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さて月曜日。
ここからは怒涛のテストだ。
暫くは座学のテストが続き、座学のテストが終われば演習試験だ。
(みんな赤点回避できるといいけど……)
みんな赤点回避しますように。
そう祈りつつも、自分のところに配られたテスト用紙を睨みつけ、自身もまた机上の戦いに身を投じた。
テスト終了。
ヤマを張っていたがちゃんと読みは当たっていた。
今回の順位は5位以内に食い込んでいるとありがたいのだが、結構皆必死で勉強していたから抜かれるかもしれない。
だが悪い点数ではないはずだ。
「栂野さん〜!」
「麗日さん?どうだった」
「ヤマ張っててくれたところ出た!!ありがとう〜!」
「それは良かった」
麗日の後ろでは常闇、障子、葉隠が親指を立てている。彼らも大丈夫だったようだ。
とりあえず筆記は安心だ。
後ろで上鳴と芦戸が八百万に飛びついているから、彼らも手ごたえはあったのだろう。
(だけど本当の問題は…)
そして演習試験当日。
バスの駐車場に1−Aが集められた。
我らが担任相澤をはじめ、事前に聞いた試験内容を実行するとはとても思わせない大人数の教師陣が集まっている。
「これ絶対ロボ演習じゃねえよな」
「うん…絶対違う…」
轟のぼやきに賛同しながら顔が引きつるのを感じる。
国語担当のセメントス、エクトプラズム、3年担当のスナイプ、13号、サポート課にいつもいるヒーロー・パワーローダーまでいるのだ。
勢ぞろいじゃねえか。
「それじゃあ演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点は出る。林間合宿行きたけりゃみっともねえヘマはするな。諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々わかってるとは思うが…」
「入試みてえなロボ無双だろ!!」
「花火!カレー!肝試ーー!!」
上鳴と芦戸、座学が終わってテンションがハイだ。
彼らは座学の方が苦手だから最大の壁を乗り越えて今何でもできる気になっているのだろう。
それよりも相澤の首に巻いているいつもの捕縛用の布がモゾモゾ動いているのがずっと気になっていると、中からピョコッとネズミが出て来た。
「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」
「校長先生!」
「変更って…」
(ずっとそこにいたのか…)
すごくどうでもいいですといった表情の相澤の首元から出てくる可愛いネズミというギャップにときめいている間に校長がその点に於いての説明を始めた。
何でも敵の活性化の恐れがあり、勿論それを未然に防ぐのは学校側の務めでもあるが、学校としても万全を期したいという。
これからの社会現状以上に対敵戦闘が激化すると考えれば、ロボとの戦闘訓練は実戦的ではない。
そもそもロボは入試で入学の為に何故人に危害を加えるのかというクレームを回避する為の策であり、これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するとの事だ。
「というワケで…諸君らにはこれから、二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」
(やっぱり……!!)
最悪の結果となった。
予想通り過ぎて死にたい。
「尚ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度…諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ。ああ、このクラスは奇数だからどこかのチームが三人一組になる事は了承してくれ」
という事は、敢えて同じ課題を持つ者同士二人一組を組ませて、その壁となる教師をぶつけるという算段だろうか。
中には課題らしい課題のない優等生もいるが、その者には如何に仲間の弱点を埋められるかという臨機応変さが求められるのだろう。
「まず、轟と八百万…そして、栂野がチームで、俺とだ」
そう言ってニヤリと笑ったのは相澤だ。
推薦枠のチームだが各々課題はある。しっかり弱みを突いてくる相澤の事だ、苦戦するだろう。
(ヒーロー殺しの件もあるし…相澤先生は接近戦でどうにかできる人じゃない。彼のインターバル中に如何に個性を使って有利な状況を作れるか、これにかかってる)
***
「組の采配についてですが…」
数日前、職員会議だ。
チームの組み合わせと彼らにぶつける教師の抜擢。
「まず芦戸・上鳴の二人。良くも悪くも単純な行動傾向にありますので…校長の頭脳でそこを抉りだして頂きたい」
「オッケー」
本当に容赦ねえなと思ったのはオールマイトだ。
相澤は本当によく生徒の事を見ている。
厳しさは優しさの裏返しでもあるが、厳しさが徹底している。
「轟…一通り申し分ないが全体的に力押しのきらいがあります。そして八百万は万能ですが咄嗟の判断力や応用力に欠ける…そこは俺が個性を消し、近接戦闘で弱みを突きます。そして、栂野。状況判断力、咄嗟の対応と応用力、行動力は類を見ないものだが…」
「ああ…そういえば彼女この前食堂で、今回の期末演習対ロボじゃなくて対人戦闘なんじゃ?って早々に予測してたよ」
「成程、中々に察しがいい。普段から常に予測し考えているタイプというワケか」
「それにイレイザー、彼女は個性を使用しなくとも近接戦闘の技術は群を抜いているとお前も高く評価していた。お前とは相性が悪いはずだが」
教師陣の零仔への評価は高い。
指揮能力も申し分なし、戦闘能力も文句はない。
だが。
「彼女は、人への個性の使用を躊躇うきらいがある。オールマイトさんから聞いた話では自身の個性にトラウマを持っていると」
「確カニ体育祭デハロボニ対シテハ個性ヲ使用シテイタガ…ソノ後本選マデハ個性ヲ使用シテイナカッタナ」
「それに接近戦では捕縛武器を持っている俺にアドバンテージがある。個性を如何に有効に俺に使用し、尚且つ精密性に欠ける轟と応用性に欠ける八百万という二人の優等生を上手くサポート・バックアップできるか…という所です」
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