隣に座っていた先輩がもぞもぞ動いたかと思うと、私の背中とソファの背もたれの間に体をねじ込んできた。仕方がないので浅く腰掛け直して先輩の腕の中に収まる。
「ナナシ」
「なんですか?」
テレビ画面から目を離さず、キャラクターを操作する手も止めることはないまま返事をする。先輩は何も言わずにぎゅっと腕の力を強め、私の肩に顔を埋める。
「なにしてんの」
「何してるって…ずっと隣で見てたじゃないですか」
もごもごと肩口で喋ったあと、ぐーっと押しつぶすように背中に体重をかけられ、前傾姿勢にさせられる。
「今ボス戦なのでもうちょっと後にしてください」
「……」
どうしようもないのでそのままの姿勢で続けるも、画面は見づらいし操作もしづらいしでとても勝てそうにはない。しばらく粘ってはみたものの、無慈悲にもゲームオーバーの文字が目の前に現れた。
「先輩」
カタンとコントローラーをテーブルに置く。先輩の体重に逆らうようにぐっと力を込め体を立て直し、そのまま頭ごと先輩にもたれかかった。それで先輩の機嫌は直るかと思いきや、何故だか急に手が怪しい動きをし始める。
「えっちなことはなしですよ」
「……」
思っていた反応とは違い、あっさりやめてくれたのがちょっと意外だった。いつもならそのまま押し切られることが多いのに。
先輩は私の胸を触っていた手をお腹に回して抱きしめ直すと、んー、と唸りながら頬を擦り寄せてきた。
「どうしたんですか?今日は甘えん坊さんですか?」
「うん」
素直でかわいらしい返事が返ってきて、たくさん甘やかしてあげたくなる。思わず頬が綻んだ。
「先輩、一回離してください」
「やだ」
「どこかに行っちゃう訳じゃないですよ」
拒否する言葉と共に一度強まった腕の力が緩み、渋々、といった様子で開放される。ソファから立ってくるりと先輩の方を向き、軽く腕を開いた。穏やかな顔でちょっとだけ嬉しそうな笑みを浮かべた先輩が腰にぎゅっと抱きついてくる。お腹に当たる頭を優しく抱え込んだ。
ぐりぐりと2・3度頭を押し付けたあと、先輩はちらりと顔を上げて私を見る。優しく頭を撫でてみると、満足そうに再び私のお腹に埋まった。ぎゅーっと強く抱き締められる。
たまにはこんな先輩もかわいいなと思った。