ガラクタからのアイラブユウ
ギザギザの刃に触れてみた。相手はその深紅の瞳を僅かに眇め、何がしたいんだと言いたげに視線を寄越した。
「……あー、キスしたい」
「はぁ?」
キスしたい。舌を捩じ込んで引っ掻き回したい。それからぐっちゃぐちゃに融かして、そのヒトとは思えない鋭い牙を一つひとつ丁寧に舌でなぞりたい。
凛は、俺に愉しいキスをもたらしてくれる。
「っ……ん……ぅ!」
いつもは低く威嚇するような声が、情けなくも甘ったるくなるのがたまらない。溢れ落ちそうになる液を柔らかく舌ごと吸って、抵抗を試みる手首を掴んだ。
これは別に力ずくでやろうと言う意味じゃない。おそらく俺は凛の腕力に敵わないだろう。だから力じゃないのだ。これは俺が凛に「拒むな」と告げているだけ、ただのコマンドだ。
「はっ、はぁ……名前っ」
「なーに?」
「しつこいんだよこの変態」
睨まれたって俺はなんとも思わない。凛と俺は、よく似ている。
――水に、囚われていた。
だからこうやって偽りに寄り添って、傷を気遣いながら泥に沈んでゆく。凛は抜け出そうと藻掻くけれど、俺はそれを見てまた目を閉じる。
「……変態? なら変態らしくしてやろうじゃねーか」
黒いタンクトップを脱がすと同時にその体を転がす。ベッドに体を縫い付けて、凛を見下ろす。
尖った牙が唇から覗くたび、なんだかどきどきする。凛になじられるように、俺は変態なんだろう。
「っ……!」
「俺、凛が死んだらその歯欲しい」
「……やらねーよ」
「欲しい」
「テメェ……俺の歯以外になんかねぇのか」
「勿論あるよ」
拗ねたような凛。相変わらず思考回路はガキみたいだ。そこが可愛らしいんだけど、些か扱いが難しい。
「……凛ちゃん」
「ハッ、答えになってねぇ」
「いいじゃん、凛ちゃんでさ」
ちゃん付けを指摘される前に躊躇いもなく覆い被さって、唇をふさぐ。かちりと軽く歯が当たって、そのまま割り開いて舌を絡めとる。舌の裏に当たる牙の感覚にぞくぞく、くらくら。
嗚呼。案外手放せないのは俺だった。
/20130827
凛ちゃんの鮫歯がすきです。
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