いつもと同じだった。先輩の家に入り浸って、一緒にゲームをして、おしゃべりして、笑い合って。そんなふうに変わらない時間を過ごしていた。
 テレビを見つつお菓子を摘む。先輩はポテチを。私はチョコチップのクッキーを。咀嚼して、飲み込んで、ふと何気なく先輩の方を向いた。先輩も私を見た。交わった視線がいつもと違った。先輩も、私も、確かに違った。空気は一瞬にして、しっとりと艶めいたものに変わっていた。

 驚いて小さく息を呑む。先輩も軽く目を見開いた。でもそれはほんの一瞬のことで、先輩の目は今までに見たことのない色にじわりと染まる。
 私の方に向きを変えて、片手をソファの背もたれに。もう片方の手を私の肩に。ゆっくり顔が近づいてくる。私は瞼を下ろして唇を受け入れた。空気に飲まれる。

 唇が離れた。見つめ合う。青の瞳の奥にはゆらゆらとした何かが隠れている。もう一度顔が近づいてきてきて、キスをした。何度も何度も。
 先輩の手が頭の後ろに回ったかと思うと、呼吸のために開いた唇の隙間から熱い舌が入ってくる。舌が触れ合うと、思わず声が漏れた。今度はそれを繰り返す。キスだけでこんなに気持ちがいいのは初めてだった。ようやく顔が離れて、唇を結んでいた糸がぷつりと切れる。
 二人の呼吸は荒い。再び見つめ合うと、先輩の目の奥のゆらゆらは隠れることをやめていた。ドクンドクンと心臓が高鳴る。

「あっ、」

 首筋に唇が触れる。それだけなのにびくんと体が震えて、声が出た。軽く吸われたあと、また少しずれた場所へと移動してキスをされる。
 そのまま素肌へのキスを続けられながら、服の上から胸に触れられた。やわやわと軽く揉まれ、親指は頂点を探すように胸を撫ぜる。

 先輩がソファから降り、私の隣に立った。軽々と姫抱きにされて、寝室へと運ばれる。あぁほんとにするんだな、なんて他人ごとのように思う自分が、頭の隅っこに小さく居た。

 先輩の家にはよく泊まっていたけれど、いつもはソファで雑魚寝をしていて、寝室に入るのは初めてだった。寝具は黒一色で統一されている。ベッドの上に優しく降ろされた。
 それから先輩は何も言わずに服を脱ぎ始めた。体に刻まれたタトゥーが顕になる。私もそれに倣って服を脱ぐ。じっとこちらを見つめる視線を感じながら、最後にパンツを脱いで、裸になった。
 先輩がベッドの上に、私と向かい合うようにやって来る。肩と頭に手を添えられて、再びキスの時間が始まった。初めは優しく、次第に深く。

「ふ、ん…」

 先輩の目には青い炎が宿っていた。チラ、チラと熱く燃えている。優しく押し倒されて、先輩が覆い被さってくる。首を、鎖骨を、胸を。順番に唇と舌で撫でられてゆく。それと同時に手のひらは胸を撫でて、脇腹と腰を往復するように愛撫した。

「あっ、ぁ、」

 ちゅ、ちゅ、と胸にキスをしていた唇が、先端を捉える。思わず声が出て、びくんと体を震わせる。舐められたり吸われたりするのが気持ちよくて、どうしたらいいか分からなくなる。先輩の頭を抱え込むようにして、髪を握った。

 そうしている間にも、先輩の手はするすると下腹部を通り過ぎて、指先は私の股ぐらにまで到着していた。入り口がすでに濡れているのは自分でも分かる。確かめるように指先が数度往復して、その上にある敏感なところに触れた。

「っ、はっ、」

 優しく撫でられると、じんわりとした快感がどんどん溜まっていく。気持ちよくて涙が溢れる。びく、びくと体が跳ねる。声を抑えることなんてできない。そんな余裕なんてない。

「っふ、ぅ、んっ」

 撫でるスピードが早くなり、より一層快感が押し寄せる。このままだと限界を迎えてしまいそうだった。それを見計らったかのように指が止まる。先輩は胸から顔を離して体を起こし、私の足の間に陣取った。
 改めて指先が入り口に押し当てられる。ぬるぬると入り口を撫でてから、ゆっくりと指が入ってきた。そうしてゆったりとしたペースで出たり入ったりを繰り返す。先程までとは違い、穏やかな快感が体に満ちる。

「はっ、ぁ、」

 しかし途中で動きが変わる。上壁の気持ちいいところを探り当てられて、お腹にゾクゾクが溜まっていく。中がきゅっと締まるのがわかる。気持ちがよくて、また涙が頬を伝った。
 最後にぐちゅぐちゅと何度か出し入れをしてから、先輩は指を引き抜いた。私の上に覆い被さり、入り口に熱いモノをあてがう。目元を隠していた腕を避けられて、涙を溜めた目のまま先輩と視線が合う。青い炎はギラギラと燃え盛っていて、私を飲み込んでしまいそうだった。顔が近づき、ちゅっと軽いキスが唇に落とされる。

「はぁっ、あぁ、」

 ぐっと先輩のモノが押し込まれる。中に入ってくる。きゅ、と中が勝手に締め付けるとその存在をより生々しく感じた。行き止まりまで来てもそれはまだ奥まで入りたがっていて、ぐっと子宮が押し上げられる。はっ、と息が詰まる。
 おでこに張り付いた前髪をそっと避けて、キスをされた。青い炎が私を見て、それから唇にもキスをされる。

「ぅ、うぅ、」

 中のものが少しだけ出ていったかと思えば、またすぐに戻ってきて。再び快感が私を襲う。けれども先輩の動きはとても優しくて、穏やかな気持ちで、きもちがいい、を感じることができた。
 乱れた呼吸に混ざって、先輩は時折キスをくれる。私はそれを嬉しいと思った。

 急にゾクゾクっとした快感が強くなり、限界が近いことを感じる。先輩にもそれが分かったのか、腰を動かすペースが上がった。

「はぁ、ぁっ、あぁっ」

 ゾクゾクが弾けて、気持ちいいが全身を襲う。ポロポロと涙が零れる。先輩も短く息を詰めて、達したようだった。
 繋がったままで、労るような、優しいキスをされる。見上げた先輩の目の青い炎は鳴りを潜めて、ただ熱だけが残っているようだった。
 先輩が中から出ていって、私の隣に横になる。私も向かい合うように体の向きを変えた。少しずつ呼吸を整える。

 いつもと違う空気に飲まれてここまでやってしまったが、私たちは体だけの関係になった訳ではないようだった。それは今までに見たことがない優しい顔をした先輩を見れば分かる。何より私自身の心もそうだ。

「ナナシ」

 おでこと鼻がコツンとぶつかって、先輩が私の名前を呼ぶ。返事をする前に優しい唇が私に触れた。それが嬉しくて、笑い声が溢れた。