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信じなくてもいいけど



万年ドベなうずまきナルト。それはテストの成績のみならず術の練度においてもそう。いつまで出来損ないの影分身に相手してもらってるのさ、いい加減ちゃんとしたものを出しなよ。私みたいにね。


「いきなりクナイ投げるとか酷いね」


「うるせー! 修行の邪魔すんなってばよ!」


「これくらいで精神乱しちゃったの? あらら、それはごめんね」


「乱してねぇってばよ!」


小さな犬のような喚声をあげて喚き散らす彼を、太い小枝に座って見下ろしながら嗤笑した。笑うと彼は輪をかけて怒り出す。そんなに怒って喉は疲れないのだろうか。言葉を発さず無言で見下ろす私に飽きたようで、彼はふいっと顔を背けて地面に突き刺さった丸太に向き直る。それは手裏剣の的で、けれどもクナイは的から随分離れた場所に乱雑に刺さっている。一本も刺さっていないところを見るにもはやそれは才能の域かもしれない。上忍の私に喧嘩を売る前に己の力量を今一度理解した方がいいんじゃない? ナルトくん。


「今に見てろ、どの火影たちをも越すすげぇ火影に俺はぜってーなるからな」


サイン欲しいって言ってもくれてやらねぇってばよ!と真剣な眼差しで言うものだから、気に入らなくて「せいぜい頑張りなよ万年ドベくん」とこれまた子供じみた嫌がらせして腰を上げた。下の方できゃんきゃん喚いてる様子だが、言い返す気は毛頭ない。だいたい子供相手にムキになるのも疲れるしね。黄色い彼を見下ろしながらぼんやりと己の思考に耽る。揶揄されるたび彼は「火影になってみんなに認めてもらう」と息巻いて周囲の蔑視も跳ね除ける。

ほんとうは寂しがり屋な泣き虫なのに、彼は弱音ひとつ吐かない。こうやって私に揶揄されても持ち前の意地で突っぱねる。可愛げ無いと最初は思ったけどそれに惹かれている自分が居ることに最近気づいた。全く以て可愛げ無いことだ、頑張る彼に素直な応援ひとつ口にできないなんて。だけどねナルトくん。みんなに認めてもらう前に、少なくとも私は君を認めているんだよね。下手くそな手裏剣術を繰り広げる彼に、そんなこと口が裂けても言ってやるつもりはないが。