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揺らぐ揺籃



毎月恒例の嫌な期間が訪れると、決まって自分が女であることを酷く恨む。殴られたような痛みを絶えずあげている下腹部を擦りながら、洗いたてのふかふかなベッドの上で悲痛な呻き声をあげていた。


「こればっかりは俺にもどうにもできねぇしなあ」


「もうやだ、子宮取りたい」


隣に腰掛けている燕青が宥めるようによしよしと頭を撫でてくれる。ほんとは今日もやらないといけないことがあるんだけど、腹痛が思った以上に強すぎて、ついには立つことすらできず床に崩れ落ちてしまった。涙さえ滲み出てしまう痛みに喘いでいたら、起こしに来た燕青が「よぉしマスター、今日は休みだ!」と言ってうずくまる私をぬいぐるみよろしく抱き上げてベッドに寝かせてくれた。それからしばらくの時間が経つが、痛みが消える様子も和らぐ様子も全くない。泣きたい。


「私も男になるぅっ」


「男になっても生涯守り通すよ、マスター」


「イケメンかよ」


「マスターの一番の従者だからな!」


「燕青っ」


からからと陽気に笑う彼の腹部にぎゅうっと抱き着く。うわ、刺青のせいでめちゃくちゃ肌ひんやりしてる。しかも履いてるスボンが凄いごつごつしてて痛い。だからって離れるわけじゃないけど。割れた腹筋にぐりぐりと頭を擦り付けると、上で燕青の笑い声が聞こえた。


「いつも以上に素直だねぇ」


「だって痛い。痛いし、なんかもういろいろなことで泣きそう」


月イチのそれが訪れるたび何故だかいつもとは違って無性に泣きたくなってしまう。泣いて泣いて、喉を枯らしても物足りないくらい。泣き疲れて眠っても、また起きて泣きたくなってしまう。些細なことでも泣きそうになってしまうから、私は尚更この期間が嫌いだしいつも以上に我を張ってしまう。


「いいよぉ、泣きたいってんなら存分に泣くといい。俺が居るからさ」


だけどこうやって燕青がそれを許すたび、頭を撫でてくれるたび、私はあやされる赤子のようにその腕の中で眠ってしまうのだった。
泣きたい気分も下腹部の痛みも、全てを忘れて。