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医務室に轟と夜嵐を運び、双方喝をブチ込み、さっさと戻って着替えを終えた。
皆着替えを先に終えており更衣室には零仔だけだ。
すごく疲れた。

更衣室から出て会場に戻る通路を歩いていると、向かいに見覚えのある姿があった。

「あ……!」
「ン…?」

シャチの頭。白いスーツ。
ギャングオルカがいた。部下達と一緒に。
全く予期しなかった鉢合わせに心臓が跳ね上がった。やべえ。ゴタゴタで意識できなかったけど、本当に本物のギャングオルカだ。
目が合った。

「あ、雄英の…この前シャチョーが職場体験で珍しくスカウトした子じゃないっスか!」
「フム…」
(えっ待ってなんかこっち来る)

やべえ。えっでけえ。体格がやばい。
語彙力が次々と蒸発していく。
ギャングオルカはツカツカとこちらへ歩み寄ってきて、目の前で止まった。圧がすごい。
完全に固まっている零仔に、ちょっと心配したっぽい部下達がギャングオルカの後ろから覗き込んできている。ギャングオルカはただでさえ顔が怖いのだ。敵っぽい見た目のヒーローランキングにランクインしているほどなのだから。
萎縮しているのでは?と心配してきているのだろうが、残念ながら零仔は、

「……や、やっぱりかわいい……」
「は?」
「「「えっっ」」」

あまりに場違いすぎる零仔のうっかり零した本音に、その場にいた全員が呆気にとられた。
予想だにしていなかったのだろう。ギャングオルカも不意を突かれて硬直した。
自分が何を言ったのか漸く気付いたらしい零仔がハッとして狼狽え始める。

「あ、あああごめんなさい…!私なんてこと…!!」
「スッゲエなこの子…!!」
「シャチョーが硬直している!!」

何故か部下達は称賛し始める始末だ。
いや、フォローしろよ。上司だろ。
だがさすがはプロヒーローといったところだろうか、直ぐにギャングオルカは持ち直した。

「…ゴホン。最後の奇襲は見事だった、栂野」
「!?あ、ありがとうございます!」
「体育祭でお前の戦い振りは見ていたが、より力を付けたようで結構だ。まだまだ粗削りだが」
「…!!」

大好きなヒーローにそう言われて、嬉しくないはずがない。
白い頬を赤らめさせ、零仔は全力で頭を下げた。
ギャングオルカはそれに目を細めると、静かに踵を返した。
去っていく背中に呼びかける。

「っありがとうございます…!精進します!!」
「…ここまで来るのを楽しみにしている」
「はい!…ッこれからも応援しています、ギャングオルカ!」

ギャングオルカは振り返る事はなかったが、手を軽く上げる事で零仔の応援に返事を示した。
思ってもなかったエンカウントに、零仔は気分が高揚するのを感じていた。

(ギャングオルカと話しちゃった…!ああ、サイン貰えばよかった!)




一方。


「シャチョー良かったっスね!女の子のファンですよ!」
「喧しいぞ」
「顔怖いって言われるの気にしてたじゃないっスか!可愛いって言われましたよシャチョー!」
「五月蠅い」





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