永遠に消えない烙印を


「お前か。」


 キングが、唐突に足を止めた。見上げるより先に言葉が降ってきた。



​─────は。いま、なんて言った???


 顔を上げればそこには満面の笑みを浮かべた悪魔がいた。それは、今まで一度も見たことがないもので。


「やっと、見つけた」


 頭が理解するより先に身体が動いた。おれは脱兎のごとく駆け出した。まさに言葉通りに。

 だってあの目。……捕食者だ。

 食われる。と本能が叫んでいた。今まで何度も客を相手した。おれを人だと思っていない、ただの快楽の捌け口として見る男ども。玩具のひとつを弄ぶように扱う女ども。

 でもあいつは違う。何かが決定的に違う。
 
 知らない。知らない知らない知らない!!

 一心不乱に足を動かせば、いつしか職場に帰っていた。驚く部下たちを後目に部屋に逃げ込む。

 なんだ、何が引っかかったんだ。一体どこが。何で。どうしてバレた。いやそんなことはどうでもいい。早く、はやく逃げなければ。来る。あいつが来る。

 荷物。まとめて。そんな時間があるわけない。
持つとしたら何を。

 ここはダメだ。あいつは知ってる。知られている。逃げないと。早く。はやく。ここではない場所。


─────どこへ?

​あいつらは、

​おでんさえも追い出したのに??



 まわる視界の中、簪が音を鳴らした。

 しゃらり。

 手に取れば切っ先が煌めいた。


 ずっと、見つかったら殺されるんだと思ってた。意図せず、あいつの秘密を知ってしまったから。褐色の肌。白い髪。死にたくなくて逃げた。

まだ何も見ていないのに。

約束が、叶えられていないのに。



でも。


​─────やっと、見つけた。


 あの時のキングの目が蘇る。あの瞳の奥に浮かんでいたアレは何だ。揺らめいていた炎の色は。

 何度も何度も見た。あいつが人を殺すところ。

 ミスをした部下。侵入者。偽者の女。いつもならすぐに燃やしていたのに。どうしておれはここまで来れた。なんでまだ炭にされていない??


 ……殺すため、ではないのなら。それならどうして探していた。捕まえてどうするつもりで。




 もしかすると、死ぬことさえ──


 おれは簪を持ち替えて、首筋へ突き刺した。



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