8.男と女




春休みには、初夏にある全国大会の予選が行われるんだっけ、確か。
こちらの枠は3枠。開催県だし、私も観に行こうと検討しているところ。

西星高校は近年毎年出場者がいる。野本先輩もその1人だ。




そんなことはさておき。

今まで何だかんだ考えてこなかった恋愛。というよりも、「女性と男性」という関係。

「七星は男に対する危機感が無い」
というのを玲一に面と向かって言われてから、考えるようになった。

中3の時にクラスの男子に襲われかけた話を1番知ってるのは玲一だ。むしろあの人、目撃者だから。…この話は、考えるのやめよう。






漫画を借りに玲一の家に行ったはずなのに、気づいたらそんな話されて、他には…
いや、思い出しただけで恥ずかしくなってくる。私、玲一に…。き、キス…されたんだよね…


あの日から4日経つけど、未だに頭から離れない。本当に、なんでだろう。
でも中3の時の件と違うことは、何故か、嫌だとは思わなかった。本当に。



「…ええ?!玲一にキスされたの?!」
「しー!つぐみちゃん声でかい!」

とりあえずつぐみちゃんに話すしかないと思った。2人で遊ぶ約束だったのに何故か、大宮くんと藤木くんまでいるんだけどさ。

まあ、つぐみちゃんと大宮くんは最近付き合い始めたみたいで。

「やっぱあいつも男見せてくるなー最近。」
と、大宮くんが言う。
「え?」
「あ、こっちの話。」


「でも玲一あいつ、七星のこと心配してたのは確かだよ。男を男として見てないからそのうちまた変なことに巻き込まれるんじゃないかって。」
と大宮くんが言う。玲一とクラス同じだから、聞いてたんだろう。でもやっぱり、本心だったんだ、あれ。

「大宮くんはどこまで聞いたの?私が中3の時酷い目に遭った話」
「いや、七星にそんなことあった、しか聞いてない。自分から話振っといてそれ以上は話そうとしなかった。」


「っていうかむしろ、俺とつぐみは初耳なんだけどそんな話」
と藤木くんが言う。
「まあ、あんまり言いたい内容じゃないだろうね。私もこれ以上突っ込みたくないし。」
とつぐみちゃんも。



なんて話してると藤木くんが突然
「ひとつ聞いていい?」
と言ってくる。

「よ、恋愛マスター」
なんて大宮くんが煽るのを藤木くんはスルーしてるけど。

「玲一のことはどう思ってんの?キスされた時何思った?」
「何を思ったって…?」
「はっきり言えば、嫌か嫌じゃなかったか」

まあこれはハッキリしてる。嫌ではなかった。

「嫌ではなかったけど…」
「なるほどねー。」

え、嫌か嫌じゃないかで分かるものなの?こういうのって。



「とりあえず、恋愛ってどういうものかちゃんと理解したほうがいいとは思う。宏斗も最初そんなんだったし、少女漫画みたいな華やかな恋だけじゃないから現実は。」
とつぐみちゃんが言う。

「俺は兄ちゃんのそういう話聞かされ続けたからね。今はラブラブしてるけどその前普通にひどい人だったし、」
と大宮くんも言う。
「あれ斗弥くん彼女できたの?」
つぐみちゃんが聞く。
「それができたのよねー。しかも西星だった人だし、日菜子先輩の友達だってよ」

大宮くんのお兄さん、他校だけど、結構な有名人だと聞く。野川先輩が彼女の可鈴先輩と1回別れた時に関わってたのがこの人だったという話もちらっと聞いたような。



「1つ質問。異性って考えると、そう簡単に手を出したくなるの?男の人って」
と私は聞いてみる。

「んーまあ、その時の雰囲気によるんじゃない?でも二人きりで女といると、そんな雰囲気にもってかれちゃう。好きだったら尚更。」
と藤木くんが言う。本人曰く経験談らしいが。


「まあ、七星ちゃんもそういうの意識したほうがいいよ。ただ男にホイホイ付いてっても、そのうち本当に大事に巻き込まれるかもしれないよ?」
「それは…、今回のことでよく分かった。」


正直、それが玲一だったというのが1番身に染みている。自分が今まで世間知らずだった部分が一番悪いが、今までずっと親しかった友達の玲一が、突然あんなことしてきたから…。

「七星、顔赤くね?」
と大宮くんに突っ込まれる。
「え?!」
「いや、何でもねえわ」

え、なんで私、顔赤いって言われたの?!











数日後、玲一から連絡が1件。

「ちょっと今、時間ある?」
と聞かれる。
「大丈夫」
と返す。

「その辺歩きたいだけだから、怖がらないでいいから」
と言われ、玲一は家まで迎えに来てくれることになった。

どうしたんだろう、いきなり…。




「この前のこと気にしてる?」
と話を振られる。
「…正直。気にしてる」
「本当にごめん、」

もしかして、玲一もずっと気にしてたんじゃ…

「いや、こっちのほうこそごめん。色々と、」

みんなに話してて、どういう事だったのか、ようやく理解はできた。


「びっくりした?俺のこと怖いとか思った?」
と、聞かれる。私は頷く。
素直に答えることしかできない。

…確かに、こわかった。力があって、振りほどこうとしてもビクともしない。玲一も、男の人なんだなって。

「でも、私の無知さに気づけたから…。玲一も男なんだなって」
「…ならいいけど。つーかなにそれ、褒めてる?」
「いや、正直に思っただけ」

でも、前に藤木くんに聞かれたように、自然と嫌ではなかった。なんだろう、これ。


「とりあえず、俺にも異性としての警戒心持った方がいいよ。場合によっては、この前みたいになるから。」

友達は友達でも、男と女。という大きな違いがある。いくら、仲の良い玲一でも…。ってことだよね。


「もし七星のこと好きな奴とこうやって二人きりになってたら。七星はそういう男の下心なんて気づけないしょ?」
「…たしかに。」
「まあ、それは仕方ないとして。」
「なんか、私のことなのに私のこと全部分かってて玲一尊敬する」
「まあ、結構長い仲ですからね」

っていうけど私、玲一のことあんまり分からないような気もする…。こうやって人の内面とかに気づけないから、ここまで繋がったのかもしれないけども。


「俺、テニス部の中で1番七星のこと知ってる自信あるかも」
なんて言ってくる玲一。か
「その言葉に反抗したかったけど、昔からの付き合いが玲一しかいないからな」
「そこなんだよね。なんで俺ら中学でいきなり仲良くなったんだろうね」
「でも小学生の時も普通に話してはいたけどね」


親しくなったのは中学入ってからだったりする。同じクラスのメンバーと遊びに行ったりとかしていたから。よく。



ふと、思う。
玲一も、大人っぽくなったなと。
外見も内面も。

…こんな、かっこよかったっけ。男らしかったっけ。

でも、話してて1番落ち着く男の人は、この人かもしれない。テニス部の色々な先輩や同級生と関わっているけど、昔からの付き合いだからか、とても安心感のある。



「ま、これからもよろしくお願いしますね」
「こちらこそじゃん!」


この時の私は思ってなかっただろう。
数ヵ月後の私たちなんて。





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