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色々あったが会場に戻って来た。
皆ほぼ集合している。
皆はどこだろうと探していると、芦戸が遠くから手を振っていたのでそれを頼りに合流が出来た。
「遅かったね〜トイレでも行ってた?」
「あのね、ギャングオルカと話せたの…!」
「えっマジ!?会えたの!?」
「やっぱり可愛かった…」
「…いや、うん、あ、そう…」
皆の反応は微妙だが、良かったね、という風に思われている様子。
なんでや。ギャングオルカ可愛いやろ。
ムスくれていると、ふと轟の背中を発見した。駆け寄ると、こちらの足音で気づいたのか轟が振り返った。
「もう動けるの?」
「おう。もう平気だ」
「よかった」
少しだけ土のついた顔。…色々あったけれど、彼も頑張った。
後は結果を待つのみだ。
そのタイミングで、目良がマイクにスイッチを入れた電子音が響く。結果発表の時間が来た。
《皆さん長い事お疲れさまでした。これより発表を行いますが…その前に一言。採点方式についてです》
目良が指を二本立てた。
《我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる、二重の減点方式で貴方方を見させてもらいました。つまり…危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています》
減点方式だったのか。
じゃあ思ったよりも低い点数かもしれない。
そんな不安が胸をよぎった。
《とりあえず合格点の肩は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上でご覧ください…》
目良の背後にあった巨大なモニターが起動する。
一斉に書き出される名前に皆が食らいついた。
零仔も必死で自分の名前を探し――――中央付近に書き出されていたその名前に、深く安堵した。
『栂野零仔』と、確かに名前があった。
仮免試験、合格していたのだ。
だが――――やはり。轟の名前は、無かった。
「轟!!」
夜嵐の声だ。振り返ると、夜嵐がこちらへと向かってきていた。
夜嵐の名前も書き出されてはいなかった。
夜嵐は轟の前で立ち止まると、勢いよく頭を下げて額を地面に思いきりぶつけるという例のあのお辞儀を見せた。
「ごめん!!あんたが合格逃したのは俺のせいだ!!俺の心の狭さの!!ごめん!!」
その勢いに怯んでいた轟も、その言葉に表情を戻す。
その表情は、穏やかだった。
「元々俺が蒔いた種だし…よせよ。お前が直球でぶつけて来て、気づけたことも、あるから」
轟が落ちた事は皆意外だった様子だった。
そして何より、なんと爆豪も落ちたとの事だ。ツートップが両方落ちている。
これは驚きの結果だ。いや…寧ろ、二人ともトップだったが故に周りを見れてなかった部分が仇となったのだろう。
後に皆に採点内容が詳しく書かれた書類が配られた。
零仔は90点だった。
ほぼ文句はなし、だが訓練不足だった為に少しばかり動きに無駄があったらしい。
ボーダーラインは50点。減点方式であるが故に加点はなく挽回も望めない。
ならばなぜ、50点を切った時点で退場させなかったのだろうか。それが指す意味を、零仔は薄々感じ取っていた。
仮免許を手に入れた零仔達は緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できるようになった。
プロの指示が無くても自分達の判断で行動ができるようになったという事。つまりは、その行動一つ一つに社会的責任が生じるという事だ。
《皆さんご存知の通りオールマイトという偉大なヒーローが力尽きました。彼の存在は犯罪の抑制になるほど大きなモノでした》
あの痩せ細った姿を思い出す。
そして、追随して思い出せる。あの痩せて衰えた薄暗い瞼の奥の、強く輝く眼を。
《心のブレーキが消え去り、増長するものはこれから必ず現れる。均衡が崩れ世の中が大きく変化していく中、いずれ皆さん若者が社会の中心となっていきます》
次は我々だ。
次は自分達が規範となり抑制できるような存在とならねばならない。
これはあくまで『仮』免許証だ。半人前もいい所である。後は学び舎で学べという事だ。
《そして…えー不合格となってしまった方々。点数が満たなかったからとしょげてる暇はありません。君達にもまだチャンスは残っています》
その言葉に、夜嵐たちは顔を上げた。
《三か月の特別講習を受講の後、個別テストで結果を出せば、君達にも仮免許を発行するつもりです》
「「「!?」」」
《今私が述べた『これから』に対応するには、より「質の高い」ヒーローがなるべく「多く」欲しい。一次は所謂「落とす試験」でしたが、選んだ100名はなるべく育てていきたいのです》
カリスマを待つのではない。待ちの姿勢ではもう遅すぎる。
時代は変化していく。
切り捨てるよりも、育てていくのだ。次の世代を。
全員決して見込みがないわけではなく、至らなかった点を伸ばせば合格者以上の逸材になる者達ばかりだ。
学業との並行で忙しくなるだろうが、それでも彼らなら。
「良かったわね」
「おう。……すぐ、追いつく」
そう言った轟は、珍しく、笑っていた。
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