「第三回」ノゼル・シルヴァ物真似選手権
広間。夕食後ののんびりとした時間に、団員たちは酒を飲んでいた。もちろんそこにはジゼルもいたのだが、
「……なんか最近、ずっと機嫌悪いよな、ジゼル」
「は?」
ジゼルが不機嫌そうにフィンラルを睨む。
「ほら、ちょっとしたことで舌打ちしたり、ぼんやりしてると思ったら突然ムッとしてるし……何かあったんじゃねえの?」
マグナが酒瓶を片手に続ける。
「なんでもねえよ」
ジゼルはグラスを回しながらそっけなく答えた。
「まあまあ、そんな時は楽しいことをしよう!」
ラックがいきなり立ち上がる。
「またやろうよ!ノゼル・シルヴァ物真似選手権!」
「……は?」
「おお、それいいな!」マグナが手を叩く。
「前回、団長が圧倒的完成度で優勝しちまったけど、今回はいけるんじゃねえか?団長そもそも帰ってきてねーし」
「待て、そもそもの話なんで俺の兄貴の物真似なんて……」
ジゼルは困惑するが、すでに団員たちはやる気満々である。
「決定! 第三回ノゼル・シルヴァ物真似選手権!!」
エントリー No.1:ラック・ボルティア
ラックがスッと立ち上がり、腕を組んで目を細める。
「……その程度か、ジゼル」
「いや、兄貴そんな言い方しねえだろ」
「じゃあこれは?」
ラックは髪をかき上げ、わざとらしく溜息をつく。
「……俺の指示が聞けないのか?」
「なんかイラッとするなぁああ」
ジゼルが眉をひそめると、周囲の団員たちは爆笑した。
エントリー No.2:マグナ・スウィング
マグナは髪を後ろに流し、わざと気取った声を出す。
「ジゼル、ああ俺の星、俺の光、俺の生命……俺の全てよ。もうどこにも行くな……」
「どこのオペラ俳優!?」
ジゼルが吹き出しつつも即ツッコミを入れ、団員たちはさらに笑い転げた。
エントリー No.3:フィンラル・ルーラケイス
フィンラルは少し考え込みながら、スッと真面目な顔を作る。
「ジゼル……お前を守る」
「ちょっと待て、今のは似てたぞ」
ジゼルが思わず真顔になる。 なんで似てんの?と怪訝な顔をする彼に慌てふためくフィンラル。
「いやいや、真似だからな? 似てないとおかしいだろ??」
おや、思っていた反応と違う。前までのジゼルなら細かな演技指導を入れてきたのに今回は似ていることを嫌そうにする。むしろ、全く似ていなかったラックやマグナを見ていた時の方が楽しそうだったな……?
突然の乱入者:ヤミ・スケヒロ
「何やってんだ、お前ら」
いつの間にか、ヤミ団長が腕を組んで入り口に立っていた。全員が凍りつく。
「……やべえ、前回と同じパターンだ」マグナが小声で呟く。 しかしヤミは状況を把握したのか呆れたように溜息をついた後、突然低い声で呟いた。
「ジゼル……愛してる」
「っきっっっっしょい!!!!やめろおおおお!!!」
飾らない愛の言葉。しかし特筆すべきはその完成度。ジゼルが頭を抱えて叫び、団員たちは大爆笑した。
こうして、第三回ノゼル・シルヴァ物真似選手権は大盛況のうちに幕を閉じたのだった?