2.玲一の誕生日









8月も終わり頃の月曜日。

その前の日には北春日で県の一般秋季大会が行われて、野川先輩や川岸先輩、川島先輩などの3年生が参加し、こちらの先輩たちも完全引退となった。

川岸先輩や野川先輩は、気が向いたら地区の大会は出るみたいだが。他の先輩達はどうなんだろう。でも9月の地区秋季はけっこう3年生も出るみたいだし。進路と両立しながらでも、やはりテニスはしたいと言っていた。




そういえば、新人戦地区のシングルスは優勝が長島くん、準優勝が白浜高校の大輔だ。玲一は3位という結果に終わったみたいだが、西星高校はこの2人の他に、花田くんと桜井くんが県大会出場を決めた。大宮くんや長江くんなどは、ギリギリで敗退したみたいだが。



で、今日はというと。

玲一の部活は休みらしく、私もバイトが休みの放課後。実は8月24日の金曜日に、玲一は17歳の誕生日を迎えたのだ。

でも、土日の遠征があり、金曜日の学校が終わったらすぐ出発したため、今日になってしまったのである。


まあ、普段から彼女らしいことできてないし、誕生日ぐらいは、と思って、私から誘ってみた。でも、これだけでも緊張ってするものだ。次第に慣れていけたら……いいなって。




数日前に教室で、つぐみちゃんにどうしたらいいか話していると、長島くんがやってきたんだけど。

「今年できたレストランで、予約したらサプライズとか盛大にしてくれるお店あるよ」
と長島くんに紹介された。

どうやら、長島くんが4月の彼女さんの誕生日の時に行ったことあるみたい。
写真を見ると、ケーキのお皿に、名前と、誕生日おめでとうの文字がチョコで描かれている。

「これ、歩夢の誕生日の時にも柊弥たち実行してて、何しろ美味いから俺もおすすめする」
と言われて、気になっていた。


「へー。私も宏斗にやってみよ。」
とつぐみちゃんも気になり始めたようだ。


予約の方法などは、やったことのある長島くんに教えてもらった。レストランの客席自体が完全個室らしい。場所は星華中の近くにあるみたいだが、私や玲一だとすぐに行ける距離なので、問題はない。








当日学校が終わり、学科が違う私達は、学校の玄関で待ち合わせ。というのも、つぐみちゃんも大宮くんと一緒に帰っているので、ここまではつぐみちゃん付きだが。

「じゃ、楽しんでねー」
とつぐみちゃんと大宮くんに言われ、私達は学校を出た。




目的地に着くまでは、ひたすら昨日のことを話してくれた。

「相変わらず、テンションすごかったけどね。恒例の野川先輩いじりが」
「ああ……。」
「瑛太先輩いる時点でわや」
「うん、なんか想像つく。」
「でももう最後なのかーって思うとさ、先輩たちと遠征楽しかったなーって」

たしかに、遠征に先輩方はもういない。




目的地のレストランに着き、まずは普通にお食事。

「なんか、俺が忙しいせいで意外とどこも行けてなかったよね、俺ら」
「いや、部活なんだから仕方ない。私もバイトあって休み合わなかったし」
「分かってくれるからありがたいんだけどね。テニス部みんなこんな状況」
「でも村井くんと百合香ちゃんはよくデートしてるよね」
「まあ人による。千葉たちみたいに外出せずに家ん中で遊んでる奴もいるし、泰聖なんてほぼ予定合わないって。」

やはりこの時期は忙しいソフトテニス部。私たちが付き合ったあとは、国体予選だったり長期の遠征だったり、大会続いたり。とりあえず、昨日で落ち着いたみたいだが、来月も後半に大会が多数あるらしい。


私はカルボナーラを頼み、玲一はオムライスを頼んだ。


「七星さ、次の県大来るんだっけ。北春日に。」
と、聞かれる。

「そう。初日はつぐみちゃん付いてくれるけどすぐ帰って、2日目は私一人かなーって。」
「まあその辺に知り合いいるだろうしね。泰雅とか長江千葉とかダブルスしか出ないし」
「たしかに。」

9月の連休、彼らは北春日市で県大会がある。この間の新人戦地区大会で勝ち抜いた選手が出場する。



「なんか、嬉しいわ。遠くまで来てもらっちゃって」
「いや、私が行きたいから行ってるだけ。」
「知ってるけどさ。でもこちらとしては嬉しいよ。」

まあ、それならいいんだけど、ね。
迷惑になってないかなとか、たまに考えちゃうけど。


「むしろ、来てくれた方が頑張れるから、俺は。なんか、かっこいいとこ見せたくなるんだよね。モチベーションも上がるし」

と玲一は言うが、その後恥ずかしくなったのか、急に顔を隠す。


「そんな、面と向かって言われたらこっちが恥ずかしいよ」
私もつい、顔を赤らめてしまう。


玲一って急にこういうこと言ってくるから、本当に。







食事を終えると、店員さんがやってきて、室内が暗くなったと思えば、ケーキプレートが登場。そして、数本のロウソクも点いている。ケーキはガトーショコラで、「Happy birthday」とチョコペンで書かれている。



「え、びっくりした……」
と、玲一はかなりびっくりしている。

「ふふふ。17歳の誕生日おめでとう!」
「……ありがと。」


喜ぶ顔が見られて、良かった。








その後は近くのゲームセンターに入り、プリクラを撮ったり、少しだけUFOキャッチャーに挑戦したりした。


「玲一上手くね?」
「いつも妹のやつ取らされてるからね」

UFOキャッチャーをしていると、玲一は小さめのキーホルダーを2つ落とした。キャラクターもののキーホルダーだ。


「お、2つとは丁度良い。一つあげる」
「え、いいの?ありがと!」
「付けてあげる。」

と、強制的にそのキーホルダーは、私のバッグへ。

「玲一はつけないの?」
「ラケバのほうが使ってるからそっちに付ける。」
「あー、なるほど」

今日みたいに部活がない日は普通のリュックで来るんだけど、部活のある時は部活の備品などを入れるため専用のカバンで学校へ通っているのだ。ソフトテニス部は。







バスに乗って、家の付近に着くと、玲一が私のことを家の前まで送ってくれることに。って、少ししか違わないんだけどね、家の距離。


「こんなに嬉しい誕生日、人生で初めてだわ」
「じゃあ来年はもっと豪華にいっちゃう?」
「ははは。楽しみにしてるわ。」

なんて歩いてると、急に後ろから、抱きしめられた。


「きゃっ?!」
「あー、もう、好き。可愛すぎ。」
「え、ちょ、……。」

つい私は固まってしまい、なにもできない。



そこからは手を繋いで、私の家へと向かった。

家の前に着くと、

「今日はありがと。」
と笑顔で言われた。

「17歳、おめでとう!」
私はそう言って、家の中へと入った。






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