14.お盆休み





この日はお盆の真っ最中。国体予選も終わり、3年生の引退試合も終わり、2年生も1年生も部活オフの日。だけどテニスをする人はする。なんでかって、西星のOBの先輩が帰省期間だったりお盆休みだったりして、みんな集まっているからだ。



南田先輩がこちらに帰っているとのことで、みんな集まる。私も玲一に誘われ、行くだけ行くことにした。



「あ、今朝に野川先輩から連絡来たんだけど、今日のメンバーはほぼ南聖中なんだって。西星じゃない人も来るとかで。」

と言われる。どうやら、野川先輩と南田先輩で人を集めたらしい。春日高校からは浅沼先輩、白浜高校からは大輔と平苗くんと篠永くんと森岡くん、他にも何名か集まって大所帯となった。場所はもちろん南公園だ。



「そういえば、先輩ってどっかでテニス続けてます?」
と平苗くんが南田先輩に聞く。

「一応、北春日クラブには入ってる。同じ学校にも高校まで軟式やってた人いて、仲良くなってそのまま誘われた。」

南田先輩は北春日工業高校のソフトテニス部だった人と仲良くなったとか。入学してすぐに、「西星高校の?!」と話しかけられたみたいだ。さすが有名人なお方だ。



「つーか今度の県秋季俺出るから。悠斗がわざわざこっち来てくれるみたい」
と南田先輩が仰る。県秋季大会、9月の第1日曜日に行われる一般の県大会。現在南田先輩が住んでいる北春日市で行われ、西星高校からも数ペア出場するみたい。南田藤木ペア、また見たいが都合がきっと合わない。

「え、まじすか?俺も泰聖と出ます」
とその中の一人、野川先輩が言う。

「まじ?春太の高校生最後の大会?」
「地区の一般は出るかもですけど県大会は高校最後だし、長島野川も最後です。」
「長島野川も見納めかー。俺も何回か見てたからなー。ほんとすげえよお前ら」
「ありがとうございます。でも南田先輩には中学から1回も勝ててない…」
「簡単に勝たせてやらないよー」


南田先輩に、野川先輩に。南聖中でも西星高校でもレギュラーで大活躍した先輩だ。でも野川先輩は、南田先輩に1度も勝ったことがないのか。



「七星ちゃんカメラマン!」
と私がカメラを準備していると、南田先輩はそれに気づいた。

「あ、はい!」
「春季の時も撮ってたよなー。いつもみんなのこと撮ってるの?」
「タイミングがあった時ですけど!」


春季大会を見に行った時もそういえば先輩と会ったような。と、ここで私は平苗くんや大輔を見て思い立ったことがあった。

「あ、よければ平苗くんたちも今まで撮った写真とかいる?」

と私は聞くと、

「え、欲しい!」
と平苗くんを筆頭に食いついてくるみんな。


「むしろ普段から撮ったらすぐ写真ほしい」
と大輔にも言われる。

「西星の人達には渡してるんだけど、他校の人達にはちょっと気が引けるというか…」
「白浜のキャプテンの俺が言うんだから最低でも白浜の分はいいんだよ!」
と大輔はにこやかに言う。じゃあ今度からそうしよう。





南田先輩は実は1年前以来テニスをしている姿を見ていなかった。1年ぶりに、改めて見るととてもかっこいい。



「てか今日千葉はどうしたんです?歩夢はお盆はいつも親戚のとこ行ってるから分かるんですけど」
と、篠永くんが疑問に思うみたい。

三原くんと千葉くんは不在。三原くんはいつもお盆と年末年始は親戚の家がある一橋市にいるみたいなので、みんなそれは分かるみたい。

「千葉は昨日から彼女と西の森行ってる」
と野川先輩が返した。

「まさかの泊まり……」
みんなは千葉くんらしい、と納得しながら聞く。

「あ、いや、なんかね、彼女の父さんが今西の森に住んでるらしくて……って、西の森クラブの石橋さんわかる?」

野川先輩の言葉に、いち早く反応したのは南田先輩だった。

「え、わかる」
「そりゃまあ一般の大会出てますからね」
「しかも俺去年当たってストレート負けした。」
「石橋さん強いですよね。その人の娘が千葉の彼女です。離婚してお父さんだけあっち行っただとかで」


え、そうだったのか。
千葉くんの彼女である1組の新井穂佳ちゃん、とてもハキハキとした印象のある。まだ話したことはないんだけど。
穂佳ちゃんのお父さんが、ソフトテニスの人だったのか。名字が違うから、穂佳ちゃんは親の離婚と同時に名字が変わったのだろう。



「え、千葉の彼女のお父さんが石橋さん……」
玲一もびっくりしている。

「玲一は知ってるの?」
と私は聞くと
「知ってるも何も、父さん仲良いからよく遊びに来てたもん。てか今思えば確かにあの女の子新井さんかも。名字変わってるから気づかなかった」

さすが福島父は顔が広い。





そして皆さんは打ち始める。南田先輩は、所々、後輩のフォームで気になった部分などを注意している様子が見える。とても良い先輩だ。


「南田先輩みたいに綺麗なストロークを打つにはどうしたらいいですか!!!」
と大輔も質問をし、答える南田先輩。

「確かに、大輔は上手いけどちょっと力入ってる。って俺も人の事言えないけど」
「やっぱりそうですよね。」
「んー、えっとね…。大輔の場合は……」


こんなことから、南田先輩がコーチになったかのような状態になっていた。

「俺いつからお前らの先生になったんだ」
と、最後には言っていた。まあたしかに、この中では1番年上だ。


「将来コーチとか先生とか向いてそうですね 」
と浅沼先輩が南田先輩に言う。
「全然関係の無い学校通ってるけどな」

確か、工業系の専門学校で、建築総合科だとかそんなところだったと聞いたような。




南聖中のみなさんは学年関係なく仲が良い。南田先輩は高校生になってからも1番中学の部活に顔を出していた先輩みたい。だから入れ違いの篠永くんや森岡くん、そして三原くんとも親しいみたいだし、千葉くんに至っては恋バナしたことあると仰っていた。


「あ、ちなみに俺彼女と別れたからそこ把握よろしく。」

と南田先輩がいうと、唖然とする全員。


「え?先輩?嘘ですよね??」
真っ先に野川先輩が南田先輩のところへ迫る。

「嘘じゃないでーす。色々とあるんですー。」
「さてや先輩他に好きな人できたとか」
「そんな事じゃないわ!つーか俺や萌美のSNS見ててわからなかった?写真全消ししてるよお互い」

正直私も聞いててびっくりした。気づいてなかったのもあるけど、いつの間に……。



「さーて、テニスのあとは恋バナタイムだ」
この流れで南田先輩は恋バナタイムへともっていった。



その間に私は、先程の写真をスマホでまとめる作業をしていた。最新のカメラは、撮ったらすぐにスマホに転送できる機能があるから、とても便利だなぁって。


横で作業してると、急に

「七星ちゃんは??」
と南田先輩に話しかけられる。


「えっと……」
と回答に困っていると野川先輩が
「先輩、七星ちゃんはこの中にいる誰かと付き合っています。さあ、誰でしょうか」
と南田先輩に言う。


途端みんな、玲一のほうを向いてニヤニヤする。


「え、玲一?」
と南田先輩にもすぐ気づかれる。

「いや、みんなで俺のこと一斉に見ないで!!!」
顔を真っ赤にする玲一。なんだか私まで恥ずかしくなってきた。


「二人とも顔赤いよー?」
と平苗くんにもからかわれる。

「うるさい!!」

つい反抗してしまう。

その後は浅沼先輩や野川先輩の今の話や、平苗くんが昨年あやめちゃんと色々あった話や、森岡くんが最近失恋した話など、色々と濃い話をしていた。






「てか先輩いつまでこっちいるんですか?」
浅沼先輩が南田先輩に聞く。

「俺?日曜に帰るー」
「じゃあ新人戦来ます?来ますよね??」
大輔が必死に誘っている。

そう、土曜日からは新人戦の地区大会が始まる。土曜日がダブルスなので、私は昼から行くつもり。

「七星は来るの?」
玲一にも聞かれる。
「私はその日8時から12時までバイトあるから、それから行く。」
「おー了解。」

一応朱里も行くと言っていたので、星華公園で待ち合わせするつもりだ。




つい先日三年生が引退をしたばかりだが、土曜日からは新体制初の大会。とても楽しみだ。




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