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後日。
緑谷がショッピングモールで死柄木と遭遇した件を踏まえ、例年使っている宿泊先をキャンセル。
行先は当日まで明かさない運びとなったそうだ。


合宿当日。
バスの中は賑やかだった。
お菓子を交換したり、音楽を聴き合ったり。

相澤も賑やかさが爆発しているバス内の注意をすることすら非合理的だと思ったのかさっさと眠りに入った。
本当によく寝るなこの人。

青山がバス酔いをしたり青山の酔いを紛らわせるためにしりとりをしたりと、常にコロコロと話題は変わる。
零仔の席は窓際で日がよく当たった。眠気が凄まじい。

「……………」
「眠ぃのか」
「……ちょっとだけ……」

隣の席の轟が覗き込んでくる。
ちょっとだけと言いつつ大分舟を漕いできていた。

「眠いなら俺に寄っかかってもいいから寝ろ。窓だと痛えだろ」
「ん…でも…」
「次のパーキング来たら起こしてやるから」
「……わかった…」

ぐっと引き寄せられ、薄い制服越しに感じる体温が心地よくて、直ぐに眠りに落ちる。
寝息を立て始めた零仔に息を吐く。

彼女が調子を崩したのはあの日っきりで、布団から目覚めた彼女はいつも通りだった。
流石に同じ布団で寝てしまったのはアレだったのか謝られたものの。
それでも、あの日。そうしたのは間違いじゃなかったのだろう。
肩に寄りかかり穏やかに眠っている零仔を見て、魘されてやしないだろうかとつい思ってしまうのだ。

(…やっぱ、大事だ。こいつが)

「!!??おっおまっ轟テメーー!!!なに羨ましい事になってやがる!!!女子と密着しやがって!!」
「静かにしろ。栂野が起きる」

峰田の騒ぎを発端とした軽い一悶着もあったが、無事パーキングについた。
皆が降りた後、誰もいなくなったバス内でまだ寝ている零仔を揺する。

「…零仔、おい。着いたぞ、パーキング」
「……んぅえ?ついた…?」
「着いた」
「ん〜」

まだ半分寝てんな。と軽く手を引いてバスを降りる。
見晴らしのいい山間部だった。
ゆっくりと時間をかけて覚醒し始めた零仔は、周囲を見渡して。

「……ここパーキングじゃないわ」
「だよな。B組もいねえ」

眠気も大分醒めた所で冷静に分析を始める。
先に降りていた面子と合流した。
他のメンバーもここがパーキングではない事を怪しみ始める。

「よーーーっすイレイザー!!」
「御無沙汰してます」

突如現れた勢いの良い声にちょっと油断していた零仔がびくりと肩を跳ねさせた。
まだ少し寝ていた部分がここで完璧に覚醒する。
相澤をヒーロー名で呼んだヒーローの女性二人は、

「煌めく眼でロックオン!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

(ワイプシだ……)

四人でチームを組んでいるヒーロー集団。
山岳救助でよく聞くチームだ。
それよりもさらに詳しい事をいつものヲタク発動した緑谷が解説し始めるが、キャリアの話をし始めた途端「心は18!!!!!」とメンバーの一人である女性の、ある意味女性としての逆鱗に触れていた。

もう一人の女性が指差す、山岳の遥かふもとに我らが宿泊施設があるらしい。

(嫌な予感)

予感ではない、これは核心だ。

「今はAM9:30。早ければ…12時前後かしらん」
「バスに戻れ!!早く!!!!!」

察し始めた切島たちが一斉にバスに駆け出す。
いや、駄目だ。

「もう遅いわ!!行くわよ皆!!!合宿はもう始まってる!!!!」
「御名答だ栂野。わるいね諸君、合宿はもう始まってる」

土の雪崩が襲い掛かって、皆を飲み込んでいく。土に包まれて安全に崖から叩き落された。
口を塞いで口の中に土が入るのを防ぎながら着地する。

「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この…

『魔獣の森』を抜けて!!!」

「『魔獣の森』…!?」
「何だそのドラクエめいた名称は…」

鬱蒼とした森に入る。
魔獣が出るのかこの森。

「大丈夫?零仔ちゃん」
「下着の中に土入った……」

最悪だ。スパッツ穿いてこればよかったと軽く後悔をする。
その時、上鳴と瀬呂の悲鳴に似た何かが聞こえて来た。

「マジュウだーーーーー!!!!??」
「魔獣…!?」

直ぐに向かえば、まさに魔獣といった風貌の化け物が聳えていた。
あんな生き物が存在するのか?
いや。あれは…

「静まりなさい獣よ、下がるのです…!」
「駄目よ口田くん、あれはただの土よ!!」
「土塊…そうか!」

動物を従える口田の個性が効かない事で確信した。
あれは土塊、プッシーキャッツ・ピクシーボブの個性だ。
ならば正面突破しかない、誰よりも早くに突っ込む。
飯田、緑谷、轟、爆豪も個性をフル活用し土の魔獣に突っ込んでいく。

「大丈夫!?」
「問題ないわ、援護する!」
「頼む!」

緑谷達を援護する為、零仔は森を駆け抜けながら意識を集中させた。


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