思わずあふれた秘密の話
ジゼルは、ふっと目を覚ました。
洞窟の中は相変わらず寒く、しかしノゼルの体温に包まれているせいか、そこまでの冷たさは感じなかった。
──ああ、そうだった。
無理やり抱き寄せられて、散々抵抗したものの、結局こうして温もりに甘えている。
(……クソ、落ち着け)
未だに胸の鼓動は速いままだ。密着したまま眠っていたせいか、それとも──
横を見ると、ノゼルが眠っていた。
整った顔立ち、凛々しい眉、閉じられた瞼の奥にある鋭い瞳。普段は決して見せない無防備な姿がそこにあった。
ジゼルは静かに息を呑んだ。
こんな顔を、昔は何度も見ていた。
幼い頃、眠るノゼルの隣に忍び込んでは、腕にしがみついていた。あの頃は、ただ安心できたから。あの兄がいれば、自分は守られるのだと信じていたから。
──でも、もう違う。
今、目の前にいるのは、かつて憧れた兄ではない。
冷たい檻に閉じ込めた兄。自分を認めてくれなかった兄。
それなのに。
(……なんで、こんな……)
まるで、昔みたいに。
あの頃の感覚が蘇る。甘くて、切なくて、どうしようもない感情。
「…………」
ジゼルは、そっとノゼルの頬に指先を這わせた。
普段なら絶対に許されない行為。彼が起きていれば、決してこんなことはできない。
けれど、今なら。
たった今だけなら。
「…………はぁ」
自分でも呆れるくらい、深いため息が漏れた。
そして。
ジゼルは、そっとノゼルの唇に触れた。
かすめるような、淡い口づけ。
本当に一瞬だけのつもりだった。
けれど。
唇を離す瞬間、心臓が跳ねた。
──もっと。
そう思ってしまった自分に、ゾッとする。
(俺、何してんだ……)
顔が熱い。寒さのせいじゃない。これは──
「っ……」
ジゼルは慌ててノゼルから距離を取った。
そして、壁にもたれながら、額を押さえる。
(……変わらんのは、俺の方か……?)
囚われているのは、どっちなんだろうな。
そんなことを考えながら、ジゼルはもう一度目を閉じた。