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ホンモノのヤッさんとかどうですか
「ガキの喧嘩に刃物たァ、随分物騒じゃねェか」

芭流覇羅と東京卍會の抗争で場地があわや刺されるという中、その男は現れた。
柔らかそうな金髪を後ろに撫でつけ、深緑のシャツに黒いネクタイを緩く締め黒いストライプスーツという、いかにもな風貌の男は場地の後ろにいた一虎をサッと組み敷いた。

「テメェらが勝手すんのはいいがよォ、ここは俺のシマだぜ?殺人沙汰つぅのは違うんじゃねェの?」

一虎を下敷きにしながら刃物で遊ぶ男が言う。
そして皆、男の言葉に顔色を悪くした。
“俺のシマ”男は確かにそう言った。さらに裏社会を思わせる格好から男の正体は容易に想像がつく。

『六道組 紫藤亮介』
ここいらを取り仕切る六道組の若頭、その人だ。

「で、誰か状況説明しろよ」
かったるそうに亮介がそれぞれの顔を見渡す。そしてその中に見知った顔を見つけると、苦々しげに顔を歪めた。

「おいおい万次郎、テメェ兄貴に顔向け出来ねェことしてねェよなァ?」
「…亮クンには関係ねェ」

ぶっきらぼうに吐き捨てたマイキーに亮介が舌打ちを零す。
「お前なァ…。まァいいや」
そして呆れたように見遣ると、一虎の上から退いて叫んだ。
「テメェらよく分かった。いや分かんねェけど。白いのが刃物持ち出した時点で黒いのの勝ちだ!いいな?」
「ふざけんな!」と芭流覇羅から声が上がるが、それを睨みつけることで黙らせた。

「ヤクザもんにもよォ、通すべき筋ってのがあンだがよ。テメェらはそれがなってねェ」
そしてニヤリと笑って続ける。
「オニーサンが直々に教えてやってもいいんだぜ?」

そして後に血のハロウィンと呼ばれる芭流覇羅対東京卍會の抗争は死者、逮捕者を出さずに幕を閉じた。



「ンで、万次郎。説明しろ」
組み敷いた相手が以前真一郎の店に押し入った奴だと分かり、亮介はマイキーと場地と一虎を呼び付けた。不安なメンツ故にドラケンと千冬、タケミチもその場に残ることになった。

場地の裏切り、稀咲の思惑、一虎の逆恨み等々子供が背負うにはあまりにも重すぎるそれに、一周回って笑いすら込み上げてくる。

「一虎クンよォ、オイタしたとき締め上げたよな?」
一虎と場地が真一郎の店に押し入った際、たまたま亮介が助けに入り、襲われた真一郎は致命傷を免れた。そして亮介による過剰防衛が行われ、一虎は暫く入院する羽目になった。しかしそれでも自責の念から逃れるために、一虎はマイキーを逆恨みしていたのだ。
「ッあの時の!」
「覚えててくれたンなら何よりだわ。ンで俺言ったよなァ。テメェがパクられンのは勝手だけどよォ、俺のシマで調子こいてっと殺すぞってな」
ヤクザというのは時に必要悪にもなり得る。六道組が睨みを利かせているために凶悪な犯罪が起きにくくなるのだ。その利点があるため、警察からある程度のお目こぼしが許されている。
しかし一虎のような勝手がまかり通ると、ヤクザもやりにくくなってしまう。だから筋を通せと亮介は脅すのだ。

「逆恨みつぅのもだせェし、つぅか真一郎の店に出資してる俺の身にもなれよ。バックに六道組が着いてる店がガキに襲われたんじゃ世話ねぇぜ」
最後に無防備な真一郎に対する愚痴を零すと、一虎の目を正面から見た。

「お前は何がしてェんだ?」
「オレは…」
「真一郎はテメェのこととっくに許してンだよ。その上で後は万次郎と一虎が解決しなきゃなんねェことだって放任してンだ」
「オレは…真一郎くんに謝りたい。マイキーにも」
「だってよ」

「はァ、シンイチローが許してんならオレが許さねぇわけにはいかないじゃん」
「ごめん、ごめんマイキー」

「あぁ、オマエを許す。これからも一虎は東卍の一員だ」

円満解決に黙って見ていたタケミチはホッと胸を撫で下ろす。千冬も場地との蟠りが解け、顔が綻んでいた。


「お前らさァ、ンなことばっかしてっと俺の組に入るしか道がなくなンぞ」
「亮クンとこならいいよ、入っても」
肩の荷が降りたマイキーが笑いながら亮介に倒れ込んだ。それを抱きとめながら、マイキーの顔に笑顔が戻ったことに安心する亮介だった。
「マイキーが入んなら、東卍の奴らも全員引き取って貰わねぇと」
「血の気が多い奴ばっか要らねェって」
ドラケンの言葉にゲェと顔を顰める亮介。その姿は六道組の若頭というよりは本来の20歳の青年の姿をしていた。



後日談として、芭流覇羅は敗北を以て東京卍會に下ることになった。
舎弟からその報告を受けた亮介は苦虫を噛み潰したような顔をした後、真一郎に愚痴ることに決めた。
先日の一件で東京卍會を勝手に監視下に置くことに決めたのだが、こうも血気盛んな連中が集まるとそれも無駄に思えたからだ。

ちなみにあれから東京卍會の幹部連中には「亮クン」「亮クン」と懐かれてしまった。それを見て部下たちが「若様に何を!」と顔を青くしているのだが、それはまた別の話だ。
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