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エンデヴァーがそこにいた。
轟の目線が自然ときつくなる。エンデヴァーはそんな息子の視線を他所に、零仔の方へと足を進めた。
こっちに来る。轟が零仔を背に庇うように前に立った。
「………来たか、焦凍」
「さっさと仕事に戻れよ。まだ残ってんだろ」
親子にあるまじき空気の悪さだ。もう既に帰りたい。
轟の中で清算した事とは言えやはり憎しみは健在。その表情は反抗心と怒りに溢れてとても親子柄とは思えぬ空気だ。
とんでもない程場違いに思えて、さっそく胃が軋みを上げている。
萎縮しそうな零仔を再びエンデヴァーの視線が捉え、半ば轟を押し退ける様に零仔の前に立った。
(で、でか……っ)
その体格、目付きの鋭さも相俟って凄まじい威圧感だ。
目の前に壁が経っているかのような錯覚さえ覚える圧迫感に息が詰まりそうになる。
「……フン。やはり、あの時の小娘か」
「…え、」
てっきり覚えていないと思っていたが、まさかの言葉に間抜けな声が出てしまった。
轟も意外だったようで驚いたようにエンデヴァーを凝視している。
「事件の後料亭の老夫婦に引き取られたと聞いたが。…あれ程の優秀な個性を持っているならば、もっと早くに目をつけておけば轟家の養子に迎えるくらいには考えていた」
「…!」
「なッ…!!」
エンデヴァーの驚愕の言葉に、轟が激昂し再び零仔を背に庇った。
家であれば容赦なく個性でも使用して攻撃をしそうな勢いでエンデヴァーを睨みつけている。威嚇というよりもう迎撃態勢に近い。
「焦凍くん、」
「指名したのは無論体育祭でのお前の戦いを見た上で、優秀な個性とそれを扱えるだけの素質を見た故だ。だがもう一つ、お前と焦凍に縁談の機会を設ける為の事もある」
「……縁談、って」
「養子縁組。…は、あの老夫婦相手にはあまり望ましくはない。故に、お前を焦凍の嫁にするのがいい」
は?
あまりに世界の違う話に一瞬意識が持っていかれそうになった。
「テメエ親父ッ!!!!!!!!」
轟の空気を震わす程の怒号に意識が一気に引き戻される。
その形相は、この空気はマズいと流石にエンデヴァーを止めに入ろうとした相棒をも竦ませる程のものだった。
「母さんもあんなにしといて、今度は零仔か!?ふざけてんじゃねえぞ!!!!どんだけ自分勝手に他人を巻き込むつもりだ!!!!!!!」
「ふざけるなだと?まだ甘ったれた考えを持っているのか、焦凍ォ!」
「甘ったれた考えはお前だろうが!!!零仔まで病院送りにしてえのか!!!!!!」
これはいけない。
どうしよう、完全に喧嘩だ。
双方最早どちらが個性を使用してもおかしくない程の険悪な空気だ。双方余りの剣幕に周りは完全に委縮している。
どうしようまだ研修初日なのに。
轟親子の周囲の温度が何だか異様な感じになっている。もうそろそろこの均衡は持たないかもしれない。
ああ、もう。最悪だ!!
「ッッッ……いい加減になさい!!!!!!!!!!!」
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