5.何だかいつもと違う彼








ソフトテニス部のみなさんは日に日に緊張感が増しているのがわかる。そう、明日から高校総体の地区予選。3年生は引退もかかっている先輩も多いのだ。

勝てば県大会、勝てばインターハイ。インターハイ出場は、西星高校男子ソフトテニス部の悲願なのだ。女子部はあるけども、男子部は。




明日から3日も授業出なくていいとか喜んでいるうちのクラスの長島くんはさておき、私は夕方、テニス部の部活終わるまで教室で待つことにした。

つい昨日の夜、急に玲一からメッセージが来て。

「明日の部活終わりで良ければ、話ある」
と言われたからだ。


正直本当に気まずい面がある。藤木先輩には恋じゃない?って言われたけど、本当かもよく分からない。
でもなんだか嬉しいような。なんなんだろうこれ。

2年生に上がった教室は2階の教室だが、テニスコートの見やすい場所だったので、たまに見ながら、待ち時間は勉強をしていた。宿題終わってないし丁度良いと思って。






勉強してたはずなのに、気づいたら寝ていた。目が覚めたのは、テニス部の部活が終わる18時をとっくの間に過ぎている。
最後に時計を見たのは17時半だっただろう。結構寝ていたな。

「やばい…!」
なんて私は急いで片付けようとした。
その時。

「俺ならここにいるし」
と玲一は教室の後ろの方にいたのだった。


「ごめん…!!てかいるなら起こしてよ!」
「いやー、ぐっすりだったから申し訳なくて」
「今更そんな気遣いいらないし…」
「いいじゃん爆睡してた七星面白かったもん」
「そういうことじゃなくて…!」

いつからいたんだろうかこの人。何でいるのに起こしてくれないんだろうか。




「ちょっと、飯食いに行かない?」
と言われる。
「え、ちょ、今から?!」
「今日約束してるんだから当たり前じゃん。奢るからいいっしょ?」

いや、いくら相手が玲一だからといい、バイトしてない人相手に奢らせる訳にはいかない。




ご飯中は昔の話や最近の話などを沢山した。1年生の千葉くんの元カノが悠乃ちゃんだという話はびっくりしたけど。


「そういえば、もう明日からじゃん」
と私は話を振る。地区大会が明日からなんて早いな。そういえば、学校行ってもつぐみちゃんいないのか。

「なーんか、やけに緊張するよね。」
「今日の玲一なんか変だもん」
「なんでだろうね、」


何だろう。やけに大人っぽく見えるというか、なんていうか。




外へ出ると、

「公園かどっか寄ろ」
と言われる。

「公園に何しに行くの」
「話がしたいって言ったの忘れた?」
「あ、はい…」

今日は何だか、玲一の言われるがままに付いていってるだけのような気がする。最初からずっとこんな調子だ。


この後ろ姿を何年見てきただろうか。なのに何だか、素敵に見える。
男らしくなっちゃって。本当に。




「前にキスしちゃった日、俺が言ったこと覚えてる?」
と聞かれる。

言われたこと…。男への危機感が無さすぎるとか、色々と言われたことだ。


「正直あれ、俺自身が七星に対して思ってることをそのまま例えにして言っただけ。キスしたのだって、俺が気持ち抑えきれなくなった。俺が七星のこと好きなんだ。」


…え、今なんて言いました?
す、好きって………え?!


「そんなパニックにならなくてもいいよ。言うだけ言いたかっただけだし。返事とか別に今すぐじゃなくて良いし」

とは言われるも、びっくりしすぎて言葉が出ない状態の私。

「七星ってびっくりしたら言葉出てこないの?」
「いや、そういう訳でも…」
「この前といい、何も言わないで俺の方ジロジロ見るだけじゃん」

やっぱりこの人ってそういうところ見てるよなぁ。なんて。
私自身気づいてない私のことも気づいてくれている。



「んっとに、面白いよな七星って」
「え、ええ?!」
「そういう天然なところも可愛くて好きだよ」

言われて私は顔が真っ赤になってしまった。

「何、可愛いって言われて嬉しいの?」
「別にそんなこと言ってない!」

なんか今日の玲一は色々と変だ。普段こんなこと言ってるところ見たことないのに。そして向こうの調子に乗せさせられる。



すると突然、私の肩に寄っかかってくる玲一。

「本当に今日の玲一どうしたの?」
「俺も分からない。なんで今俺がこんなに素直になっているのか」
「今まで素直じゃなかったのか」
「七星に対してだけどね」


と言って玲一は笑顔で私のほうを見る。
今の笑顔は、ずるいよ。何だか胸の奥がキュンってきたよ。



「今日七星のこと呼んでて良かったわ。なんか勇気出たから明日から頑張れる」

そうして玲一は走り回ったあと、ブランコに乗る。「こっち来て!」と言われて私も向かうことに。


「なんか懐かしいねー、ブランコとか」
「ちっちゃすぎて俺乗って壊れないか心配だけどね」
「乗ってるじゃん」
「まだいける」

小さい頃はブランコ大好きだったなあ、とか。




「あ、さっきの告白の返事は地区予選終わってからでいいから。むしろ返事なくてもいいから」

いやさすがに返事しないのはそれは失礼すぎる。
返事って、どうすればいいのか…。

とりあえず明日からの地区予選を頑張って県大会に繋げてほしいし、その県大会でもインターハイを目指して頑張って欲しい。




今日の玲一はやっぱりなんだか、素敵な男の人だなぁ。って。


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