会話文のみ。
「おい雑種!」
「なんですか、王様」
「貴様我との約束をよくも破ったな!」
「いや言ったじゃないですか、『明日が早いので無理です』って」
「何故我が雑種の些事に付き合わねばならんのだ。呼ばれたら来い、何を置いてもだ」
「そんな無茶言わないでくださいよ」
「聞けぬと言うか雑種」
「実際明日も用事ありますからね、私。王様今日はおひとりで寝てください」
「何!?」
「昨日もそうですが、朝は早い日は別々で寝ます」
「そのような戯言を赦すはずなかろう! 貴様に決定権があると思うなよ?」
「いやでも実際ほんとに別々で寝たいんですけど。私を抱き枕にするのはいいとして、早く起きないせいでなかなかベッドを抜け出せないんですよ。それで毎回私が怒られますし」
「っは! 何かと思えば全くくだらんことだったか!」
「そりゃあ王様からしたら些事かもしれませんが、定刻遵守する私からすればこの上なく嫌なんです! なので今日から自室に戻ります」
「聞いておらんかったのか? 決定権は貴様には無い」
「ならもう別の人と一緒に寝ます」
「たわけめ! 尚赦せんわ!」
「なら一週間くらい我慢してくださいよ。そしたら抱き枕でも膝枕でもなんなりしますから」
「『ひざまくら』とはなんだ」
「文字通り膝の枕ですよ。人の太腿の上に寝るんです」
「ふむ、よし雑種」
「やりませんよ」
「おのれぇっ」
「だって今から寝ますし。膝枕してたら私が寝れません」
「では疾く我の褥に参れ」
「だから嫌ですって、って王様! 腕引かないでください! ちょっ、痛っ」
「貴様が悪いのだ雑種。王たる我の言うことを聞かぬとは、とんだ不敬者よなぁ。しかし、喜べ雑種! 今宵の我は気分が良い。故にその首、今しがた貴様の胴体と繋げておいてやる。だが二度は言わん。疾く我の寝室に来い」
「ああもう、明日も早いのに」
「我を荏苒な奴と捉えるか」
「実際そうなんですって」