ケンカする話


シルヴァ邸の庭に、夕陽が長い影を落としていた。
「兄様なんて嫌いだ!」
ジゼルはぷくっと頬を膨らませ、腕を組んでそっぽを向いた。
「……くだらん」
ノゼルはため息をつきながらも、微妙に視線をそらしている。
「くだらなくない! 兄様はいつも訓練ばっかりで、俺と遊んでくれない!」
「お前も訓練をすればいいだろう」
「そういうことじゃない!」
ノゼルは困ったようにジゼルを見つめる。
この日、ジゼルは朝から楽しみにしていた。今日は母が出かけていて、妹たちの世話をしなくてもいい。だから、ノゼルと二人で久しぶりに庭で遊べると思っていた。だが、いざ誘うと「訓練がある」と断られたのだ。
「俺は、兄様と一緒にいたいだけなのに……」
ぼそっと呟いたジゼルに、ノゼルの眉が少し下がる。
「……仕方ないな」
「?」
「一時間だけだ。付き合ってやる」
「……ほんと!?」
「ただし、剣の訓練に付き合え」
「うっ……! そ、それは……」
「遊びたいんだろう? なら、遊びの一環として訓練するんだ」
「ううう……でも兄様、手加減してくれないじゃん……!」
「当然だ」
「鬼! 鬼畜!」
結局、ジゼルは不満げにしながらも、嬉しそうにノゼルと訓練をするのだった。
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「兄弟喧嘩 ー 現在」
(ジゼル26歳、ノゼル30歳)
「いい加減にしろ、ジゼル!」
「はぁ!? 何怒ってんだよ!」
シルヴァ邸の応接室に、兄弟の怒声が響いた。
きっかけは些細なことだった。
黒の任務で王都に立ち寄ったジゼルが、軍の上層部と顔を合わせた際、またもや「黒のやり方は規律に欠ける」と嫌味を言われたのだ。
それに対してジゼルが「ならお堅い銀の奴らだけで何とかしろよ」と皮肉を言ったのが悪かったらしい。
「お前が余計なことを言うから、俺が後処理をする羽目になるんだ!」
「何が後処理だよ! 事実じゃねぇか!」
「軍は規律で動いている! 無駄に反発してどうする!」
「兄貴は相変わらずだな! 俺の言葉なんて、最初から聞く気もねぇくせに!」
ジゼルが大きく息を吸い込んだ。
「結局、あんたは俺のことを“問題児”としか見てねぇんだろ!?」
「そう言わせているのはお前自身だろう!」
「……っ」
一瞬、口をつぐんだジゼルに、ノゼルは苛立たしげに髪をかき上げる。
「……お前は昔から変わらん」
「そっくりそのまま返してやるよ」
冷えた空気が漂う中、ジゼルは苛立ちを抑えきれず部屋を飛び出した。
後に残されたノゼルは、扉を見つめたまま、静かに息を吐いた。
「……変わらんのは俺の方か……?」
独りごちた声は、誰にも届かないままだった。
あなた:
変わらんのは俺の方か……?という独り言がいいですね!この続きをどうぞ
ChatGPT:
「兄弟喧嘩の続き」
ノゼルは扉を見つめたまま、ゆっくりと息を吐いた。
「……変わらんのは俺の方か……?」
ジゼルと口論になるたび、ノゼルは同じことを思う。
「アイツのことを考えて動いているつもりなのに、どうしてこうなる……」
軍の規律を守ることも、家の名誉を守ることも、ノゼルにとっては当然だった。それがジゼルのためにもなると信じてきたし、今もそう思っている。
けれど、ジゼルはいつもそれを否定する。
「聞く気がねぇのは兄貴の方だろ!」
先ほどの怒鳴り声が頭の中で反響する。
「……俺が間違っているのか?」
何度も自問しても、明確な答えは出ない。
ふと、視線を落とすと、床にはジゼルが飲みかけたままの茶が置かれていた。
ノゼルはそれを手に取り、ふと口元に運ぶ。
……まだ温かい。
「……」
少しだけ眉を寄せ、ノゼルは静かにカップを置いた。
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「……チッ!」
一方、その頃のジゼルは黒の拠点へ向かうために王都の路地を歩いていた。
「なんなんだよ、クソ兄貴……!」
悔しさと苛立ちが入り混じり、胸の奥がざわつく。
(俺のことなんて信じちゃいねぇくせに……)
昔と同じだ。どれだけ自分の意思を示しても、ノゼルは「兄」としての考えを押し付けてくる。
――けれど、あの最後の一言。
「変わらんのは俺の方か……?」
思いがけず聞いてしまったその独白が、ジゼルの心に引っかかっていた。
「……アイツ、本当に変わってねぇのか?」
兄の言葉を反芻しながら、ジゼルは舌打ちをする。
「考えるだけ無駄だ」
そう言い聞かせながらも、胸の奥のざわつきは消えずに残り続けていた。


ああでも。ノゼルと対等に言い争うなんていつぶりだろう。そもそも最後に喧嘩らしいけんかをしたのはいつだったか


あさぼらけと一等星