3.新人戦県大会1
荷物よし、準備よし。
9月の最初の三連休の1日目。今日は朝5時起きで、電車で北春日市へと向かう。つぐみちゃんは明日は部活があるから今日しか行けないが、 私は今日は泊まって明日も観戦するつもり。きっとそのうち知り合いに会うと思うから大丈夫でしょう。
「久々にこんな早く家出たわー。遠征とかいつも前の日から出てるから」
と、とても眠そうなつぐみちゃん。
私も実は北春日市に行くのは生まれて初めてである。着くまでに電車から空港が見えたり、景色の良い場所もある。
北春日市について、駅から歩いて30分もしないで着くのが北春日の旭丘公園のテニスコート。着いたら10時になるところだった。既にいくつかの初戦の試合は終わっている。
「つぐみと七星ちゃん?!よくここまで来たね!」
と、女子部の加奈ちゃんに話しかけられた。加奈ちゃんは今年、インターハイも出てる強者だ。
「たまにはって思って。加奈ちゃんも頑張って!」
「いやー、今まで結愛先輩に頼りきってたから自信ないなー。地区もダメだったし。でも頑張るわ!」
加奈ちゃんは夏までは結愛先輩と組んでいた。2年生は男子も少ないけど、女子はもっと少ない。3年生はそこそこいたが、その中でも、女子のレギュラーとして1年生から活躍していた。今は1年生と組んでいる。
クラスも違うし、最近になって、頻繁に話すようになったんだ。
「んー、地区の人誰か始まってる?」
とつぐみちゃんが辺りを見る。
と、近くにいた紺色のユニフォームのペアのゼッケンに目に入る。
「あれ多分、春日の池村野田じゃない?」
「ほんとだ!相手は……?」
「んーと、ちょっとまって」
スマホを取り出し、事前に公開されていたドローを確認する。
「白石工業の西坂田島、だって」
「あー。白工か。馬田しか知り合いいないからなー、今」
つぐみちゃんは顔が広い。馬田くんとは小学生の時から知り合いみたいだ。
と話していると、噂をしていた白石工業の馬田くんと、一緒に安藤くんがやってくる。
「玲一の彼女さん!」
と呼ばれる。
「いや、名前で呼んでくれたほうがありがたい…。」
「ごめん。七星ちゃんだっけ、ん?そこの隣にいるのは?」
と、馬田くんはつぐみちゃんのほうに目を向ける。
「わかってるくせにとぼけんな」
「相変わらずだなつぐみさーん。大宮とは仲良くやってる?」
「こいつ無視していいよ」
隣にいた安藤くんが馬田くんを止めるように話しかけてくる。
「馬田はすーぐ女の子に目行く。せっかく西坂たち頑張ってんだから応援しよ?」
「その言われ方俺が女好きみたいな言われ方だな」
「可愛い子大好きじゃん。このドルヲタ 」
「それとこれは関係ない」
と2人が仲良さそうに話していると、1人の男の子が馬田くんたちのところへ駆けつける。
「西坂先輩たちファイナルですよー」
と。ゼッケンを見る限り、白石工業の菅原くん。あれ、学年別大会の時に、菊山くんたちとの試合を見ていたことがある。
「星翔たち県大会の初戦で追い詰められるのは2年生初じゃないか。」
とつぐみちゃんは言う。春日高校の池村野田ペアと白石工業の西坂田島ペアは互角の勝負をしている。
「ずっと32以上は入ってたっけ今年」
「入ってた入ってた。国体予選のトーナメントは16入ってるし」
そして西坂田島ペアがリードし、そのまま勝利へと導いた。春日高校ペアは惜しくも敗退。だ。
「やば、春日の1番手に勝ったしあいつら」
と近くにいた安藤くんは言う。
と、急に横から声をかけられる。
「つぐみ先輩、七星先輩。野田さんたち負けたっぽいです? 」
と。声をかけたのは長江くんだった。
「いや、歩いてたらたまたまこの試合目に入ったんで気になってたら丁度先輩たち見つけたので。」
「その通り。白工ペアの勝ち。」
「まじですかー。」
長江くんと話していると、長江くんの元へ、菅原くんが飛びついてやってくる。
「長江ー!!初戦勝った?」
「うわ!勝ったんだけどやっぱ次お前らか?」
「そうそう!長江と当たるの楽しみにしてたー。千葉くんは当たったことあるけど長江とは何気ないよね」
そういえば、長江くんたち南が丘中が全国出た時に個人戦で全国に出た緑陽西陵中の三宅菅原と何回か行動を共にしたことがあるって言ってたっけ。
「まあ2回当たって2回ともボコられたけどね。団体の時もシングルスの時も」
と千葉くんも入ってくる。
「これはかなりの好カードだよ七星ちゃん」
と話を聞いていたつぐみちゃんが隣でボソッと呟く。
「まあ当たるまでまだまだなんですけどねー。俺たち今1回戦終わったばっかなんで。」
と千葉くんが言う。
まだ、早いところで1回戦の3試合目の途中、遅いところで2試合目が終わりそうなところだ。
「ちなみに馬田たちはまだなの?」
とつぐみちゃんは馬田くんに聞く。
「初戦は勝ちましたとさ」
「どこまでいけそう?」
「16掛けで平松志村だから32いけたらいいなーみたいな。」
「あーなるほど。」
「西星あと誰かこれからの人いる?」
と私は千葉くんたちに聞く。
「そもそも先輩たち強いんで西星で初戦からの登場自分たちだけなんで、長島先輩たちはまだまだですね。」
「あーそっか。」
というわけで、私とつぐみちゃんは一旦この場を離れて、ぐるりと見て回る。と、そこに何故かついてきた1年生2人。
すると長江くんが目に入ったのは、星の里高校1年生の大橋小松ペア。
「あの前衛、小松飛鳥は俺の中学の時の仲間です!一緒に全国行った時の。」
と長江くんは紹介する。団体で全国出場した時の南が丘中だが、2人ほど星の里高校へ進学したみたいだ。
「あれ、山岡も星の里行ったよね?」
と千葉くんは長江くんに聞く。
「あー、行ったし今日もいるはずだけどあいつ今日見てねえ」
と話していると、長江くんの後ろに1人の男の子がやってくる。
「長江、千葉、俺ここにいるけど」
「うわ、山岡じゃん、久しぶり」
噂をすれば、星の里高校1年生の山岡広夢くん。長江くんが中学の時に組んでいた元ペアの子みたいだ。昨年のさくら市の中学生といえば南が丘中の長江山岡ペア。個人戦でも県大会で5位に2回入っている。
千葉くんも、山岡くんや小松くんとは少年団が同じらしい。というか、南が丘中の全中出場したレギュラーはほとんど少年団出身らしい。
「国体予選の時タイミング悪くて話しかけられなかったからな。本気で卒業ぶりじゃね?」
「俺もあの日、山岡も飛鳥も見かけてはいたけどな。本当だわ」
「南陵の国本古澤もさっき会ったし。もしや今日あの時のメンバーみんな出てる?」
「そうじゃね?硬式行った志賀以外は」
長江くんも、久しぶりに会えて嬉しそう。いつかは元ペア対決、見れるのかな、なんて期待しておく。
大橋小松ペアの相手は北春日地区にある私立高校、石前大北春日高校の長尾佐久間ペア。北春日地区は今の代は激戦なんだろう、と結果を見てて思う。他にも丘野高校の及川天野ペアや、東陽高校の関根谷端ペアや藤川小島ペアなどがいる。
長尾佐久間ペアは確か中学でも組んでて、あと1歩で全国出場というところまで進んだ経験もあるみたい。高校でも今のところ数々の県大会でそこそこと勝ち進んでいる。
大橋小松ペアは二人とも背が高い。小松くんのほうが少し高いぐらいだが。
どうやら終盤だったようで。この試合は長尾佐久間ペアの勝利。
「あいつら負けたし」
と山岡くんは言う。そこに長江くんは思い出したことがあるみたい。
「あー、長尾佐久間は強いよなー。山岡さ、中2の県大会の時ボコられたの覚えてる?」
「あ、北春日南中の?」
「そうそう。あのままベスト8入ってたペア」
どうやら中学生の時に長尾佐久間ペアと当たったことがあるらしい、長江山岡ペア。ということは、彼らは中学2年生ながら夏の県大会へ出場していたが、初戦で長尾佐久間ペアにボコボコにされたみたい。
「長尾佐久間ペアのように、中学からずっと組んでて強いところも少なくないからね。丘野の及川天野とか、釜川の水上田村とか。」
つぐみちゃん曰く、今年の2年生はそんなペアが特に多いとのこと。
1年生2人とはここで別れ、2回戦に入ると、つぐみちゃんがすぐに目に付いた試合があった。
北陽学園の1年生ペア、鶴川菅ペアと、光葉台高校の三宅柴野ペア。
私も、1年生から噂は聞いていたので三宅くんのプレーを見てみたいと思っていた。
「なんかもうここ一瞬見ただけでえげつないんだけど」
「それ分かる……」
とつぐみちゃんが言うように、一瞬見ただけですごいって認識をした。北陽の1年生ペアも中学まで全国大会多数出場している経験がある。
大期待の1年生の三宅くん、そのペアは2年生の柴野くん。柴野くんと中学で当たったことあるらしい長島くん曰く、緑陽西中出身らしい。西中といえばかつて、団体戦で連覇し、何年も続けて全国出場した中学だ。
2人して目を離すことができなかった。まだ2回戦だが、レベルが高い。
そして北陽学園のペアがなんとか勝利を掴む。
「三宅くんやばいね…」
と私は言う。
「しかもまだ1年生だし、これからどうなるんだろうね。西星の1年生の中でも度々話題になってる」
「そりゃあ、なるかもね。」
なんて話してると、西星の1年生ペア、長江千葉ペアの2回戦が始まる。
「あ、やばい、長江たち始まる!!」
とつぐみちゃんが見つけ、ダッシュで向かう。
相手は先程の白石工業の古川菅原ペア。ちなみに、三宅くんを見たあとの菅原くんになるのです。菅原くんと三宅くんは、中学時代のペアだったみたいだから。
白石工業の1年生エースと、西星の1年生エース同士の試合。実はドロー公開された時から、ここが当たることを祈って、楽しみにしていたのだ。
「うわー、長江もやけに張り切ってるなー。」
なんて長江くんの様子を見たつぐみちゃんが言う。長江くん、初っ端から楽しそう。
一言で言うと、菅原くんは上手い。チャンスをしっかり掴めている選手だ。どちらかというと菅原くんがポイントを決めることが多く、むしろ古川くんが決めることはあまりなく、守るプレーが見られる。背も低く体格は小柄だが、それでも必死にボールに食らいついて、ラリーを繋げている。
試合の展開は、とてもハラハラする展開だ。お互い1歩も譲らない。どちらが勝つのか分からない。そんな状況で、3対2で白石工業ペアがリードする。
「白工ペアやばいね。今時期でこれは来年どうなるんだろう。」
私も、今後のこのペアが楽しみになる。
「本当にね。」
今年の緑陽地区は1年生もレベルが高く、公立も激戦になっているらしい。今や2年生エースの馬田安藤ペアと1年生の古川菅原ペア、どちらが1番手の座に立っているのだろうか。
長江千葉ペアは粘るも、そのまま相手にマッチポイント握られ、そのあとは菅原くんが決めたボレーを長江くんが取れず、そのまま白石工業ペアの勝利となった。
「あー、長江千葉ペア負けちゃったか!!でもレベル高かったわ。さすがだわ。」
2連続で、ほぼ1年生ばかりの白熱の試合を見て、感覚が狂いそう、なんてつぐみちゃんは言う。
「玲一たちはまだ?」
「んー。てかどこにいるのかが分からない。」
と、私達はキョロキョロする。
このタイミングで、私はお腹を鳴らしてしまう。
「……そういえば、昼ごはん買うの忘れてたね」
つぐみちゃんと2人して忘れていた。今昼ごはん食べておかないと、タイミングが悪くなっちゃう。
ということで一旦テニスコートを離れて、コンビニにお昼ご飯を買いに行った。
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