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エンデヴァーの事務所に到着した矢先、まずされたのは事務所の説明だった。
事務所の相棒(サイドキック)の人に案内をされる。
説明を受けていてまず感じたのは、このエンデヴァー事務所の統一感だった。
敵との戦闘、災害救助のチーム編成から一般向けの広告担当まで、何から何まで無駄がない。
エンデヴァー事務所はヒーロー事務所の中でもトップクラスの格だ、抱えている相棒だけでも相当数だが、更にそこに人事や広告担当総務経理などが入れば一気に人員は膨れ上がる。
その一人一人に社長であるエンデヴァーの目が行き届いているのだ。
誰一人として無駄な仕事はさせず、最短にして最良の効率でエンデヴァーにまで仕事の案件が届くようになっていた。
知らなかったトップヒーローとしての素質はこういう所でも如何なく発揮されるらしい。
今まで憎み切っていた父親のヒーローとしての一面に、轟はただ真剣に説明を聞いている合間に何とも言えぬ複雑そうな表情をしていた。
「…すごいね、エンデヴァーは」
「……ああ。…父親としてはクソだけど、やっぱ、すげえヒーローなんだって思う。認めざるを得ねえ」
「そう思えるようになったってだけでも、すごい進歩じゃない。前の貴方ならそんなこと死んでも言わなかったでしょ」
「…そうだな」
零仔ですら、すごいヒーローなのだと関心すらしたほどだ。
憎い父親だとしか認識していなかった轟にとって、それはどれだけの衝撃に為り得ただろう。
(……お父さん、か)
轟と同じように、零仔も父親に関していい記憶は一つもない。
だが、嫌いではなかった。
何度もぶたれたし、泣きながら首を絞められたことすらあった。…それでも憎めなかった。
いっそ憎めたら楽だったろうにとも思う。
『おまえが!!私から温子を奪ったんだ!!!!!!』
そう叫びながら零仔を何度も殴る父親への、罪の意識があった。
その父親に胸から腹にかけて、まるでこの身体を裂くようにつけられた傷は未だ癒える事無く零仔に醜い過去の象徴として刻まれている。
この傷は、つけられた時以外祖父母にも見せた事のない、零仔の深い心の傷にもなった。
―――――怨恨の深く刻まれた傷は、その恨みが消えるまで癒える事はない。
零仔を憎み続けた父は自殺した。
もうこの感情のやり場はどこにもないまま、ずっと胸の内で燻ぶり続け、いずれ風化するまでこのままだ。
清算できるというのは、幸せなことなのだ。
「……!零仔!」
「…えっ?」
轟のどこか焦ったような呼び声で我に返る。
思考の海に浸りすぎていたようだ。
何故焦ったような様子なのかはすぐに理解できた。秒もかからず背後を振り返る。
「――――」
まず目についた、その眼光。
呼び起されるのは幼い頃に一度だけ合った目線の奥にあった恐ろしい感情の波濤。
燃えている髭があの時と変わらず健在で、ヒーロースーツの下の凄まじい筋肉は彼の厳しい鍛錬の賜物を物語っていた。
―――エンデヴァーだ。
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