ベッドの上でキスをしたり、転げまわってくすぐり合ったり、そんなことをして戯れていた。二人分の笑い声が次々と上がる。
そんな中、なんの脈絡もなしにふと思いついたことを言ってみる。
「なぁ、今日はお医者さんごっこしてみようぜ」
「お医者さんごっこ?」
「そう、俺がお医者さん」
俺の腕の中でくすぐられていたナナシは目をぱちくりさせて言葉を繰り返す。
「私は看護師さんですか?」
「んー、それもいいけど、なんか職場でヤッてるだけみたいな気も…」
ドクターとナース、それもまた良いのかもしれないが、微妙にリアリティのある設定のように思えて、あまり気は乗らない。それに職場でヤるなら、俺たちだって現実にできないことはない。さすがに常識は弁えているから実際にはやらないが。……たぶん。
「じゃあ患者さんですか?」
「俺はそっちの方がエロいと思うけど、お前はどう思う?」
医者と患者の方がファンタジーで楽しめそうだと思った。たぶんナナシは俺に賛同してくれるだろうが、念のために尋ねてみる。
「うーん…先輩がやりたい方でいいです」
「じゃあ決まりだな!」
こういう時のナナシは、俺がやりたいと思っていることを叶えてくれる。今夜やることが決まって気持ちが乗ってきた。
「さて、そうと決まれば治療の時間だ。ほら、服」
「はい」
雑な指示だったが、催促するとナナシは大人しく服を脱いでいく。俺が下も脱いだのを見てナナシもすべての服を脱ぎさった。裸になって、ベッドの上で向き合って座る。
「じゃあまずは診察からだな」
ナナシは眉を下げて少し不安そうな顔をする。
「触診だからな、体触るぞ」
「はい…」
診察だの何だの言ってはいるが、結局はいつものようにキスをする。頭の後ろに手を回して、何度も何度も口づける。やがて開いた口の隙間に舌を差し込み、彼女の熱い口内と舌の温度を堪能する。
「ん、っふ、」
時折漏れる彼女の声が己の内の情欲に火をつける。体のラインをなぞるように片手で撫であげると、彼女の体はびくんと跳ねた。唇を離すと、二人分の荒い呼吸が混ざって一つになる。
耳を舐めて、胸に手を触れる。彼女の吐息が漏れる。首筋を吸ったり舐めたりしながら、優しい力で胸に触る。先端にはまだ触れない。ナナシの両手が俺の頭をそっと抱きかかえた。
首元から顔を上げて、彼女の瞳を見つめる。艶めいた色がゆらりと滲んでいる。薄く開いた口から漏れ出るのは乱れた呼吸。じっと瞳を見つめたまま、胸の先端を幾度か撫ぜる。はっ、と息が吐かれて、びくっと体は震える。そのまま撫で続けると、じわりと目尻に涙が滲み、気持ち良さそうな表情に変わっていく。
「はっ、ぁ、」
「これ気持ちいいの?」
「っあ、はい、」
どこか泣きそうにも見える表情のまま、彼女は頷く。
「診察中は、気持ち良かったら今みたいに教えてくれ」
「っ、はい、」
顔を胸に寄せ、先端を唇で挟み軽く吸い上げる。
「ぁ、それ、きもちいです、」
「そうか」
一度顔を上げ、指示に従えた彼女の頭を撫でる。それからすぐにまた胸に唇を寄せた。早速、気持ちがいいことを教えてくれるナナシは可愛らしい。吸ったり舐めたりを繰り返す。後ろ髪がぎゅっと握りこまれる。気持ち良さそうな声が絶え間なくあがる。
こんなものか、というところで顔を上げ、額に、唇に、キスをする。それから、腰、太ももと順番にゆっくり撫ぜて、最後の目的地、脚の間に手を忍ばせる。
入り口を下から撫であげると、すでに少し濡れていた。そのまま通り過ぎて敏感なところに辿り着く。
「ぁっ、あ、きもちいです、」
指で擦ってやると、すぐに気持ち良さそうな声を上げて、気持ちがいいと申告した。快感を逃すかのようにぎゅっと首にしがみつかれる。耳元では熱い吐息と甘い声。びくびくと跳ねる体を空いた手で抱きしめてやると、抱きつく腕の力が更に強まった。
「体、少し後ろに倒せるか?」
「っはい」
頃合いを見計らって指を止めた。両手を後ろについて、少し体を倒してもらう。両脚は大きく開かれていて、中心部がこちらからは丸見えだった。中指を入り口にあてがい、中に沈めてゆく。出し入れをすると、くぷくぷと音がなる。
「ぅ、っあ、きもちぃ、」
彼女の好きなところをトントンと指で押し上げると、ぎゅうっと目を瞑って耐えるようにしながら快感を口にした。ぐっと頭を後ろに反らし、脚を広げて喘ぐ彼女は中々に大胆な姿で、こんな姿も良いなと、体の底からふつふつと湧き上がる衝動が加速していくのが分かった。
「んー、これは適切な治療を行わないと大変なことになりそうだ」
指を抜いて、彼女の病状について深刻そうに言ってみる。ナナシも体を起こして俺の顔を見た。
「先生、私治りますか?」
「あぁ、ちゃんと治してやるからな」
快楽に浸かっているからか、どこかぼうっとしたように問いかけられる。
ベッドサイドの引き出しを漁って玩具を取り出した。治療にはこれを使う、と軽く振ってみせると、ナナシは不安そうにきゅっと唇を結んで、へにゃりと眉を下げた。嫌い、という訳ではないが、気持ち良くて不安になる、と以前聞いたことがある。
「じゃ、横になって脚開いて」
「はい」
眉をハの字にして不安を示しながらも、大人しく言われた通りに従った。緊張しているのが伝わってくる。緊張を和らげるために腰を幾度か撫でる。
「じゃあいくぞ」
「あっ、ぁ、きもちぃ、」
スイッチを入れて小刻みに震えるそれを敏感な突起に押し当てると、早くも甘い声が上がりだす。そのまま撫でるように動かすと、気持ち良さそうに声と体が跳ねた。腕で目元を隠しながら、快楽を享受している。呼吸に合わせて胸は大きく上下する。
「ふっ、ぅ、」
びくんと体を跳ねさせて、高い声を上げ、そろそろイキそうだな、というところで玩具を離し、束の間の平穏を与える。軽く息を整えたのを確認して、今度は中へ挿入する。
「は、っぁ、きもち、」
玩具の先端で、入り口近くの上壁をぐ、ぐ、と押し上げてやると、びくびくと体を震わせながら甘い声で喘ぐ。それから徐々に奥へ行くように出し入れを繰り返し、それはやがて最奥に辿り着いた。
「んっ、ぁ、」
「気持ちいい?」
「っぁ、はぃ、」
奥に軽く押し当てているだけでも切なそうに泣き声を上げる。喋ることもままならなさそうなので誘導してやると、絞り出した言葉がどうにか返ってきた。
グイグイと一定のリズムで押し込むと、どんどん高い声が上がる。髪を振乱すかのように頭が大きく揺れる。そのまま動かし続けていると、彼女はびくんと大きく体を揺らし、絶頂を迎えた。
スイッチを切って、中から抜き出す。表面はテラテラとぬめる液体が付着していた。玩具を脇に置いて、ナナシに覆い被さる。
「今日の治療はこれでおしまい」
「ぇ…?」
思った通りにナナシは驚いて物足りなそうな顔をする。挿入はせずに猛った自身を秘部に擦りつけながら、会話を続ける。
「今日はもう終わり。これで大丈夫だ」
「ぁ、ぅ…」
そっと頭を撫でてやる。ナナシは小さく喘ぎながら、戸惑ったような表情をした。俺は何も言わずに彼女を見つめる。ナナシの瞳は蕩けきって色欲に濡れていた。そんな彼女を綺麗だと思う。
「っぁ、せんせぇ、お注射ください」
「注射はしなくても大丈夫だぞ?」
我慢しきれなかったのか、自らおねだりをしてきた。今の彼女を見るに、少しくらい意地悪をしても、意地を張って「いらない」と言わないであろうことは明白だった。だからあえて意地の悪いことを言っている。それが普段は見せない彼女を引き出している。
「ぁ、せんせぇ、お願いします。お注射ほしいです。ください。おねがい」
頭の中まで快楽で蕩けきり理性を飛ばしてしまっているのか、荒い呼吸のまま、目に涙を浮かべ、ゆらゆらと視線を揺らしながら必死に俺を求める。その様を見ると、支配欲が満たされた。
「それじゃあ特別だぞ?」
「はい、ぁ、あっ、」
声と瞳が期待に揺れる。返事を聞いて、股の間に擦りつけていたものを、間髪を入れずにズブズブと押し込み、腰を揺らし始める。色めいた、悲鳴にも似た声が響き渡る。
「きもちぃ、はっ、ぁ、」
涙がこめかみを伝って流れてゆく。
「っぁ、あ、おく、奥に出してください」
まさかそんなことまで口走るとは思っておらず、驚きから僅かに目を見開く。だがそれも、自身を求められていることに変わりはなく、すぐに嬉しさに変わった。まるで逃さないと言わんばかりに彼女の脚が腰に絡みつく。
「大丈夫。ちゃんと出してやるからな」
顔を寄せて、唇がぎりぎり触れない距離で囁く。嬉しさから緩んだ頬は恐らく抑えきれていない。そのまま腰を動かし続ける。少しずつペースを上げていくと、泣き声のような嬌声が部屋に響いた。やがて一際大きな声で彼女が鳴いて、びくん、びくんと体を震わせる。中がぎゅう、ぎゅうっと締まる。いつも以上の締め付けに、思わずうめき声が漏れた。約束した通りに中で出し切って、役目を終えたそれを、ず、と抜き出す。
「これで治療は終わり。お医者さんごっこも終わり」
唇にキスを贈る。彼女の横に横たわると、ナナシは俺の胸に頭をぐりぐりと押し付けてきた。荒い吐息を肌で受け止める。
「大丈夫か?」
声は出さずに頷かれる。頭にキスを贈って抱えるように抱きしめた。
「私、もう治りましたか」
「あぁ、ばっちり元気になってるはずだ」
「よかったです」
しばらく俺の胸に埋めていた顔が上げられ、未だ蕩けたままの瞳で俺を見上げる。髪を梳いて、額にキスをして、最後に唇にキスをした。