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気が付いたら保健室だった。
何度目だろうこれも。いつも気絶してばかりだなとそろそろ諦めの境地に入りつつあった。

体温の調節機能が狂って軽い低体温症に陥っていたようだが、轟が外部から温めてくれていたらしく、その後何とか自分で調節できるくらいにまでは回復した。
あとはリカバリーガールの回復で何とか間に合った。

会場に戻る前にリカバリーガールに、全力で頭を蹴ってしまった飯田は大丈夫だったかと聞いたが、飯田は少し回復してもらった直後、すぐに急用で早退してしまったらしい。
あの飯田が早退するほどだ、何があったんだろうと気になった。


戻ればもう決勝戦は終わってしまっていた。
色々と大切なものを見逃してしまっている。常闇の戦いも見てみたかったのに、爆豪戦は麗日との試合しか見られなかったことが悔やまれる。


すぐに収集され、閉会式が始まった。
色取り取りの煙玉がスタジアムの天上へ打ち上げられる。
ひたすらフラッシュを焚かれて落ち着かなかった。壇上から見下ろす生徒達と取材陣というのは新鮮だった。

「それではこれより!!表彰式に移ります!」

ミッドナイトの宣言により、表彰式がまず始まる。
試合の形式と人数の関係で3位が二人いるという規定であり、3位は常闇と零仔、2位は轟、1位は…

「ンンンン〜〜〜!!!!!」
「怖……」
「最早悪鬼羅刹」

大凡1位がつけるべきではないであろう拘束具をこれでもかと頑丈に装着させられ、怒り心頭で暴れている爆豪。
何があったのかは常闇に聞いた。
轟越しに見える顔がどう足掻いても堅気の顔ではない。

なんだあれ。常闇のコメントがこれでもかと的を得ている。

「メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

ミッドナイトの誘導に合わせ、スタジアムの屋根から飛び降りて来たのは。

「私が!!メダルを持って来t「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」」
(締まらねえ…)

この人こんなにかっこいいのに、なんかこういう所だと締まらないな。
そういう所が、愛される理由なのかもしれないが。

いよいよメダル授与。
まずオールマイトが向かった先は常闇だった。

「常闇少年おめでとう!強いな君は!」
「勿体ないお言葉」

オールマイトから首にメダルをかけられる。

「ただ!相性差を覆すには個性に頼りっきりじゃダメだ。もっと地力を鍛えれば取れる択が増すだろう」

労いのハグと共にアドバイスを貰って、常闇は「御意」と短く返していたが、その顔は充実していた。
そして、オールマイトは零仔の所へやってくる。

「同じく3位、おめでとう栂野少女!実に完成度の高い戦闘技術だった、ぶっちゃけ度肝を抜かれたぞ」
「…あ、ありがとう、ございます」
「…個性を使用する時、いつもその眼に葛藤が見える。…君は強い。自信をもって、目標へ進みなさい!」
「、はい」

メダルをかけてもらう。
オールマイトは零仔を抱きしめ、背中を数度優しく叩いた。
今は、その言葉の意味を深くは考えずただ噛み締めた。彼は暖かくて優しかった。
それが、遠い記憶の、抱きしめられた覚えはない父を思い出す。

(……あったかい………)

その大きくて暖かな身体が、何故か一瞬だけ、無性に悲しかった。

次にオールマイトはその隣の轟の方へと向かう。

「轟少年、おめでとう。決勝で左側を収めてしまったのには、ワケがあるのかな」
「……緑谷戦でキッカケをもらって……わからなくなってしまいました。あなたが奴を気にかけるのも、少しわかった気がします」

轟の表情は凪いでいた。
あの憎しみも、激情も鳴りを潜め、落ち着いている。

「俺もあなたのようなヒーローになりたかった。ただ…俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ、駄目だと思った。清算しなきゃならないモノがまだある」
「…顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ、今の君ならきっと精算できる」

オールマイトは轟も労いを込めて抱きしめた。
大人しくされるがままの轟が、どこか小さく見えた。オールマイトの身体が大きいからだろうか。
そして次。

「さて爆豪少年!!…っとこりゃあんまりだ…伏線回収見事だったな!」

宣誓のアレか。
口の拘束具を外された爆豪がまるで躾の成っていない犬のような声で唸り始める。
顔すげえ。

「オールマイトォこんな1番…何の価値もねぇんだよ…世間が認めても俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!」
(顔すげえ…)
「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で、普遍の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。受け取っとけよ!『傷』として忘れぬよう!」
「要らねっつってんだろが!!」

すげえ顔のままの爆豪にオールマイトが何とかメダルをかけようとするが、受け取るまいと首を逸らし続ける。
やがてあきらめたのか鼻に引っかけて口に滑らせ、メダルを強制的に受け取らせた。

(犬かよ。すげえ顔)

「さァ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧頂いた通りだ!競い!高め合い!更に先へと登っていくその姿!!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」

好敵手と書いて、『とも』と読む。
そうだ、そうかもしれないけれど、

「てな感じで最後に一言!!皆さんご唱和ください!!せーーーの!!!!!!!」


自分には、まだ、その世界は遠く感じていた。
ただそこは暖かいのだろうと、日陰から見ていた。


「「「PLUS ULT……「お疲れさまでした!!!!!!!!!」そこはPLUS ULTRAでしょオールマイト!!」」」


(締まらねえ…)

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