わった!?」
「はぁあ…!!」
《集計ののちこの場で合否の発表を行います。怪我された方は医務室へ…他の方々は着替えて暫し待機でお願いします》
「終わりのようだ。残念だな」
ギャングオルカが実に残念そうに呟いた。
彼は彼なりに生徒達に期待し、楽しんでいた様子。悪い顔だ。
だが今はそれより。
「轟くん夜嵐くん!大丈夫!?」
緑谷が向かい合って地面に伏している轟と夜嵐に声をかける。
双方麻痺で動けない様子だ。
冷静になったところで、ふつふつと怒りが蘇ってくる。零仔の雰囲気が変わったのを察したのか、気まずそうな表情で轟が零仔を見上げた。
「え、えっと…栂野さん…」
「緑谷くん申し訳ないけど夜嵐君の方をお願いできるかしら。医務室まで運ぶのを手伝って欲しいの」
「え、あ、うん!」
緑谷は言われた通り、麻痺して動けない夜嵐に肩を貸す。
少し末端が稼働する夜嵐に対して轟はもろに超音波を喰らった為にまともに動けない様子だ。零仔は轟に肩は貸さなかった。
「……おい……栂野…」
「何かしら」
「この抱き方…やめろ………」
「知らないわね」
轟を横抱きにしてやった。俗にいうプリンセスホールド、お姫様抱っこという奴だ。
これだとお姫様抱っこというよりお姫様が抱っこだ。もうこの際どっちでもいい。
まともに足が動かない今肩を貸しても邪魔なだけだ。
「背負うなり、あるだろ…………」
「知ったこっちゃ無いわよ。反省しろ」
「ぐっ……」
「夜嵐君もあとで説教よ」
「うぅう……」
轟をお姫様抱っこした零仔は何故か自然と開けられる道をさっさと通過して医務室に向かった。
「……前轟くんがキレた栂野ヤバイって言ってたんだけど…やばいね…」
「…ああ。反論の余地を与えない」
「完全にキレてたね、あれ…」
「こわ…怒らせんとこ…」
A組全員、轟と夜嵐の攻撃が真堂に向かった際に発された零仔のブチギレ怒号に確かに怯んだ。
アレを真正面から喰らったらきっとより恐ろしいに違いない。
鶴の一声というよりあれは女王の一喝か。
絶対に怒らせるまいと、皆固く心に誓った。
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