9.君の一面
7月に入ると、西星高校の学校祭が行われる。
1日目は体育大会、2日目はステージ発表、3日目は縁日の日だ。
2日目のステージ発表では部活別パフォーマンスがあり、様々な部活が参加している。女子ソフトテニス部はダンスで出場し、男子ソフトテニス部はステージ上でチームに分かれてクイズなどを対決するステージとなった。男子ソフトテニス部は昨年は男子の部を優勝したが、今年は3位。
男子バレー部のネタが面白くて、校内投票ではバレー部が上回って優勝をした。バレー部の商業科の3年生の選手とマネージャーさんのコンビがとても面白かった。
縁日の日は一般公開。卒業生も沢山来ている。私が最初に会ったのは南田先輩の彼女さんでもある萌美先輩。先日の大会でも少しお話した春華先輩と、あとC組で花田くんたちと仲の良い卓球部の川越くんのお姉さん、美鈴先輩と一緒だった。
自分はクラスの当番は昼からなので、午前中は何もなし。つぐみちゃんは大宮くんと回るとのことなので、私は……
「七星ー。」
と私のことを呼ぶ人、玲一と回ることになってしまったのである。
そもそも事の発端はつぐみちゃんと大宮くんだ。学祭を誰と回ると話をしていた時に、この2人は当番の時間が合っちゃったため、2人で回りたいと言われた。最近、大宮くんにつぐみちゃんを取られっぱなしだなぁと感じるのは気のせいにしておこう。
それで、他の友達はみんな時間が合わず、誰と回ろうか悩んでいた時に、大宮くんは、「玲一も俺と当番同じだから回れば?」と私に言ってきた。…それで、今があるわけだ。
「って、無理やり2人にされてもねえ…」
なんてブツブツ言っている玲一。
「まあ、あの二人は楽しんでるならそれでいいけどね」
「そうだけどさ。」
と、とりあえず体育館で行われているライブステージを見に行くことにした。軽音部とダンス部が主体で、他にもチア部や吹奏楽部などが発表をする。私たちが行くとダンス部がオープニングセレモニーをやっていた。
ダンス部とか、普段あんまり見ない部活の発表も、とても新鮮。
体育館入口付近の廊下には、華道部や美術部の作品展示があったり。美術部は学校祭のポスターも手がけていて、採用されなかった作品も展示してある。クオリティが高すぎるなぁ。
「これすごくね、本当に西星の人描いたのかな」
と玲一が指さした作品。商業科の3年生の先輩の作品で、とても細やかで綺麗なイラストだった。人物絵もとても素晴らしく、漫画家さんみたいだ。
「意外とすごい人って身近にいるんだよね…って高校入ってから思うようになった」
「本当にねー。」
西星高校って結構超人の集まりではないのたろうか。軽音部の歌も聞こえてくるが、とても上手い。
体育館を後にし、校舎を回る。すると声をかけられたのは、工業科のイベントの教室前にいた高原先輩だ。工業科イベントでは制作体験をできる。
「もうちょい早く来てたら春太や航大のクソ面白いの見れたのにー」
なんて高原先輩が笑いながら言う。
「たしかにあの二人揃うと騒がしいですからねいつも」
「玲一その通り。てかなんで2人なの?」
と、先輩に聞かれた私たち。
「大宮くんとつぐみちゃんが2人で回ってるので…」
「まあつまり言っちゃえば残り者ってことか」
「そういうことです」
まあとりあえずおいで、なんて言われて工業科の演習室に入る。
「おー、玲一女の子連れてるしー」
「うるせー帰んぞ」
「すいませんでしたー」
なんてクラスの人に言われる玲一。玲一も工業科だ。
私たちが来たのは玲一のクラスが担当しているキーホルダーやアクセサリー作り。プラ板を使って様々な材料で色を付ける。
「小学生の時に授業でこうやってやったの覚えてる?今はこうやってマスキングテープとか絵の具とかで色つけて作る人多いんだって」
と玲一から説明を受ける。
「聞いて玲一、小さい子にめっちゃ人気」
「だろうね。女子そもそもこっち来ないじゃん」
「女子ウケ狙ったのにくそー。」
と、話している玲一と玲一のクラスの友達。たしかに、女の子が趣味でやってそうな部類だ。工業科ってこういう思考になるのか。
「ま、玲一は3組の女子力代表だから」
「いや、お母さんが趣味でやってるだけだし」
「でも玲一発案なのにお前の当番縁日なのはふざけんなって感じだけどな」
「いやお前らが女子ウケするものないかなとかほざいてるからだろ」
話が聞こえてたけどこの発案者は玲一だったのか。
そういえば、玲一のお母さんってハンドメイドが趣味で、様々なハンドメイドのイベントに出てるんだっけ。それと美咲ちゃんと詩乃ちゃんと妹も二人いるし。最近会ってないなこの2人とも。
とここで、玲一はクラスの当番の時間になってしまった。大宮くんも一緒なので、つぐみちゃんと合流することにしている。
「なあ七星」
「ん?」
「明日暇?」
「バイトあるから夕方までなら暇だけど…」
「俺部活ないから、家来てほしい。ちょっと話がしたい。」
「話って…?」
「そろそろ返事、聞かせて欲しい」
と言われて、玲一は自分のクラスのところへ戻った。
いきなりだな、でも、そうじゃないと私も何も言えないのかも。
なんだか少しモヤモヤしたまま学校祭が終わった。
次の日に玲一の家に向かう。学校祭の翌日の振替休日だから月曜日。仕事に学校に、玲一の家族は誰もいない。
「あ、賞状増えてる」
と、私は気づく。玲一の家には賞状やメダルやら沢山飾ってある。さすが、テニス一家。玲一の両親もまだまだ現役だ。
最後に玲一の家に行ったのもそういえば春休みだ。妹2人とも活躍してたし、美咲ちゃんは中3だから引退しちゃったけど、そのまた下の詩乃ちゃんも中学の大会で大活躍してるんだっけ。詩乃ちゃんは小学生の時も連覇を達成していたりしていた。
「そうだ、この前母さんが片付けてたらこんな写真見つけたんだよね」
と玲一は写真を1枚出す。集合写真のようだが、みんなかなり幼い。
「えー、玲一これいつの時の?」
「北戸野本ペアいるから俺は小5じゃないかな?」
「へー。ほんとだ、言われてみれば先輩たちだねこれ」
「あとこれ泰聖。そして千葉と歩夢と、これは長江かな。ここに永井先輩もいる」
「やっぱ玲一のとこ今の西星生多いんだね」
「そうだねー。あとこの時まだ入ってなかったけど道哉も同じだったし」
他にも探していると様々な人がいた。玲一が小5だから、これは6年前になるのかな。
「あとこれ小6の大会の時の。俺のペアこの時新堂だったなー。新堂有希ってわかる?」
「んーと、名前なら聞いたことある」
「中学の時の陽介のペア。ギリで全国逃したって陽介がよくほざいてるあの話のペアが新堂。」
「あーなるほど!」
「まあ、今は硬式やってるけどね。」
花田くんは確か中学からだったはず。運動神経の抜群な花田くんは身に付くのも早かったらしく、今では西星高校のレギュラーにも抜擢。
他にも色々な写真などなつかしいものを沢山見せてくれた。
と、玲一は私のことを部屋へと連れていく。
「あー、もう、だめだ、俺」
「…どうして?」
「だって。」
そう言って玲一は私のことを抱きしめた。そのままベッドへと倒れ込む。
「ちゃんと返事もらってないのに、こういうこと考えてる俺はもうダメだなって。」
「それは、ちゃんと言ってない私が悪い。」
「でも、今日は聞かせてくれるから俺の誘い乗ったんでしょ?」
「そうだけど、でもいつ言えばいいの。」
「今」
「え、今?!」
返事を言うだけなのに、たった一言なのに、こんなにも言う勇気が出ない。何故だろう。緊張しすぎて。
「じゃないと、本当に襲っちゃうよー」
「それはダメ!」
「即答だな、じゃあ今聞かせて?」
本当に、この人には色々と叶わないところがある。何でもかんでも。
私は軽く、玲一にキスをした。
「いいですよ!付き合っても!」
「…七星ってこんなことするんだ」
「いっつも叶わないから玲一のことびっくりさせたかった」
「いや、可愛いかよ」
再び私のことを抱きしめる玲一。さっきよりも力が強かった。でも案外と、怖くない自分がいる。
「ありがと、七星。」
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