午前二時、酩酊
※大学生白石、同居中
意識が浮上する。ふわりと浮き上がるような優しいものではない。平衡感覚もろとも激しく揺さぶられ、吐き気と頭痛で目が覚めた。
薄く目を開けると、僅かにカーテンから漏れてくる街灯の光が揺れて、さらに吐き気がした。急に酔いが戻ってくる。布団を巻き込むように寝返りを打った。ぐらぐら揺れる感覚は消えそうにない。
「うう……アセトアルデヒド……」
「何や、もっと色気のある寝言ないんか」
「ごめん起こした? すごい頭ガンガンする……」
「大丈夫か? 俺もちょっと前に起きてん」
「飲み過ぎたな」
調子こいて宅飲みしたらこの様だ。つい自制が効かずに許容範囲を超えて飲んでしまう。となりで白石がもぞもぞ動いたのでそちらを向いた。
こちらを覗き込んでくる顔は、それは酷くやつれて見える。酷いのはまあ、お互い様だろう。
「ねぇ、ところで色気のある寝言って何? 名前でも呼べばよかったの?」
「ああ、それええなぁ。むっちゃ理想やわ」
「俺の潜在意識によく言っといて」
「……そら無茶や」
頭上より僅かに高いところでくすくす笑う。こんないかにも悪酔いしましたみたいな顔じゃなければ様になっただろうに。
「……白石」
「何や」
「べつに、何も」
「はよ寝んかい」
「……うん、寝るよ。おやすみ」
寝やすい体制になって再び目を閉じる。くだらないことを話しているうちに落ち着いてきた。このまま眠れたら、明日の朝にはきっと楽になるだろう。
しばらくして、頭上から寝息が聞こえてくる。先を越されたなと見当違いなことを思いながら、そっとその距離を縮めた。さっさと寝ればいいのだけど、なんとなく寂しさの一抹というものを感じたのだ。
胸元から見える鎖骨。その辺りに鼻筋を埋めて息を吸う。俺も白石もアルコールの匂いがする。その中にいつも知っている白石の匂いを感じて、体の力を抜いた。
「……くら」
無意識に溢れ出た名前。深くそのことを考えるより先に、意識は微睡みに堕ちてゆく。頬に手のひらが触れた気がした。
/20141218
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