あなたはこの世の誰よりも、


荒い息をついて、ジゼルは飛び起きた。

額に汗が滲んでいる。心臓がうるさいほどに鳴っていた。

「……またか……」

息を整えながら、天井を見上げる。

最近、よく夢を見る。

いや、夢というより過去だ。

もう何年も思い出さないようにしていた、忘れたはずの記憶。

それがまるで昨日のことのように、ありありと蘇る。

夢の中の自分は幼く、
ただ兄に抱きしめられることが、世界のすべてだった。

けれど、最後の場面——あの夜だけは、違った。

あの夜の続きを、夢は見せなかった。

ジゼルは唇を噛む。

「……僕は、どうしたんだっけ」

覚えている。

ノゼルが触れてきたこと。

自分が拒まなかったこと。

それは、ただ流れに身を任せたのか——それとも。

「……」

夢の中の少年は、もう何も考えないようにしていた。

けれど今の自分は、違う。

あの夜の続きを知っている。

あの時、僕は——。

静かな夜の中、ジゼルはひとり、目を閉じた。

悪夢の先にある、記憶の続きを思い出しながら。



誰よりも恐ろしく、おぞましく、逃げたくて仕方のない人。

けれど誰よりもあこがれて大切で優しくて愛しくて、

あなたの隣に、立ちたかった。


あさぼらけと一等星