04



訓練兵から調査兵団へと自分達の選択をした。
壁外調査にむけての演習と陣形確認その他諸々濃密な一ヶ月を過ごし、そして、第57回壁外調査。

門が開かれ、外が見える。
調査兵団が取り戻そうとしている、ウォールマリアの区域だ。
長距離索敵陣形により、上手く巨人をかわしながら南へと進む。




名前とジャンは別の班だ。名前はそれでいいと思っている。いつまでもジャンに頼りすぎるのはよくない。
名前はエレン達と同じく、初めから調査兵団を希望していた。
ただエレンのような志はない。溝鼠の様な人生の最期を、まっとうだと錯覚出来る死に方がしたかっただけだ。
ある意味死に急いでいるのは名前の方なのだ。

「……しないのに」

味なんてしない。
ジャンは何を思ったのか、自分の味覚を取り戻そうとしてくれた。
言いふらしたりせず、ふたりだけであれこれ試してくれた。
名前はそれだけで十分だった。これ以上はいらないと言い切れるほどには満足だった。
名前は死ね、と言われたら死ねるタイプの人間だ。自分の命なんてどうでもいいと思っている。
ジャンは死にたくないと言う人間で、名前はそんなジャンが眩しかった。

名前は、心底ジャンを好いていた。
一心に馬を走らせて、不謹慎ながら物思いに耽った結果、導かれた答えだった。
彼のやさしさを、思い遣り。名前に向けられたもの全てが暖かく、心地よかった。

「……っ!」

巨人だ。先輩達が凪ぎ払われたのと同様、なす術なく地面に激しく打ち付けられる。
体に走る痛み。こちらは簡単に戻ってきたもの。
どくどくと血が流れ落ち、地面を赤く濡らしてゆく。
血濡れた手を口許へ。これだけでもかなり痛い。

「……へんなあじ」

血を舐めとれば、つんとした"鉄"と思しき味がした。死の縁に立たされて、都合よく味覚が戻ってきた。
ーーなんて笑えない。
どうせならジャンの努力に報いて欲しかったのに。
ちらりと自分の愛馬を見れば、可哀想なことに足が折れてしまっていた。これでは死ぬしかない。
死ぬしかないのは、自分も同じかもしれないが。
ぼんやり考える。
もしこのまま死んだ時の心残りはなんだ?
――ジャンにこの憎らしい事実を伝えられないことだろうか。
ジャンの心の患い事となってしまうかもしれない。それは嫌だ。



なんとか先輩達の馬のなかで無事な馬を選んて跨がる。
ジャンのいるであろう大体の方角に向かってひたすら疾駆する。
血が足りない。途中で行き倒れるかも知れない。
しかし、それでも走る以外の選択肢は頭になかった。


/20130819(私の口で腐ればいい)
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