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「…麗日さん、」
麗日VS爆豪の結果は、爆豪の勝利だった。
全て見た。全て見て、立派な試合だったと思った。
あそこまで練り上げて、考えて、講じた策を突破された。
まず爆豪に向かって低姿勢で突進。
麗日に浮かされればます麗日のペースとなるから、爆豪はとにかく麗日を近づかせなかった。
だが、低姿勢で突っ込んでくる麗日を爆撃で抑制していたから、視線が下にしか行かなかったこと、そして爆風で視界が狭まっていた事に爆豪は気づけなかった。
結果、自分の生んだ爆風で生まれた瓦礫をずっと上空に溜め込み続け、耐えて耐えて耐え抜いた麗日の瓦礫の流星群が爆豪を襲った。
…だが、爆豪の渾身の最大規模の爆発で、瓦礫は木っ端微塵に。決して小さな被害ではない、爆豪とて大きなダメージを負った。だが、麗日はその策の為に戦い続け、突破されれば、もう限界だった。
行動不能となった麗日は敗北した。
彼女は怖いと言っていた。
それでもあんなに果敢に挑んで、戦って。
(…やっぱり、強いわ。貴方は)
皆本気で戦っている。
命を懸けて、魂を賭けて。
なら、自分だってそれを賭けて戦わなければ、尾白に示しがつかない。
「……零仔ちゃん」
蛙吹が案じるように声をかけてくる。
次は零仔の番だ。
塩崎VS零仔、勝てば次は飯田との戦いとなる。
いつも身に着けている手袋を脱いだ。
相手へのリスクを考えていては、本気で戦えないと思った。
それを超えなければいけないと思った。
『PlUS ULTRA』。雄英生として、それに則らなければならない。
「頑張って」
「……行って来る」
廊下を進み、会場入りする。
まるで堰を切ったような歓声が、浴びるように聞こえてくる。不思議と頭の中は冷静だった。
塩崎と向かい合う。
『さァ次どんどんいくぜ!!まさかの上鳴を瞬殺ゥ!またもや完封なるか、塩崎茨! 対 轟と爆豪に並ぶA組の実力者!!まだその個性は全貌を見せず己が肉体でここまで突き進んできたってな!!シヴィー!!栂野零仔!』
塩崎がどう来るのかは二択。
此方の攻撃の防御に入るか、即効此方を捕獲に入るか。
『STAAAAAAAAAART!!!!!!!!!!!』
「失礼」
開始早々仕掛けてきたのは塩崎だった。
髪のツルを一気に伸ばし、こちらを捕獲しに入る。そりゃそう来る、今まで肉弾戦に頼ってここまで上がって来た者に対する行動はこちらの方がいい。
あえてここはツルに行動を任せた。
ツルは凄まじい勢いで身体に絡みつき、身体を縛り上げた。
『オイオイィ速攻かよ!!早ぇぜ早ぇぜ!!』
プレゼント・マイクの実況と、爆発的な歓声がスタジアムを覆う。
だが。
『いや…ちげえな』
「ええ、違うわ」
相澤の冷静なコメントが歓声の響き渡るスタジアムの中に淡々と響き、それに応じるように淡々と零仔も行動を始める。
手足の周囲の温度を急上昇させる。あまりの高温にツルが発火し、ツルの束縛から逃れる。
「燃えた…!?っそれが個性ですか…!」
「そうだけど、違うわね」
体勢を立て直した塩崎がツルの追撃を放つ。今度は拘束ではない。場外を狙った波濤攻撃だ。
ツルの大波が襲い掛かる、ド派手な攻撃。植物系の個性は拘束質量どれをとっても強いから困りものだが。
「所詮『植物』」
ツルそのものの温度を急上昇させた。
余りの高温にツルは燃える事すらなく、一気に灰となる。
波濤を難なく乗り越え、塩崎へと一直線に向かった。塩崎は再びツルを差し向けるが容易く焼き切り、そのまま間合いに入った。
「そこ…!」
「!」
だが、そこは塩崎の作戦だった。
間合いにはいった途端に両真横背後から大量のツルが襲い掛かって来た。
捨て身の攻撃、それも場外。直接の攻撃力を持たないからこそ、不意打ちでの場外を選んだ。
『塩崎再びツルの大サービスゥウーーー!!!不意打ちの大津波、栂野絶体絶命かァ!!?』
「…?……っいや、違う…!!」
このツルの大津波。うねり動くツルだが、植物とは例え一本が細くとも質量が多ければ多い程密度も強固となり、そして強力な足場となる。
『…ン?ンンンン!!?オイオイオイ!?走ってねえか!?ツルの津波の上を走ってやがる!ポニョかよ!!』
「もっといい表現ないの?」
祖父の平均台特訓が此処で役に立った。
突出したバランス能力が功を奏した。
でも、いつまでもここで大道芸を披露するつもりはない。そろそろ終わりにする。
フィールドを覆い尽す程のツルの大波濤、温度を上げる。一気に発火したツルは燃え広がり、まるで山火事のような大火災を引き起こした。
「…っ!!」
「ここで更にツルを広げてもいいわよ。燃えるだけだから」
「…………ええ、成す術がない。術は、使い果たしました…降参です」
塩崎の降参にミッドナイトが鞭を上げる。
「二回戦進出、栂野さん!」
『勝者栂野ーーー!!!!引っ張りに引っ張ってようやくまともに個性を使ったと思ったらスゲー個性じゃねーか!!ズリィなもう!!』
「使いどころが限定されてくる個性だから使えなかっただけなんだけど…」
まあいい、もう好きにしてくれ。
歓声の爆発に晒されながら、零仔は次に行われるであろう戦いに、思いを馳せた。
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