1.西支部代表予選会
4月に入り、2年生に上がった。クラス替えがないから、つぐみちゃんとはずっと同じクラスなのだ。
そしてすぐの日曜日の話。南市で行われている大会に、私とつぐみちゃんは向かった。
県内の西支部と東支部それぞれの大会。この大会でダブルス4組、シングルス上位3名までが緑陽市で行われる全国交流大会に出場できる。
西支部といえば西星高校。昨年までで3年連続出場。女子は昨年2冠を獲得した先輩がいるが、男子はダブルスもシングルスも優勝旗を手にしたことはなかった。
ちなみにこの大会、女子は別会場で、さくら市内の体育館。開催地も違うわけだ。
今回、西星高校から出るのは、ダブルスは長島野川ペア、福島野本ペア、川岸花田ペア。シングルスは、長島くんに大宮くん、滝下先輩。複数出場は長島くんのみだ。
ちなみにシングルスの予選は昨日で既に終わっていて、大宮くんはベスト8止まりで、長島くんが全国大会への切符を手に入れた。
カメラも持ってきた。何だかんだ、試合姿を撮るのは今日が初めてだ。
私とつぐみちゃんが着いた時には、福島野本ペアが試合をしていた。
相手は、北別の花野高校の原本・花島ペアだ。ベスト8に残り、これが全国大会掛けの試合なのだ。
この段階では既に1ー0で福島野本は負けていた。
その後も、押されに押され、あっという間に相手ペアにマッチポイント。
「え、玲一と野本先輩頑張って…!」
とつぐみちゃんも心配になる。
野本先輩は昨年も出場していて、2年連続の出場をかけた試合だが…。
結果、福島野本ペアはあっという間に敗退してしまった。
その後観覧席へ上がってきた玲一。1人のようだったから、「あれ、1人?」とつぐみちゃんが声をかけた。
「野本先輩、頭冷やしに行くって、なんかテンパってるみたいで落ち着かないって。」
と玲一に言われる。
「小学生から一緒にやってきてる先輩だけど、正直野本先輩のああいうところはじめて見たから、俺も本当に申し訳ない気持ちしかない」
玲一も、今の現状に追いついていない様子。
たしかに野本先輩はあまり弱みを見せない人だ。負けても、次があるって思えばその次に乗り越えれば良い、なんて言っていた気がする。
「確かに、智がこんなことになるのは珍しい」
と後から声がした。
「北戸先輩…と川島先輩、いつの間に…」
この大会には出場していない2人だが、さっきまで姿を見てなかったから私もびっくりした。
「とりあえず智に会っても何も声掛けないほうがいいよ。玲一も複雑だと思うけど、決して智に気を使うことだけはしないほうがいいよ。」
と北戸先輩が私たちに…というか、主に玲一に向けて言った。中学の時に野本先輩とペアだった北戸先輩、野本先輩のこんな光景を見るのはどうやら初めてではないようで。
一方、川岸花田ペアはベスト8に入った。負けたが、その試合の相手ペアは西の森第一高校の立川菅野ペア。1年生の時から県大会でも活躍してるペアの一つで、この高校は昨年の3年生がインターハイへ出場したりなど、強い選手もいる高校だ。
話には聞いていたが、立川菅野ペアの試合を見るのは初めてだった。このペアが勝ち進み、準決勝、そして決勝へ進んだ。
別のコートにいて全く試合を見れていなかったのが長島野川ペア。準決勝を勝ちきり全国大会への切符は手に入れ、次は決勝。相手は先程の立川菅野ペアだ。
そしてもうひとつのコートでは3位入賞した2ペアが代表をかけた試合が行われている。どちらのペアも北別地区の選手。花野高校の原本広島ペアに、南野高校の橋下中村ペア。南野高校ペアは、選抜予選の時に一橋商業高校との試合をちらっと見たペアだ。
私も見に来ていた西星高校の部員と共に長島野川ペアを応援する。
普段の学校生活での長島くんを知ってるから、より思うのが、試合中の顔つきがとても真剣でかっこいい。そして成功を重ねた時の笑顔。クラスの中でも運動神経が抜群な長島くんだが、動きがとても素早い。
そして野川先輩は、とてもインパクトのある動き。なのに無駄を見せない。
この試合の勝利は長島野川ペア。よって、優勝は長島野川ペアだ。
「良かった*!!勝ったー!」
とつぐみちゃんは喜んでいた。
と、その時、少し横に女の人が2人いた。
あれ、とても見たことあるような…。
「あれ、七星ちゃん、 来てたの!」
と話しかけられた。
「あ、瑞夏先輩!お久しぶりです!」
とても久しぶりに話しただろう。瑞夏先輩だった。と、隣にいるのは…野川先輩の彼女さん、可鈴先輩だ。
「え、ねえ、お前らいつからいた?」
と北戸先輩も話しかける。
「いつからって、春太の試合ずっと見てたけど。可鈴が見たいっていうから」
と瑞夏先輩が返す。
一方北別地区対決になった代表決定戦は原本花島ペアの勝利。福島野本に勝って、そのまま全国大会へ決めたのがすごい。
閉会式が終わり、長島くんと野川先輩も観客席へ戻ってくる。と、同時に、可鈴先輩を目にした長島くんが足を止めた。
「ちょっとまって野川先輩、彼女さん…?」
なんだかんだ長島くんは野川先輩の彼女さんを見るのは初めてな様子。
「じゃあせっかくだから春太、可鈴と写真撮ったら?七星ちゃんカメラ持ってるし」
北戸先輩が提案する。私は思わず準備を進めてしまっていた。
「ちゃんと賞状とメダル持ちながらだよ?」
と横にいた川岸先輩まで。
「なんだこの図」
なんて野川先輩も笑っていたが。
いい笑顔の2人。大会で優勝した選手とその彼女さん、とてもいい写真だなぁ。
なんてやってると、
「泰聖ー!春太ー!おつかれー!」
と、2人に声をかけた人がいた。
「乾くん急に頭叩くのやめてくれます?」
「ごめん、今の結構威力あったわ」
えっと…見たことあるし聞いたことある気がする。ゼッケンに釜川高校、と文字が入っている。あ、釜川高校の乾先輩。選抜予選の時に、長島野川ペアと試合したのを見たことがある。
「乾くんもシングルスおめでとー」
と野川先輩も言う。
「ありがとなー、」
「つーか何しに来たの」
「写真撮りたいって思って、もうすぐ立川と菅野も来るから。…あ、来たきた」
と、第一高校の立川菅野ペアもこちらへ。
「おー、久々に西星のとこ来た」
「国体の県予選で野本と当たった時以来じゃない?」
と、第一高校のお2人は話している。
「せっかくだから一眼レフ持ってる七星ちゃんに撮ってもらうか」
と野川先輩が提案する。
「任せてください!」
わ、入賞した他校の方々まで撮れるなんて最高じゃないですか。
「いいね、うちの学校にもこういう子ほしいわ」
と乾先輩が言う。
「この子多分他にも来れる大会来てるから、知り合っとくといいよ」
と野川先輩が皆さんに私のことを紹介してくれた。
いや、とんでもない…。
他にも釜川高校の他の選手も来て、とりあえずここにいるみなさんのSNSのアカウントIDを教えて頂いた。今の時代、こういう繋がりがあるんだなぁ。
「そうだ七星ちゃん、今日の写真って1日で現像できる?」
と川岸先輩に言われる。
「家でなら現像するもの揃っているんですぐできますけど…」
「お、まじ?部活紹介のポスターに使いたいと思って。」
「え、こんなもので良ければ是非!」
そっか、もう新入部員が入ってくる季節だ。部活紹介のポスターが入学式の次の日から玄関近くのスペースに貼られている。
「お前ひとつ聞いていい?明日入学式だけどポスター終わってないの?」
と野川先輩が川岸先輩に聞く。
「…実は。終わってない。」
と少し焦り気味に川岸先輩が答える。
「だから私たち手伝うって言ったじゃないですか!」
とつぐみちゃんも言う。
「…じゃあ、手伝ってくれる人、明日部活ないし、午前授業だし、学校終わったら部室集合してください……」
と若干弱気な声で川岸先輩が言った。
家に帰ってから、写真を現像する作業を始めた。スポーツの写真って、1枚1枚、とても青春を感じる。
この野川先輩の写真はとてもかっこいい。あ、決まった時の花田くんのこの写真も好きかも。こういう写真は是非使っていただきたいな、って。
これだからスポーツ好きは、やめられない。
- 10 -
*前次#
ページ: