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その後も何事もなく授業は進み、お昼になった。
蛙吹は先生に授業の事で質問があるから、お昼を一緒にすることができないと言われた。
あの込み具合だし、今日の昼はどうしようかと考えていると。
「やっほー、栂野さん一人?」
「えっ、う、麗日さん?」
「お昼誰かと一緒に食べる予定ある?良ければ一緒に食べない?飯田君とデクくんも一緒だけど」
「……あ、えっと、…彼らが、嫌で、ないのなら」
「ウン、じゃあ決まり!いこ、席取られちゃうよ〜」
手を取られて教室を飛び出す麗日に引っ張られる。
ご、強引だ。なんて明るい娘なんだ。
廊下には麗日を待っていたのであろう飯田と緑谷がいて、こちらに気づいた。
「麗日くん!廊下を走ってはいけない…おっと、栂野くんも一緒か?」
「うん!一緒にご飯どう?って誘ったの!大丈夫かな?」
「勿論だとも!」
「うっうん!僕も全然いいよ!」
「ど、どうも…」
快諾されてしまった。
その流れのまま食堂へ行くと、お昼時の食堂は全ての科の生徒が集まる為にごった返していた。
何とか席を取り、全員各々のメニューを注文し終えて席に着く。
麗日は和食定食、緑谷はカツ丼、飯田はカレー、栂野は山菜うどんを頼んだ。
「いさ委員長やるとなると務まるか不安だよ…飯田君にも一票入ってたし、飯田君の方がいいんじゃないかな」
緑谷のふと零れた弱音に反応する。
「ツトマル」
「大丈夫さ。緑谷君のここぞという時の胆力や判断力は『多』を牽引するに値する。だから君に投票したのだ」
(おま…あんだけやりたがってたのに結局緑谷君に投票したのか……)
クソ真面目かよ。
熱いうどんを冷ましながら心の中でツッコミを入れる。
「でも飯田君も委員長やりたかったんじゃないの?メガネだし」
ホント何気にざっくりものを言うよな麗日さんは。
思った事をはっきり言ってしまうんだろうな。
いやいい事なんだろうけど。あとおべんとついてるよ。
「「やりたい」と相応しいか否かは別の話…僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」
「………「僕」?」
「「僕」…!!」
確か飯田、一人称は「俺」だったような?
もしかして飯田は…と思っていたところ、流石麗日思ったら切りこんでいく性格だった。
「ちょっと思ってたけど飯田君て坊ちゃん!?」
「坊!!」
ちょっと思った事でも言っちゃうんかい君は。
そして緑谷と麗日の熱すぎる視線を受ける飯田の憐れな事よ。
せめてこちらはいつもの視線を向ける事にする。おまえの味方だ飯田。頑張ってくれ。
「………そういわれるのが嫌で一人称を変えてたんだが…ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」
「「ええーーー凄ーーー!!!!」」
「ターボヒーロー・インゲニウムは知ってるかい?」
インゲニウム、その名前はヒーローに疎い零仔でも知っている大人気ヒーローだ。
見たことだってある。
その時の歓声たるや、ああこれがヒーローなのだと零仔に再確認させるほどのものだった。
緑谷の飯田をも唸らせるヒーロー知識には閉口せざるを得なかったが。さてはオタクだなオメー。
「ああ。それが、俺の兄さ!規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!!俺はそんな兄に憧れヒーローを志した」
そう笑う飯田の顔は誇りに満ちていた。
憧れを追いかける人間の目は、みんなまばゆい光に満ちている。
「だが、人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。上手の緑谷君が就任するのが正しい!」
「……なんか初めて笑ったかもね、飯田君」
「え!?そうだったか!?笑うぞ俺は!!」
「いつも表情硬いから、飯田君は。人気ヒーローになるなら、真面目な顔の他にも子供達に好かれるようないい笑顔が常に見られないと」
「ムム……」
零仔の指摘に、確かに…と思考モードに入ってしまう。
どこまでも真面目だな、彼は。
それが彼の美徳でもあるのだが…
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