「第二回」ノゼル・シルヴァ物真似選手権
黒の拠点の広間には、何とも言えない緊張感が漂っていた。
「……で、なんでまたこんなことになってるんだ?」
ジゼルが腕を組みながらテーブルにもたれかかると、目の前の団員たちはニヤニヤと笑いながら並んでいた。
「いやぁ、なんか最近のジゼル、元気ないじゃんか?」
マグナが肩をすくめると、ラックも続けた。
「だからさ、ちょっとでも気分転換になればいいかなーって!」
「意味がわからねぇ」
「ま、そう言うなって! 第一回も意外と盛り上がったろ?」
「俺は参加してねぇがな」
「というわけで!」フィンラルが手を叩いて宣言する。「第二回 『ノゼル・シルヴァ物真似選手権』、開催だ!」
ジゼルは顔を覆った。「バカしかいねぇ……」
「そんなこと言うなよ、団長も参加するか?」マグナがヤミを見る。
「は? めんどくせぇ」ヤミは面倒そうに足を投げ出しながら葉巻を吹かした。「ま、でも暇つぶしにはいいかもな」
「おっしゃ! じゃあ、トップバッターいくぜ!」
第一走者:ラック・ボルティア
「俺はノゼル・シルヴァ……」
ラックが低い声で言いながら、髪をかき上げる。
「黒の暴牛の連中は、どうしようもない下衆の集まりだ」
「おい、言い方ァ!」マグナがツッコミを入れる。
「なんだ、正直な感想を言ったまでだぞ?」
「てめえ、それはただの個人的な感想だろうが!」
「ダメかー」
「つーかお前、ノゼルのことどれくらい知ってんだよ」ジゼルが呆れながら呟いた。
第二走者:フィンラル・ルーラケイス
「ふっ、貴様ごときがシルヴァ家の名を口にするな」
フィンラルは腰に手を当て、気取った表情を作るが、その口調がどうにも軽すぎる。
「違ぇな。まずノゼルはそんなに軽いトーンで喋らねぇ」
「くそっ、やっぱりシルヴァ家の貴族っぽさを出すのが難しいな……!」
「お前の場合はまず軟派さをどうにかしろ」
第三走者:マグナ・スウィング
「ジゼル……貴様、また無駄なことをしているな」
「おぉ、なんかちょっと雰囲気出てる!」
「だろ? だがな、兄としてお前を――」
「兄として?」
「……兄として?」
「あ、やべっ」
マグナの顔が一瞬で青ざめた。
ジゼルは目を細めてマグナの肩を叩く。
「……お前、今なんか地雷踏まなかったか?」
「す、すまん! 兄としてって言うと、なんか自然に出ちまって……!」
「二度とそのセリフを俺の前で言うな」
「はい……」
第四走者:ヤミ・スケヒロ
「んー……じゃあ俺も一応やっとくか」
ヤミがダルそうに立ち上がり、ゆっくりと前に進む。
「貴様……まったく、手のかかる弟だな」
低く抑えた声、堂々とした立ち姿。
「おぉ、意外と似てる!」
「俺の弟であることを自覚しろ、ジゼル」
「……」
静寂。
ジゼルはピクリとも動かず、団員たちは顔を見合わせる。
「……団長、ちょっとそれはガチすぎるんじゃねぇの?」
「へ? そうか?」
「つーか団長、なんでそんなに再現度高ぇんだよ!」
「いや、なんかジゼルがノゼルの話するたびに聞いてたら、いつの間にか覚えちまった」
「こええよ!」
結果発表
「さて、優勝は……団長だな」
「文句なしだな」
「異論ねぇ」
「俺も納得した」
団員たちは拍手し、ヤミは「あー、つまんねぇ」と言いながら葉巻を吹かす。
ジゼルは顔を覆った。「俺の人生、どこで間違えたんだ……」
「ま、気が晴れたならいいじゃねえか!」
「晴れねぇよ!!」
こうして、黒の団員たちによる 「第二回ノゼル・シルヴァ物真似選手権」 は幕を閉じたのだった。