「報告によれば日本で屍草の死体が発見されたのはここ横浜です。どうやら米国から貿易船で帰ってきた日本の通訳者が被害者のようです。これまで顕になっている屍草の被害者は全国で七四〇〇人を超えています」
伏黒が補助監督から受け取った報告書を読み上げる。
「ん、ありがと。悠仁、悟お前ら被害者の家族んとこ行って詳しい話聞いて来て」
「うっす!」
「いいけど世理は?」
「俺ら三人でその船に乗り込もうかと」
五条はやらかしても問題ない方への配置である。彼は優秀ではあるが、些か自由過ぎるきらいがあるのだ。
「屍草は不自然な広まり方をしてるのがきな臭いんだよな」
「それ僕も思った」
横浜から始まり次に屍草が発見されたのは呉。佐世保、小倉、東京、舞鶴、大阪、名古屋と点在している。横浜に持ち込まれたのであれば、そこからじわじわと広まっていくはずだ。
「誰かが意図的にそこに拡散させているとしか考えられないんだよね」
地図を見ながら五条が話す。
「その目的を私たちで洗い出すのね」
「船にあるかは知らねえけど、一応な」
「てか米国の貿易船だけど、世理さん米国の言葉読めんの!?」
「まあ勉強したからな、恵もそれなりに読めるし」
虎杖がキラキラした目で来栖と伏黒を見る。
「僕も読めるからね!」
「はいはい、じゃ解散」
来栖に張り合う五条だったが面倒くさそうにあしらわれ、不貞腐れながら虎杖を連れ街の方へ歩いて行った。
「俺達も行くよ」
「ねえ、世理さん。これ終わったら横浜観光していい?」
「おい釘崎」
「いいよいいよ、皆で美味いもんでも食おうぜ」
┈┈┈┈┈
「ねえな」
「ないわね」
「ないですね」
コソコソと船内を漁るもそれらしい資料は見つからない。第一屍草の被害者がこの船から発生した際、政府も隈無く調べているのだ。
だが来栖は政府が米国へ忖度する傾向にあることを知っていた。だからこそ何か見ないふりをした資料があると考えたのだが、どうやらその予想は外れたようだ。
「一旦ホテル戻んぞ」
二人を引き連れホテルに戻り、地図を睨めつける。
「共通するものといえば何だ」
「…海沿いですね」
「港街から普通に広まっていったとも考えられない?」
釘崎の言葉に来栖は首を横に振った。
「それならもっと広範囲に広まっても可笑しくない。あくまで局所的なんだよな」
「一人の死体からかなりの屍草が採れるとあるので不自然さはありますね」
「はあーわかんないわね」
うんうんと頭を悩ませて考えるも、情報が足りな過ぎる。
「ただいまー!」
元気な声と共にパタパタと足音が聞こえてきた。
「おかえり。悠仁、悟」
「うんただいま」
「情報をまとめるぞ」
来栖がそう声をかけると、どこからか腹の鳴る音が聞こえた。
「先ご飯でも食べよっか」
笑いながら五条が言うと、虎杖が恥ずかしそうに顔を赤らめた。