13.先輩の引退
学年別大会から10日後。
国体の県予選が終わり、西星高校は1日目で全ペアが敗退。長島野川ペアがいいところまでいってたみたいだが、昨年の南田先輩たちのように2日目に残らなかったみたいだ。
私は日中バイトのため勿論行けなかった。休みをとれなかったため、仕方ない。でもその分今日は休みをとることができて、西星高校のテニスコートにいる。
県大会の次の日、西星高校のテニスコートには既に引退している3年生も全員来ている。そう、この日は引退試合が行われる。
北戸先輩とか岸名先輩とかは、本当に久しぶりに見た気がする。
組み合わせは抽選。最初にリーグ戦をしたあと、リーグを1位抜けしたペアがトーナメント戦に挑む。
この日は保護者などの一般の方々も入れるので見に来たのである。
まあ、当たり前だが観戦向きではないけどな、学校のコートだから。
ペアもくじ引きで決まるのだ。まず抽選会が行われる。
とはいえ3年生は3年生同士でペアが決まる。後輩は後輩同士だが、人数が奇数の関係で、くじ引きの結果、1年生の中本くんはつぐみちゃんと同じ仕事をすることになった。
「おー、中2以来のペアじゃん」
と北内先輩と川島先輩は盛り上がってる。北内川島ペアとして、中学2年生の時は組んでいたと前に聞いたっけ。
AからEまでのブロックがあり、それぞれ試合がスタートする。
「組み合わせもペアも全て抽選だからこれが1番面白いんだよなー。見てる方も。」
と西星高校のソフトテニス部のコーチである平さんが言う。実は、今年入ったぐらいから、ちらほらとお話はしたことありました。
「あと、生徒もそこそこ入ってますね。」
「部活とか講習終わりとかでたまたま通りかかった人とかは毎年いるんだよね。あと誰かの友達とか。3年生の奴の友達は毎年何人かいるかも。」
西星生なら気軽に見れるこの機会。3年生の先輩の友達とかは、ほぼ見るのことなかった友達の部活姿を見に来る人も多いみたいだ。
「ちなみに、これが始まったのは3年前からなんだ。その年のキャプテンの秋田と副キャプテンの相田が考案して、そのまま今年で4年目なのさ。」
と話をされる。
現在の3年生、川岸先輩たちから3つ上の先輩なので今の部員とは被ってはないが、西星高校の男子ソフトテニス部を変えたと言っても過言ではない相田秋田ペアという強いペアがいた。二人とも星華中出身みたいだし、相田さんは市内で社会人チームに入ってて、秋田さんは緑陽大のソフトテニス部に入っているので今の部員とも関わりはあるみたい。ちなみに私はまだお二人共見たことない。
今回は5ゲームマッチで、リーグ戦のため各ペア2試合ずつ終えたあと、5つのリーグから勝ち抜いた5ペアによるトーナメントが行われる。
Aブロックからは川岸野川ペア、Bブロックからは1年生の長江桜井ペア、Cブロックからは1・2年の長島千葉ペア、Dブロックからは野本平澤ペア、Eブロックからは北内川島ペアが残った。
「長江たち強すぎてボコられたわ」
なんて、Bブロックを惜しくも敗退した永井先輩が言う。永井先輩は今日は小谷先輩と組んでいたが、長江くんたちには一歩及ばなかったみたいだ。
一方、もう1つ後輩ペアが勝ち上がったのは1年生の千葉くんと2年の長島くんペアだ。ここのCブロックには、3年生は北戸金井ペア、2年の大宮村井ペアと、かなり面白い組み合わせだったのだ。北戸金井ペアは後輩にストレートに2敗してるため、お二人はさっきから苦笑いしか出ていない。
さて、決勝トーナメントは、まずは後輩ペア同士である 長江桜井ペアと長島千葉ペアになる。勝利したペアが、野本平澤ペアとの準決勝に進むことができる。
「特にえぐい後輩しかいないじゃん」
とボソッと呟く高原先輩。
長江くんと桜井くんという、1年生の強者ペア。長島くんという2年生の強者相手だが、長江くんの粘りが見える。
そして隣では、川岸野川ペアと北内川島ペアの試合も始まった。
北内先輩の試合姿は実は今までタイミングを逃しててあまり見ることがなかったりしていた。レギュラーには入れなかった先輩だが、川島先輩との息はピッタリだ。二人とも、偶然とはいえもう一度組めて嬉しそうだ。
後輩同士の勝負は長島千葉ペアに軍配し、3年生の勝負も川岸野川ペアに軍配した。長島千葉ペアはその次の野本平澤ペアも下して、決勝は長島千葉と川岸野川になる。
川島先輩も、
「結局野川春太に1回も勝てないで3年間終わったわー。くそー。」
なんて言っている。
「今まで崩れることなくずっと組んでた長島野川が、最後の最後で初めて正面勝負するとか面白い」
と、金井先輩も言う。
「確かに、中々ですよね。」
そういえば前に長島くん、野川先輩とは実は当たったことが少ないと言っていたことがあった。あっても長島くんが1年生最初の組んでなかった頃の校内試合、だったっけ。学年が違うのもあるが、中学では1度も当たったことがなかったみたい。
この試合は3年生が意地を見せるか、後輩ペアに軍配するか……。
野川先輩は本当に本番に調子良くなるタイプの人だと思う。インハイ予選の時は個人戦も団体戦も調子悪かったみたいだが、西星高校の誰よりも、大会で調子の良さを見られる。野川先輩が調子良いときっていうのは、次々と決めていく時だ。それが、気持ち良い。
野川先輩のボレーを取ろうとする長島くん。取れてるからすごい。
「泰聖ー!こんな先輩たちなんかぶっ潰してやれー!」
なんて長島くんたちに声をかけている野本先輩。
「うるせーよ!!」
と、聞こえてた川岸先輩も野本先輩に反論する。
カウントは4対2で、川岸先輩たちの勝利となった。
「あー、野川先輩に負けたのが1番悔しい」
なんて長島くんは言う。
「やったー 」
「いやーほんとにうざいです」
喜ぶ野川先輩に、長島くんは返す。
「そういうやつだ、野川春太という男は調子良いとすーぐ人の事挑発するから」
北戸先輩は野川先輩のことを指差しながら言った。
優勝した川岸先輩と野川先輩には景品も与えられた。
そして、私は今回、撮った写真をアルバムにして持ってくるという任務も受けていた。つぐみちゃんと新部長の村井くんで考案し、1、2年で企画して、私もお手伝いをしていたのだ。
まあ、春に撮り始めたので、5月や6月で引退した先輩は数が少ないんだけども。それに加え、村井くんたちが以前から持っていた写真を使ったり、集合写真を使ったり。私もお手伝いして、とても楽しかった。
このアルバムは、試合後に1度部室に全員集まり、後輩がそれぞれお世話になった先輩の元へ渡しに行く。ということで、校舎内に入ってソフトテニス部の部室になっている教室へ移動する。
「それでは、順番に一人一人、一言お願いします!」
と、司会を務めることになったつぐみちゃんが言う。
「これどういう順番?」
と金井先輩が聞くと
「右からでいいんじゃないっすか?」
なんて言う花田くんにより、1番右側にいた永井先輩からスタートだ。
「あ、俺からか。えっと、練習は辛いと思ったこともあったけど、何よりも楽しく部活できて良かったです。特に瑛太は本当にありがとう!瑛太と2回優勝できて良かった」
永井先輩が言うと、川島先輩が
「優聖、いきなり泣かせないで」
と隣で泣きそうになる。
「お?瑛太泣いてんの??」
平澤先輩が川島先輩のことを煽る。
「うるせー。もうみんなで最後なんだなって思うとさ」
そして順番に、3年生の皆さんが一言ずつ、言葉をかけて頂いた。私は丁度1年前からしか先輩たちを直接応援できなかったけど、先輩たちの3年間の部活生活への思いに、とても心に響いた。
そして最後は勿論、部長の川岸先輩。川岸先輩が部長としての役割は終わっていて既に村井くんにバトンタッチしてるが、この代の部長は川岸先輩。
「全国には届かなかったけど、本当に3年間濃くて楽しかった!西星に来て良い仲間、良い恩師に出会えたこと、そしてこんな頼りのない部長に1年間ついてきてくれたみなさんに、とても感謝しています。大学は緑陽大で続ける予定なので、もっと活躍して、みなさんに恩返ししていきたいです。本当に、ありがとうこざいました!」
先輩の発表を終えると、村井くんが部員を代表をして花束を持って川岸先輩のところへ行く。
「先輩たちと一緒に部活できて、楽しかったです。本当に、ありがとうございました!」
村井くんと川岸先輩はここで握手をする。ちなみにこの2人は、同じ中学の上に中学時代も部長をやっていたので、川岸先輩から村井くんに継いでいくのはこれで2回目だそうだ。
そして、残り時間は部室内で自由時間となった。ここで私は、今日撮った写真を整理する。印刷は写真部の先生である副担任の先生に頼んだら快く引き受けてくれたので、それを取りに行き、急いで写真を分ける。
既に先輩へのメッセージも書いていたので、封筒に詰めて、あとは持っていくだけだ。つぐみちゃんや玲一なども、少し手伝ってくれていた。
写真を持っていき、一人一人渡していく。「ありがと!」とか、「こちらこそ世話になったわ」などと声をかけてくれた先輩ばかりで、私まで泣きそうになる。
川岸先輩に渡した後、
「七星ちゃん、本当にありがとね。本当に楽しかった!玲一とも仲良くね。」
言ったあとに、先輩は玲一のほうを見る。
川岸先輩には、面と向かって告白されたこともある。玲一のこともあってお断りするかたちになってしまったけども。
「実際七星ちゃんと1番関わったの司だよな」
と野本先輩は言う。
「私の方こそ、川岸先輩のおかげで3年生の皆さんと仲良くして頂いたと言っても過言ではないので、本当に感謝してますし、本当にお疲れ様でした!」
「いや、ちょっと、俺も泣くからやめて」
私が川岸先輩に一言言うと、川岸先輩は泣きそうに…いや、泣き始めた。
3年生のみなさん、本当にありがとうこざいました。 本当に、お世話になりましたし、かっこよかったです。
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