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衝撃の事実から幾日か経った。
その時の衝撃はまだ胸の内にあるが、体育祭もあるから、それを払拭しようと只管稽古に打ち込んだ。
此方が覚えていても、もうあっちは覚えていないかもしれない。
覚えて、いないだろう。
相当小さい頃だったから。
(今は鎬を削り合うライバル。それに、仲もそんなに良くないんだから。……変に意識すると集中できなくなる)
今は忘れよう。
そんなこんなで、今日。
体育祭、当日だ。
(うおおお!!寝坊!!馬鹿じゃねーのか私は!!!!!!!)
学校が近くて幸いだった。
裏門から飛び込み、1-Aの控室へと飛び込む。
もう既に全員集まっている様子だった。
「遅いじゃないか栂野くん!!遅延か?」
「いや……はぁ、はぁ、ちょっと…」
「とりあえず息を整えて」
蛙吹のアドバイスに深呼吸をして息を整える。
呼吸も落ち着いたところで。
「…寝坊した」
「ま、また珍しいタイミングで…」
「ある意味図太いな〜栂野は」
麗日と切島にツッコまれまさにその通りだとも思ったが、切島に関しては少し違う。
まあ単に寝つきが悪かったのだ。
緊張とはまた違うが、考え込み過ぎると人は眠れなくなるとはよく言う。
それにしても。
「……なんか緊張感すごいな」
「ああ、それなんだけど…」
葉隠がコソッとこの謎の緊張感に対しての答えを教えてくれた。
どうもこの緊張感は体育祭前の物ではないようだ。
「さっき轟くんがね、緑谷くんに宣戦布告したの」
「…轟くんが?」
「そ。まあ、栂野さんに言うのも、アレなんだけどさ」
「?」
「栂野さん、轟くんとそこまで折り合い良くなさそうだったから。この前のUSJの時もそうだったし、後から聞いたけど屋内戦闘の時も喧嘩腰だったって」
「…USJの時、葉隠さん土砂ゾーンにいたの…?」
「いたよ!!危うく凍らされるところだったんだよ!!」
それはご愁傷様である。
それにしても、轟が緑谷に宣戦布告。
確かに、緑谷の個性は派手だ。超パワー、オールマイトを彷彿とさせる。
越えるべきだと、思ったんだろうか。
「………」
「……零仔ちゃん?もう入場よ」
「えっ、あ、うん。行く」
蛙吹に声をかけられて我に帰る。
そうだ、今は誰かの事に気を取られている場合じゃない。
(おじいちゃんとおばあちゃんも見てる。ベストを尽くすの)
皆と暗い通路を歩く。
どこかしら皆表情は堅い。でも、目線だけは真っ直ぐに前を向いている。
誰しもが一番になりたいと思っている。
そこに嘘偽りはない。
(当然私だって一番になりたい)
負けを望むなんて真似はしない。
『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?』
プレゼント・マイクの声が聞こえる。
今年も彼が実況か。なるほどそれは盛り上がるだろう。
『敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!ヒーーーーーローーーーーー科!!!!1年!!!!!!』
通路が終わる。
外に出る。待ち受けていたのは、眩い歓声だった。
『A組だろぉぉ!!!!!!?????』
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