世界は彼女の悪意で出来ている



※誰も報われない
※女主の頭はおかしい









木虎藍という少女は不毛な恋をしている。とてもとても不毛で、哀しくて、可哀想。
かわいそうって漢字で書くと「可哀想」、「哀しいと思うことができる」っていう解釈でいいのだろうか。生憎私はそんなに勉強ができる人間ではないので分からない。
彼女は頭がいい。顔もいい。人目を惹く美少女だ。さらに運動もできる。近界民をサクサク倒してしまうくらいには。
そして彼女はプライドが高くて、エリート意識も高い。そのくせ初心で、恋心を抱いている相手と碌に話せない。
まあ、その彼女が恋慕う男というのが私の幼馴染みなのである。


もさもさしたボリュームのある癖っ毛と、何を考えているのかよく分からない無表情。烏丸京介、十六歳、私と同い年。顔は確かにイケメンではあるのかも知れないが、息を吐くように嘘をつくクソ野郎である。
バイト先では熟女の財布を手玉に取り、(私の)可愛い可愛い可愛い小南先輩のピュアハートを弄ぶけしからん男だ。
そしてあのみんなのアイドル(あくまで私見)木虎ちゃんの心を奪いやがった。天罰が下ればいい。
つまり何が言いたいかって、なーに私の許可なくモテてるんだよオラ、ということだ。
木虎ちゃんの好意はわかりやすいし、小南先輩は確定ではないけれど少なくとも嫌ってはいないし恋に変わるのは時間の問題ってレベルだ。
これは由々しき事態なのである。




むしゃくしゃしたので勢いだけで烏丸に告白したらなぜかオッケーされた。そしてまた勢いだけで雰囲気がゲロ甘くなったのを放置してたら知らぬ間に男女の致すアレやソレを最後まで致してしまっていた。
この毛玉野郎が初めてのアレに戸惑いながらも的確にガンガン突いてきやがったので腰が重い。立ち上がれないためまくらに顔を埋めたまま撃沈していたら、無表情なはずの烏丸にすごく心配そうな顔をされてしまった。

「……なまえ」

顔近づけんな。そして私を抱きしめるんじゃない。
なんでそんな情けない声してんの。その整った顔ぶん殴るよ。犯人誰だと思ってるの、おまえだよ。
――なんて言うに言えずに私は未だに烏丸の腕に抱かれたままだ。お互いに無言。
耳元で好きって言われた。しおらしいところもあるんだね。
ゴメン、ここまでしといて何だけど、本当にごめんなさい。




私が本当に罪悪感を抱いているのかと問われたら、答えは否である。
私と烏丸の噂は音速を超えて広がり、当然それを耳にした彼女は、初めて私に会いに来てくれた。微笑みを絶やさずに私を睨みつける木虎ちゃんに向き合う。

「……なまえ先輩」

悔しさの滲んだ声で私を呼ぶ。可哀想に。かわいそう。可愛いよ。

「木虎ちゃんに、わけてあげるね」

欲しいでしょ。いっぱい貰ったからあげるね。飲み込めていない木虎ちゃんの無垢なくちびるめがけて、あと、すこし。
――嗚呼、やっと触れた。

「なまえ、先輩……?!」
「ふふ、烏丸と間接キス、だね」

私がわざとらしくキスとか烏丸とかを強調して言うと、彼女は茹で蛸のように赤面して走り去っていった。

「……やーらかい」

木虎ちゃんの柔らかさを何度も妄想で反復して、烏丸の姿を探す。
すぐに見つかったので手招きをすればすぐに私の隣に並んだ。そのまま両手で顔をつかんで、キス。それから角度を変えて何回か。
適当なところで唇を剥がし、烏丸の唇を服でぬぐってあげた。なんでそんな嬉しそうなの。

「珍しいな」
「……私が気分屋なの知ってるでしょー」

さて、また補充したところで最近、というか噂が流れてから元気のない小南先輩の所に行きますか。
今日なんて自分から事実を確認してさらに落ち込んでたもん。元気出るといいなぁ。



2015/09/15
勢いだけで書きました許してください
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