4




トーナメントの組が発表され、それをよく見てみた。

(私…シード…???)

『今回参加人数は奇数!!ということで一人シード権を獲得したっつーわけだぜリスナー!!』

第一戦は緑谷VS心操、第二戦は轟と瀬呂、第三戦は塩崎VS上鳴と続く。零仔は第三戦の勝った方と対戦となる。
体力が温存できるが、一度勝っている相手と対戦するのだ、そう簡単にいかないのが戦闘である。
もう既に勝利を一度手にした相手との戦闘、シードはその点スロースタートになる。寧ろハンデに近い。

そもそも、場合によっては緑谷と当たる可能性もあるのだ。
あの超パワーの前で一体何ができる?それを考えなくてはならない。
全員への対策を練り、そして彼らの対戦を見て常時情報を更新していかなければならない。
課題は山積み。そして考えられる時間もわずかだ。

先ずは第一戦。緑谷VS心操。
先手で緑谷が心操の個性を喰らって動けなくなった。そのまま場外かと思ったが、ここで緑谷が個性の暴発で指を犠牲に個性を解除。
そのまま背負い投げされ、心操が場外に。だが、この件で彼の能力は多くのプロ達にも認められていた様子だった。
―――夢ではない。きっと現実になる。

会場を後にしようとする心操と目が合った。
「ほらね、」と口パクで伝えてやると彼は肩をすかしたようにあげて、そして笑った気がした。

第二戦、轟VS瀬呂だが。
これは、ほぼ瞬殺に近かった。
轟の突如の最大出力の氷結により、瀬呂が行動不能に。轟らしくもない。
焦っているようにも見えた。

第三戦、塩崎VS上鳴。この勝者が次の零仔の対戦相手となる。
結果は瞬殺だった。上記の瞬殺に近いのではなく、瞬殺。
一瞬で終わるからと上鳴は言っていたが一瞬で終わらされていた。悲しい。芸人かな。

(つまり、次は塩崎さんか…)

個性はツルなのだろう。切り離しができ尚且つ壁も張れる。伸縮自在な頭のツルが武器。
拘束されたら厄介だ。痛そうだし。

第四戦は飯田VS発目。これはもう結果決まっているのでは?
ちょっと控室によって祖母に試合前のメール送るか。祖父に「気合が足らん」と怒られそうだが。

「あれ?どこ行くの栂野〜」
「ちょっと、精神統一に」
「そっか。でもさ、今はライバルだけど…きっと栂野は大丈夫だって。勝てるよ」
「…うん。ありがとう、芦戸さん」

ニッと笑って芦戸は零仔を見送った。
いい子達ばかりだ。


控室に行くと、麗日と飯田、そして緑谷がいた。
次の対戦の事を話していたらしい。
相変わらず仲がいいようだ。

「栂野さん、次の対戦、塩崎さんだっけ」
「う、…うん。麗日さんは、爆豪君だったよね」
「そうなんだよ〜。……超、怖いよ」
「…」

あの爆豪の事だ。女の子であっても、きっと容赦はしない。
それは、本気で彼女を舐めずにかかってくるという事だ。
夢の為に、将来の為に本気で挑んでくるだろう。そこに容赦などあってたまるかという話なのだ。
だからこそ、素直にそこに恐怖を打ち明けられる彼女が、強いと思えた。

「大丈夫」
「…栂野さん?」
「貴方は強いわ、麗日さん」

勝てるよとは言わない。
お互いがお互いの腹の内を探り合うのではなくお互いに腹の内を出し尽くす闘い。
そこに決められた未来なんてない。
だから零仔にできる事は、自分がちゃんと強いという事を彼女にしっかりと理解させてやる事だけだ。
麗日は強い眼をした零仔に、笑った。

「ありがとう、栂野さん。でも、今はライバルだからね!私、勝つから!決勝で会おうぜ!」
「うん。決勝で」

ニッと笑って、親指を立てて、控室を出て行った麗日を見送る。


(……強いなあ、皆)

誰も彼もが、夢を持っている。
本気で夢を持って叶えようとしている。その為に本気でぶつかりに行っている。

自分は?

夢は、あるの?
彼らみたいに誇るべき夢は。

(………わからない)

「……栂野くん、浮かない顔をしているが…」
「…えっ」

飯田に覗き込まれる。どうやら俯いて考え込んでいてしまったようだ。
かなり身長差があるから、大分屈んでもらっていたようだ。

「ああ、ごめんなさい。ちょっと、考え事」
「…やっぱり、麗日さんの事が心配?」

緑谷が都合のいい事を言ってくれたので、「そうだね、やっぱりああは言ったけど、心配よ」と答えた。
勿論心配だ。だけどそれ以上に、彼らにはこんなこと言える筈もなかった。


(…最低ね、私)
.