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どうしてこうなったと言いたい。
轟も全く同じことを思っているのか、大変何とも言えない顔で、さっきまで零仔が持っていた買い物袋を持ってくれている。
ここはスーパー、二軒目だ。
沢山の品物がぶち込まれたカートを引いてテンションが高い祖母に恐る恐る着いて行っている状態である。
イケメン連れて歩いているのが嬉しいんだろう。乙女思考だから。
何故あそこまで祖母のテンションが高いのかてんで分かっていないのであろう轟にちょっと同情する。
「ばあさん、そこまで困ってたのか。飯が大量に余んの」
「は?」
「いや、ばあさんすげえ機嫌良いから」
違うんじゃねえかな轟。
アレだなこの子、ちょっと天然はいってるな。
この短時間で轟の生態系を少し把握した零仔は未来の自分の胃痛の気配を察知した。
生暖かい零仔の視線に轟は首を傾げた。
買い物も終わり、そのまま特に何事もなく家に帰って来た。
祖母はさっさと家の中に入っていく。
零仔も続こうとするが、轟が中々来ないのに気づき、どうしたのだろうと轟を見遣る。
彼は家の門の前で立ち止まっていた。
「どうしたの」
「いや……」
「早く入りなよ、お茶出すから」
(コイツの有無を言わさねえ所、ばあさんに似てんな)
彼女たちが血の繋がらない親子だとしても、この二人はよく似ていた。
その強引さが何だか心地よくて、轟は観念して入る事にした。
***
昼食時は祖父も一緒だった。
大皿に盛られたたくさんの料理を何とか食べきり、零仔は久しぶりにもう食べられないという所まで食べた。
轟もかなり食べたようで、皿の上の料理は見事に空になっていた。
食事時は轟と零仔は殆ど喋らなかった。その変わり、祖母と祖父が轟にいろいろ聞いたり話しかけ、轟がそれに応える、といった形を取っていて、食卓は割と賑やかだった。
「お粗末様。洗い物してくるわね〜」
「あ、私もやる」
「いいのよいいのよ、零仔はお部屋でゆっくり焦凍くんと話してなさい」
(何を話せというんだ!!)
「ワシもちょいと出るぞ。零仔、昼の稽古は休みじゃ」
「ええ…」
祖母は台所に引っ込み、祖父は用が出来て出かけてしまった。
気まずさリターンズ。
…ん?
「ちょっとおばあちゃん!?部屋って言った!?」
「部屋よ〜あなたのお部屋。焦凍くんをずっと居間にいさせるのも悪いでしょ」
「いや、お構いなく…」
「良いのよ、それに積もる話もあるでしょう?居間じゃ心地が悪いわ」
部屋だと。
祖母は完全に轟は零仔の昔馴染みだからと色々フランクにしているが、現在の二人の関係はただのクラスメイトだ。
昔のことだって、お互いがお互いに一方的に思い出しているだけで共有できているわけではない。
そこで昔のように接しろというのは、中々に難しい問題だった。
「…栂野」
「っな、なに」
「俺、体育祭の試合の後言ったよな。…全部終わったら、話したい事あるって」
言っていた。
その「全部」は、母との清算だということも。
祖母は轟家の事を色々と知っているようだから、今日轟が母と会って来たというのを聞いた時に、色々と気づいたんだろう。
なら、聞くのが務めだと思った。
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