ソファの上で先輩の膝の上に寝転がり、スマホを顔の上に掲げて眺める。顔に落としたら痛いやつだが、今は眠くないので平気だろう。

「リアルおっぱいマウスパッド」

 そんなふうに過ごしていたら、くだらないことを言いながら、先輩が片手を私の胸に乗せて、タブレットを眺め始めた。さっきまでは普通に見てたはずなのに。
 無言でそっと手首を退ける。

「なんだよ、別にいいじゃねぇか」
「良くないです」
「よく言うだろ?山に登るのはそこに山があるからだ、って。それと同じだ」
「意味わかんないです」

 言わんとしていることは分からないでもないが、付き合うのは馬鹿馬鹿しくて一蹴する。
 スマホを置いて、体を起こして、向き合うように跨ると先輩は嬉しそうな顔をした。しかし、気にすることなく両頬をむにゅっと潰して変な顔にする。唇がヒヨコみたいに尖っている。

「変なこと言うのはこの口ですか?」
「そうだな」

 喋りにくそうに返事をする。その様子が可笑しくて、笑いそうになるのを唇を結んで堪える。
 それから、先輩は何も言わずに、ぴよぴよと鳴くかのように唇を開けたり閉じたりを繰り返した。堪えていた笑いが思わず漏れ出す。

「ふふっ」
「つれないことを言うのはこの口か?」

 もにょもにょした声で話しながら、先輩も両手で私の頬を押し潰して、無理やり唇を尖らせる。

「さぁどうでしょう?」

 はっきりと喋れないけれど、しらばっくれてみた。それから私も負けじとぴよぴよ唇を動かした。

「ははっ」

 挟んだ両手の、その下の頬がきゅっと上がるのを感じた。目が楽しそうに細まる。二人揃って頬を潰し合っているおかしな状況のまま、先輩の顔が近付いてくる。言うまでもなく、これはキスだ。でも、そのままキスされるのは、なんだか理由もなく悔しくて、先輩の頬をむにっと横に引っ張る。

「おい」

 今度は横に開いた発音で、咎める言葉。少しむっとした目つきをしている。それでも強引に顔を近付けてきて、横に伸びた唇のまま私の尖った唇にキスをした。
 それから先輩も私の頬を引っ張るのかと思いきや、口の端に人差し指を突っ込まれて、そのまま横に伸ばされる。たぶん今の私は先輩よりも間抜けな顔をしている。

「うぅー」

 不満を示すために眉間にシワを寄せて唸ってみても、先輩の目は楽しげな色を映すだけ。ニヤついているのが目だけでも分かる。
 開放してもらうためにいったん手を離した矢先、片側に中指も差し込まれた。歯を撫でられて、なんだか動きが怪しくなってくる。先輩、と呼びかけようと口を開くとすかさず指が舌を挟んだ。これ以上好きにさせてはいけない。指をそれなりに強く噛むと、さすがに驚いたのか口の中から出ていった。

「先輩、ヘンなことはだめですよ」
「わかったよ」

 痛そうに手を振りながら、仕方ない、というように言葉が吐き出される。けれどもその素直な言葉に免じて、私は再び先輩の両頬を捉え、キスを贈った。