2.先輩とのお話
春休みも終わり、2年生に上がる。
西星高校はクラス替えがないため、3年間ずっと同じクラスなのだ。だからつぐみちゃんともずっと一緒。
体育館前の掲示板に向かうと、部活紹介のポスターが貼ってある。西星高校が部活動が盛んなのも、こういうところがあるからかもしれない。
ソフトテニス部のポスターには、昨年度の各大会の活躍や、部長と副部長、顧問とコーチの紹介まで書かれている。
やっぱり副部長の野川先輩は変態キャラで定着してるのか。本人、全否定してるけど。
高校のテニスコートも開き、学校の居残り帰りに少し近くに行ってみる。
「お、七星ちゃん来てる!」
と、最初に私に気づいたのは立花先輩。こんにちは、と挨拶し、少し練習を見ていた。
知らない顔が何人かいる。そうだ、もう、1年生も部活に参加しているんだっけ。
中学が同じだった三原くんと千葉くんは何度か面識がある。休み中も西星の練習へ1番来ていた2人だ。
私も今日はこれからバイトがあるため、すぐに帰ることにした。
もう、アウトドアのシーズンかぁ。空気が新鮮で、風通りも良く、暑いわけでもなく、そしてこの天気の良さ。4月が1番、練習してて気持ち良いって、さっき長島くんが教室で言ってた。
話はその数日後になる。
学校終わりに、1人で駅前にやってきた。買いたい物もあるけど、友達みんな部活だのバイトだの用事があって、1人なんだけど。
買いたいものを買って、少し色んなお店を見て回ろうと思い、歩いていた。
スポーツの用品店が目に見えた。色々なスポーツの物が売ってるなぁ。テニスもある。みんなが身につけているラケットバッグやウェアなども見つけ、少し見ていた。
私もテニスやってたら、こういうの身につけていたのかなぁ、って。
その時に、後ろに人が通るが、私も後に下がってしまったため、ぶつかってしまった。
「あ、すいません…」
「すいません…あれ?!」
「え?!!藤木先輩?!」
なんと、藤木先輩でした。
「どうしたの、こんなところに」
「たまたま目に入ったんで見てたんですけど…」
「あ、なるほどねー」
私は藤木先輩の服に名札がついてあるのが目に入った。え、もしかして…
「藤木先輩ってもしかして今仕事中とか言います…?」
「あ、そうだよー、ってテニス部みんな知ってるから七星ちゃんも知ってると思ったんだけどなー」
いやいや、全然知らなかったです…。
市内で就職する、しか聞いてなかったから…。
「あ、俺もうあと10分で上がりなんだけどそれから一緒にいい?」
「いいですよー!是非!」
藤木先輩と2人は、選抜予選を見に行った時以来か。
藤木先輩が仕事終わったようで、こちらにやってくる。
「まさか来るとは思わなかったわー」
「いや、私もまさかいるとは思いませんでしたよ…」
「この前はテニスの話しかしなかったけど、今度会う時いろんな話したいなーって思って。玲一のことは聞いてるよ」
「へ?!」
って、この先輩の弟、藤木くんには結構話した内容だもん。何故先輩にまで伝わっているのかは分からないが。
あれからもう1ヶ月近く経とうとしているだろう。嫌じゃなかったのは確かだし、本人も結構気にしていたみたいで何度も謝ってくれたけど、あれ以来、変に意識してしまって、いつも通りに接することができない。玲一と。
そういえば去年の部員の恋愛相談をよく受けてたのが藤木先輩なんだっけ。今はそれを弟が引き継いでるかのように。
「正直、自分がよく分からなくなります」
「玲一に対して?」
「そうです」
とりあえず、玲一との間であったことと、私の思ったことを言ってみた。
「なるほどねー。」
と言ったあと、先輩はしばらく黙る。そして先輩は自分の恋愛の話を始めた。
「や、俺さ、彼女いたけど、先月で別れてるんだよね。」
「え、そうだったんですか?!」
「まあ、1年付き合ったし、元はヤるだけのために会ってたようなもんだし。向こうが進学で県外行くから、それを機に話し合って別れた。まあ、向こうも俺も、恋愛感情は冷めてたから。」
俺ほんとひどい恋愛しかしてないよ、なんて先輩は苦笑いしながら言う。
「ごめん、急に俺の話しちゃって」
「いや全然、むしろ私なんかが聞いちゃって良かったのか…」
「話したい気分だったからいいよ全然。」
正直、先輩が彼女さんと別れたという話は衝撃だ。誰からもそんな話聞かなかったし。
「七星ちゃんのその感情は、恋、じゃない?」
「え、恋ですか…」
「いや、あくまで勘だけど。でもこういうのから恋が始まったカップルとかも結構いるよ。宏斗がつぐみのこと好きになったのもこういう感じじゃん」
たしかに恋愛の始まりは様々だと聞くし、マンガでもパターンは様々だ。
大宮くん、そういえば、中学の時に告白されてからつぐみちゃんを意識するようになったんだっけ。
「じっくり考えてみな。ま、考えすぎも良くないけどね」
藤木先輩はやっぱり恋愛を熟知しているのだろうか。弟の藤木くん曰く、俺より倍以上恋愛してるからね、なんて言ってたけど。
「考えてみます。」
「またその辺なんかあったら俺相談のるし、それか柊弥にでも言ってみな?あいつならちゃんと聞いてくれるから」
「そうします。その時はよろしくお願いします…!藤木くんにも…」
と、この流れで藤木先輩の連絡先を頂いた。冬に話した時に貰いそびれたのもあったけども。
この兄弟やっぱり、似てるなぁ。人のことなのにちゃんと一緒になって考えてくれるところとか。
「って、俺も柊弥も今フリーだけどね。兄だけだよリア充満喫してるの」
藤木先輩の更にひとつ上にお兄さんがいると聞いたことがある。藤木先輩からは1つ上で、西星高校の卒業生で、中学ではテニス部に所属していたみたい。高校で続けなかったみたいだが、この兄弟がテニスを始めるきっかけも、1番上のお兄さんがきっかけみたいで。
「兄ちゃんは俺の1つ上なんだけど、高2の冬からずっと付き合ってる彼女いて、今でもラブラブしてる」
と、言われる。もっと聞くと、お兄さんの彼女さんは春に卒業した商業科だった先輩で、日菜子先輩と仲良かった人らしい。
「ところで話変わるけど、七星ちゃんって卒業後の進路とか決めてる?」
と、話を振られる。
「全然決まってないです…」
「まだ2年の最初だしそこまで焦らなくてもいいけどね。俺もギリギリで進路変えて先生に沢山迷惑かけてるから」
そういえば、急に就職に決めたという話は伺ったことがある。
「社会人になるか学生になるか、これだけでも大きな違いだからね。でも、大学行って、大学のうちにできることをやってみるっていうのもいいかも。市外で一人暮らしとかもさ。俺はそれで迷ってたけど。」
「藤木先輩は進学…はしなかったんですね」
「進学するなら東陵大行ってテニス部入りたかったけどねー、でも俺んち環境良くないから、金の問題とか色々入ってくるし」
母親いないし、父親も…。と、説明される。先輩のお兄さんも、そういう問題で進学希望を辞め、就職しているらしい。
「俺も最初は進学したかったし、兄もそれわかってて頑張ってくれてたけど、でも兄ばかりに負担させるのも良くないし、せめて柊弥だけでも大学でも専門学校でも行ってほしいからね。っていうのが結論。」
藤木先輩は大学で部活に入ったとしても活躍できそうな選手だと思う。でも、進学にはそういう問題がある人もいるんだなぁ。
「でも、縁あってスポーツに関わる仕事に就けたのは本当に良かった。とは思う。だからこっちの選択にして後悔はしていない。まあ、大学でテニスはしたかったけどね。実は薫も本当は大学行きたかったって、似たようなもんだからさ。」
南田先輩…も、たしかに、大学ではなく専門学校へ行っている。工業科出身だからかと思ったが…
「ちなみに、南田先輩はどういう…?」
「あいつの家も結局金。両親亡くしてるし。でも薫はどうしても市外に進学したかったみたいで。薫の進学先、国立の専門学校だから学費安くて、せめて進学するならそこ行けって言われたみたい。」
北春日市にある工業高等専門学校は国立だと聞いたことがある。西星高校の工業科からの進学も非常に多いらしい。
「それで、薫と話した時に、俺は就職することに決めたんだ。これもまた自分の人生なんだから、って。それに、薫のほうがもっとえらいよ。引退してすぐバイト初めて金貯めて。」
正直、先輩方の進路決定の際にこんなにも悩んで苦労する人が少なくはないんだとびっくりしている。私も、人事のように思えないなぁ、進路。
「とりあえず、司たちもこれからだし、話色々と聞くといいよ。でも早めに決めて行動に移せるほうが、後々楽だからね。」
「はい、ありがとうございます…!」
今日藤木先輩とお話できて正解だったかも。ためになる話ばかりで。
「俺も多分何かの大会見に行くから、その時また話そー!」
「はい!その時はよろしくお願いします!!」
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