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流れ星



※会話文のみ。










「イタチさん、イタチさん」


「どうした」


「月、綺麗ですね」


「ああ。今日は満月だからな」


「三つ並んだら月見団子ですね」


「そうだな」


「味、どう思います?」


「冷たくて仄かに甘そうだと、俺は考えるが」


「甘党なイタチさんらしいや」


「お前はどうなんだ?」


「そうですね、硬くて甘くない塩っけが効いた味だと思います」


「酒のつまみか」


「ワクですから私」


「程々にしておけよ」


「あ。流れ星」


「よく見えたな、俺には見えなかった」


「偶発ですよ。そういえばイタチさんって、流れ星にまつわる逸話って知ってますか?」


「いや、知らないな。願掛け以外にあるのか?」


「それがあるらしいですよ。流れ星が落ちる時、どこかで誰かの命が潰えたのだと伝えられています」


「もしそうなら離れ離れになっても解りやすいな」


「彗星が軌道を通っただけなのにどこぞの誰が死んだかなんて解りやしませんよ」


「冷めてるな。お前らしいと言えばらしいが」


「いちいち空を見上げたりなどしませんからね。追い忍と対峙してる時余所見なんてしたら首が飛びますから」


「だが死ぬ命があるからこそ芽吹く命もあると、俺は思う」


「踏み台にされるなんて真っ平ですがね」


「忍は元来踏み台のようなものだろう。影に生き、影より守りて、影で死ぬ。耐え忍ぶことこそ忍の本質。俺たち忍がこうして前線に立つからこそ里のみんなは変わらず過ごしていける」


「我慢なんて性に合わないですね。私は自分に素直に生きると己に掲げていますから。後ろで笑っている人達なんてどうでもいいんですほんとうは」


「なら何故お前はここに立っているんだ? 守りたい者が居ないお前にとってこここそが踏み台と呼ぶ場所だろう」


「守りたい者なら居ますよ」


「意外だな」


「他人に踏み台にされ、それを我慢するのは真っ平御免ですがね。ただ、踏み台にされても良いと思える人がここに立っているので、一発殴った後に踏まれようかなと」


「言いながら俺を殴ろうとするのはやめてくれないか」


「避けないでくださいイタチさん。当たるべきですよここは」


「痛いのは好きじゃない」


「ねえイタチさん」


「なんだ?」


「空なんて見ないでくださいね」


「唐突だな」


「私が死ぬ時はちゃんと報告しますから」


「そうさせないためにも頑張らないとな」


「お互い様ですねそこは。じゃあもし私が死んだら、来世もまた会ってくれると約束してくれますか」


「それは難しい。お前が俺を覚えているかも、俺がお前を覚えているかも解らない。それに俺が転生できるとも限らない」


「ムードを読まない方ですね。ならもういいです、一方的に約束します。来世もまた会いましょう。ここではない平和などこかで」


「来世などというものは信じないタチなんだがな、しかしお前がそこまで言うなら約束しよう。来世は俺から探そう」


「月が見える場所で待ってますね」




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現世に見切りをつけ来世を信じる夢主。

現世で夢主と幸せになりたいと思うイタチ。