ぽつりぽつりと降る雨はそう時間が経たないうちに、雨粒が地面に叩きつけられて、派手に反射するほどの土砂降りになってしまった。傘を買おうにもコンビニまでは距離があったため、近場のカフェの軒下に駆け込み、激しく降りしきる雨をしのぐ。カフェに入っても良かったけれど、私たちと同じ状況の人たちで溢れかえっていたため残念ながら諦めた。
「すごい土砂降りですね」
「あと5分待ったら、びしょ濡れ覚悟で帰ろうぜ」
「そうしましょう」
そう言葉を交わしてから、会話のない時が流れる。当然ながらそれは決して気まずさなんてものはなく。そっと指先を触れ合わせて、目を合わせて。ふっと二人で微笑んだ。
雨を見つめながら、密やかな手遊びを楽しむ。ちょん、ちょんと軽やかに人差し指に触れられたかと思えば、するりと指の背を撫でられる。先輩を見上げると、彼もまた私を見つめていて、目と目が合った。楽しげな色を乗せた青色に、私も楽しい気持ちになる。指を絡めて軽く握ると、きゅっと握り返された。
絡めた指を解きながら正対して、そっと両手を取られる。特に意味もなく上下に動かして、二人揃って小さな笑い声を零した。軽く手を握られて、今度は左右に小さくゆらゆら揺らす。両手を見つめていた視線を上げると、優しい瞳が私を見下ろしていた。
そんなふうに戯れていると、あっという間に時間は経った。通り雨を期待しての5分だったけれど、現実はそう甘くはないようだ。ザーッと音を立てて降っているのは変わらずに、濡れ鼠になって帰る時間になってしまった。ちらりとスマホで時間を確認してからカバンにしまい、雨に向かい合う。
「ほら」
「わ、上着。良いんですか?」
先輩がジャケットを脱いだかと思えば、バサッと私の頭に被せた。
「無いよりマシだろ?」
ニッと弧を描く唇。気遣いが嬉しくて、人知れず心を弾ませる。
「じゃあ私のをどうぞ」
お返しに、背伸びして先輩に上着を被せた。うまく被せられなくて、先輩の顔がジャケットに埋まる。先輩がもぞもぞと手を動かして、ようやく顔がお目見えした。帽子を被っているからあまり意味はないかもしれないけれど、きっとこういうのは気持ちが大事なはず。
見つめ合って、ニンマリ笑って、手を繋いで、雨に向かって駆け出した。