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揺籃の中で眠る



深夜のカルデアは物を落とした音だけでも数々の英霊達が目覚めてしまうほどの静寂に包まれている。子供のざわめき、人の往来、調理場から漂う芳しい香りの一切は、この時間には影も形も現さない。しんしんと降り続く雪景色を窓一枚を隔てたマスターの部屋に、私は不寝番として訪れていた。薄い布を覆って寝息を立てるその様は、いつもの凛々しさから程遠いほどにあどけない。歳相応といってもいいだろう。それほどに華奢であった。耳を澄ませば聞こえてくる寝息が、気付けば小さな呻き声へと変わっていた。安らかな眉間に苦渋の色を浮かべる。そしてまるで首を絞められているかのように切羽詰まった言葉を漏らす。

柔い唇から漏れる言葉は震えていた。齢いくつにしても戦いというものは慣れないはず。精神が傷ついても可笑しくはない。微かに震える手のひらをそっと包み込んだ。それによって何かの糸が切れたのだろう、伏せられた彼女の眦から透明に輝く雨が一筋シーツに染みを作った。いくつもの雨が降り続く。言葉を漏らす唇は、いつもの彼女のように自身を噛んで言葉を殺そうとした。震える唇も、震える言葉も、全ては彼女の偽りげのない姿。その肩は細く、唇は容易く心根を零してしまうように頼りない。けれども、私は。


「大丈夫よマスター。何があっても私が守るから」


貴女を守るために私は契約を交わしたのだから。だから、どうか、その夢は穏やかでありますように。