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さて、バスが到着したのはテーマパークかと見紛うほどの大規模施設だった。
「すっげーーーー!!!!!」
「USJかよ!!!?」
本当にUSJみたいだ。
あの水の所とか、ジョーズみたい。
「水難事故、土砂災害、火事…etc.あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です!その名も……ウソの(U)災害や(S)事故ルーム(J)!!」
本当にUSJだった。
これ良いのか、色んな意味で。
いやそれよりも、そう言って登場した宇宙服のヒーローに見覚えがあった。
スペースヒーロー「13号」。
何とも言えない宇宙服が生み出すモチプニボディと可愛いヘルメット。ビジュアルも好みなのだが、そこではない。
「えー始める前にお小言を一つ二つ……三つ……四つ……」
増えていく。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んで塵にしてしまいます」
そうだ。
13号の個性は、何でも吸い込み塵芥と同じにしてしまうブラックホール。光でも、どんなに容量が多くても。
それ故に、
「人を簡単に殺せる力です。皆の中にもそういう個性がいるでしょう」
「………」
正にこの個性がそうだ。
触れるだけで人を殺せる力。災害だって起こせる。
零仔の表情は曇った。
「超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる『行き過ぎた個性』を個々が持っている事を忘れないでください」
13号の言っている事は尤もだった。
「相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。
この授業では……心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう!君達の力は人を傷つける為にあるのではない…救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな!」
個性を人命救助に使う。
本来この個性は災害救助で重宝される個性だ。温度操作による恩恵は大きなものとなるだろう。
だが、零仔はこれが人を傷つけるものに見えてならないのだ。
怖い。
この個性が、怖い。
13号のお小言が終了し、拍手が起こっている。
確かに素晴らしいものだった。
ヒーローとは何たるかを説く、大切な事だから。
一人こうして俯いている中、一瞬、肌を撫ぜる寒気を感じた気がして顔を上げた。
「…?」
同じく相澤もそれを感じたのか、眠そうな顔を真剣なものに変えて、零仔と同じ方向を見ていた。
その先は中央にある噴水。そこの空間が黒い靄に侵蝕されていく。
その真ん中から、まるで手に全身を覆われたような姿の男が顔をのぞかせる。
「相澤先生、あれ……」
「下がれ!全員一かたまりになって動くな!!!!」
「…え?」
相澤が声を張り上げ、13号が素早くその背に生徒たちを庇う。
まさか、あれは。いやそんなはずがない。
だってここにはセンサーがある、侵入してくるはずがない。
侵入してくる、はずがない。
…いや。
空間移動の能力を持つ、敵なら?
「何だアリャ!?また入試んの時みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!!あれは敵だ!!!!」
「13号に…イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムでは、オールマイトが此処にいる筈なのですが…」
黒い靄の姿をした男が言う。
「…やっぱり……」
「どっどうしたんだ栂野くん!」
「この前報道陣が校舎内に押しかけて来たときあったでしょう。ずっと引っかかってたの、あんな門、マスコミだけで突破できるはずがない。誰かが裏で手を引いてマスコミをそそのかしたの。きっとあいつらの仕業だ」
「なっ……」
事態の深刻さを漸く察したのだろう、生徒たちの顔が恐怖に染まる。
こうして敵と真っ向から向かい合うのは初めてだ。
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて………………子供を殺せば、くるのかなあ?」
途方もない、悪意が、突きつけられた。
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