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黒い霧が晴れ、見えた先には不安定な土の足場。恐らく土砂ゾーンだ。
予想通り敵がいる。

「行くぞ」

轟の一声がする。これが合図なのだろうと踏んだ、そして予想通り一瞬で敵が凍り付く。
相変わらず強力な個性だ。援護の必要もなかった。

「づぅっ…!!」
「何だこりゃ!?氷…!?」

「子供一人に情けねえな。しっかりしろよ、大人だろ?」

良い煽り持ってんな。
敵は見事に身動きが取れなくなっている。無理矢理動いたら足の皮がはがれてしまうから。
尚このままずっといてもだんだん身体が壊死していくだけだ。

「散らして殺す…か。言っちゃ悪いがアンタらどう見ても「個性を持て余した輩」以上には見受けられねえよ」
「これでオールマイトを殺すって言われてもどう見てもチンピラの寄せ集め…本当に危なそうなのは広間にいる数名ってところかしら」
「大方そうだろうな。…さて、いくつか聞きてえことがある」

轟が前に出る。
情報収集の為と危険を避けるために後方に下がった。

「このままじゃあんたらじわじわと身体が壊死してくわけなんだが…俺もヒーロー志望、そんな酷ぇことはなるべく避けたい。あのオールマイトをやれるっつう根拠…策ってなんだ?」


***


「大した情報は得られなかったな」

暫く尋問を続けるも碌な事は得られなかったらしい轟が帰って来た。
本当に下っ端らしく、ほとんど何も握っていないに等しかった。

「本校舎には行ってねえみたいだ」
「…広間に急ぎましょう、相澤先生が心配だし」

長居は危険だから広間に急ぎ、集まっている人数を確認し次第応援に行く。

「おい」

そんな零仔を轟が呼び止めた。
まだ何かあるのかと振り返る。
轟の目はいつも通り冷ややかだったが、どこか揺らいでいる気がした。

「…何」
「……この前の屋内戦闘で、お前言ったよな。俺が目の前の敵すらも見えてねえって。あれ、どういう意味だ」
「どういう意味って…そのままの意味よ。貴方あの時私の事見てすらなかったじゃない。貴方はずっと私越しに「誰か」を見てた」

今だってそうだ。
見てるようでいて見てない。
ただずっと、はるか遠くを睨みつけている。同じ目をしていた人間を知っているからわかる。
さて、このままでは気に食わない。こちらもずっと温めていた問いを投げかけるとしよう。

「……じゃあ、私も聞くけど。…なんで貴方、炎を使わないの?」
「…!」
「あの時の試験なら、私に氷より炎が有効なのは貴方ほどの実力ならすぐに分かったはず。体温調節という意味でも、氷を使った後は炎を使うのが当然よね。でも貴方は頑なに炎を使わなかった。どうして?」

轟の目つきが一気に冷えた。どうも地雷な話題らしい。
どうもその炎の方はデメリットよりも彼自身の意思が関係しているんだろう。

「お前には関係ねえだろ。俺の炎の事も、俺が誰を見ていようと」
「……そうね、結果的には関係はない。ただ……」

そこまで言いかけて、言葉がつっかえた。

(貴方にそんな目をしてほしくなかった)

そんなことを言おうとして、何故コレを言おうとしたのかと自分に問いたくなった。
途端、どこかで、自分の中で何かが引っ掛かった。靄がかっていて不鮮明すぎる何か。

「……何だよ」
「………、……何でもないわ。ここで話す事じゃない。今は広間に行くのが先決でしょ」
「…………」

納得がいってなさそうな顔だが、時間がないのは同じなのだ。
また今度機会があればいくらでも喧嘩上等だ、別に殴り合いでも結構。
気が合わないのは確かだろうし。

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