8.感情



6月も第二日曜日になる。この日は一般の大会が行われているみたいで。
私は行くことにした。西星高校はもちろん、太田先輩たち西星大も出るらしく、一般の大会を見に行ったことがないので、話を聞いていて興味を持った。




と、その前に。先日まで北別市でインターハイの県予選が行われていて、西星高校は男子団体はベスト8。準々決勝で西の森産業高校に負けている。

個人戦は、長島野川ペアと福島花田ペアがベスト16に入るも、インターハイ掛けで負けてしまった。女子は1ペア、飯田戸川ペアがインターハイを決めたみたいだ。

この県大会で大半の3年生は引退。だが、国体予選に出場する先輩は残るみたいだ。





「あ、七星ちゃんいいところにいた!」
と太田先輩に呼ばれる。行くと、西星大のソフトテニス部のみなさんが数人。


「いやー、七星ちゃんの話したら話してみたいってうちのマネージャーうるさかったから」
と、とても可愛い先輩が近くにいた。

「西星大の1年生で俺らと同い年なんだけど、高校までは吹奏楽やってたから、テニスと関わってまだ日が浅いんだけどね」
と太田先輩は説明してくれた。


堀口柚葉先輩。出身は春日高校で、中学は南が丘中出身みたい。高校までは吹奏楽部でサックスを吹いていたらしい。
西星大のソフトテニス部は近年マネージャーがいなかったか、今年はマネージャーに興味を持ち、堀口先輩が入部したらしい。


「話よく聞いてたー!よろしくね!」
「よろしくお願いします!」

と、話していると、知ってる人が目の前を通る。

「あれー、今日来てたの?」
「あれ、先輩どこのチーム入ってるんですか?!」

そう、藤木先輩だ。この間話を聞いてもらって以降会っていなかった。


「ねえ悠斗組み合わせ見た?」
と、西星大の方もやってくる。たしか、藤田先輩。そういえば藤木先輩ともわりと親しいんだっけ。
「見た見た、俺ら同じリーグじゃん」
「初っ端からお前かよ」
「わー、一般チームのデビュー試合から結斗かー。」
「俺の高校最後の試合は西星の南田藤木だったのになー」


考えてみたら、繋がりってとてもすごいと思う。かつてのライバルと仲良くなったり、同志になったり。またこうやって、違う場で試合したり。







今回の大会はリーグ形式で、1位抜けしたペアがトーナメント戦に挑む。

まずは藤木先輩たちのいるリーグを見ることに。
藤木先輩のペアは春日高校のOBの中塚先輩。2人ともこの春社会人になった者同士みたい。ちなみに西星大の藤田先輩のペアは、釜川高校出身の岸先輩。

そしてこのリーグには西星高校からは、永井金井ペアがいる。星華中の時にペアだったこの2人の先輩は、3年ぶりに組むらしい。


藤木先輩のプレーを見るのは初めて見たあの日以来。あの日は国体予選の決勝リーグだったのもあるがとても緊張みがあったが、今回はとても楽しそうだ。先輩自身も、南田先輩以外の人と組むのは実に2年ぶりらしい。

そして、中塚藤木ペアが、藤田岸ペアに勝利。

「あー、もう俺、悠斗に勝てなくなってる」
「昔は俺の方が結斗に負けっぱなしだったのにねー」
「だって悠斗、南田くんと組んだあたりから強者」
「1回負けたけどね藤田大倉に、あれは本当にひどい試合したけど」

藤木先輩、というか南田先輩もだったけど、団体で白石工業と当たった時の話、けっこう根に持ってるのかすぐにネタに持ってきてる気がする。



一旦別のコートへ行くことにした。川島先輩と川岸先輩が近くにいたので、近寄ってみると、そこでは西星の1年生ペア、三原竹原ペアが試合をしていた。相手は春日高校の2年生ペア、松田花山ペア。

この松田花山ペアも1年生からレギュラー入りしていて、インターハイの地区大会では県大会掛で敗退していたり。

三原くんは南聖中ソフトテニス部が新人中学団体で県優勝したときのキャプテンだ。竹原くんは星華中出身で背も高く、2人ともジュニアから続けているらしい。


でも流石、春日高校で一年生からレギュラー入りしているだけあって、試合の流れはほぼ春日高校ペアへ。三原竹原ペアは1ゲームを取るが、敗退。でも試合中、失敗しても笑顔が絶えない2人とも。


「やっぱ春日の2年生強いー。」
と言いながら戻ってきた三原くん。

「んなこと言ってりゃ国体の県大会届かないぞ」
と川島先輩が三原くんに向けて言う。
「そうですよねー。」
「あ、真面目に受け入れてくれた」
「え?今正気で言ったんじゃないんですか?」
「いや、半分以上正気」
「いや、どっちですか!」


たしかに私も思う。川島先輩ってこういうところあるよな。






さすがに6月の、今日は日も出ていて風もない。ずっと外にいると、けっこうしんどいもの。
でも選手のほうがしんどいだろうね。 飲み物ないと、熱中症になっちゃう。




というわけで、飲み物が無くなったたところで自販機まで歩くことにした。と、思ったらまさかの故障中。しょうがない、陸上競技場の自販機まで歩くか…。



「自販機向かうのー?」
と、声をかけられる。あ、川岸先輩。


「あ!そうです!先輩も行くんですか?」
「行くー。陽介が俺の飲み物ぶちまけやがったからなくなっちゃって」
「あー、ドンマイです」

さっき花田くんが騒いで走ってたのそういうことだったのか。どうやらお詫びの飲み物代だけ花田くんからもらったらしい。

「あれ、先輩もう終わったんですか?」
「次までまだまだだからさー。次当たるとこの長島野川と日東峰川の試合今始まったばっかだから」
「なるほど。」

川岸川島ペアは試合の進みが早かったみたいで。ちなみに今回は野本先輩は不在なので、川岸先輩のペアは川島先輩だ。新人戦以来のペアだ。



「そういえば、県大会お疲れ様でした…!」
「あーありがと。団体負けた時の話聞く?」

数日前まで行われたインターハイ県予選。西の森産業高校と当たった時の話をしてくれた。平日開催だし北別市開催だしで、結果を待つしかなかった。


「1番手の福島川島が先制して、2番手の長島野川がまさかの負けちゃって三番勝負になったんだけど、まあ結局俺らも負けちゃって、俺しばらく涙止まらなかった。」

自分たちの代で結果を残すことができなかつたのと、団体戦はベスト4以上に入ると次の選抜予選でシード権が得られる。昨年までの先輩方が残した結果より下回ってしまったことが1番辛かったみたい。川岸先輩はキャプテンだ。


「本当にすまんって泣きついたもん、玲一たちに。人生で1番悔しかった。」


今年の西の森産業高校は強く、今まで西の森地区といえば、第一高校、松陽高校のイメージがあったが、昨年から一変している。激戦の西の森地区の個人戦もベスト8がほぼ産業高校で埋まるなど。現在の3年生の層が厚く、更には1年や2年生にも良い選手がたくさん入っている。

「ま、結果だし、もう終わっちゃったことだしね、仕方ないしか言えないけど、でもこれ一生残る悔いかなーって。三番勝負の3番手だったし、この代の主将は俺だったしで。」


なんて話していると自販機についた。
私も先輩もスポーツドリンクを選ぶ。


「やっぱ暑いからこれですよねー。」
「この時期の大会は俺、これしか飲まないよ」
「さっぱりしますしねー。」



そろそろ、私も先輩に言わなきゃいけないことがある。でも、今言っちゃ迷惑だから、終わってからにしよ。


「先輩、大会終わったら時間あります?」
「え?どうした?」
「いや、この間の話…返事を…と思って。」
「ああ、いいよ。」

というわけで、大会終わりに話すことになった。






この大会は川岸川島ペアは準決勝で長島野川ペアとファイナルゲームの末敗れ、ベスト4へ。

長島野川ペアは決勝で、一般のチームに入っている吉根下田ペアと当たる。下田さんは何度か国体選手にも選ばれている人で一般の県大会でも活躍し、地元はこのさくら市で第三中時代に全中出場し、高校は北陽学園へ進んで1年生からレギュラーだったみたい。何年も前の話だが。


決勝は長島野川ペアはストレート負け。そして、下田さんはとてもすごかった。






大会が終わってしばらくした頃、川岸先輩ともう一度会うことになっている。



この1週間色々と考えた。でも、私なりの答えは見つけた。きっと。





「ごめんなさい、」
と私は先輩に言った。


「いいよ。七星ちゃんの答えなら俺は何も言わない。逆に、ありがとうだね」
「いやいやそんなことは!」

と、先輩は涙を少し出している。


「あ、気にしないで。後悔は一切してないから平気。はじめて後悔のない恋できたなぁ。全力でいって、全力で散る。何もしないよりは気持ち良い。」


先輩は近くの自販機に行ったと思えば飲み物を買って下さった。こういうのも最後にするね、なんて言いながら。


「七星ちゃんも好きな人できたなら、ちゃんと本気でぶつかりなよ。自分なりの恋愛を。」

俺も今までは消極的だったよ、なんて中学のときの片思いの話までしてくれた。



「ま、頑張るんだよ。玲一とはどうなの?告白されたとかって」
「ふえ?!先輩知ってたんですか…?」
「玲一本人から聞いた。ついさっき聞いたけど。」


正直、今回先輩の告白を断ったのには玲一のことが絡む。村井くんたちと話しているうちに、薄々と自分の気持ちが分かるようになている。そのためには、先輩の告白をお断りするべきだと私は思ったのだ。


「自分の気持ちに素直に動いたらいいよ。とても充実するし、感情的にもなれるし。」


と言い、じゃ!またね!と言って先輩はこの場を去る。


素直に…か。





- 17 -

*前次#


ページ: