弐



「さて」

男が私の体を地面に無造作に置いた。もっと優しくしてくださいよ。…言わないけど。
こちらを向いたのでびくつきながら見上げる。背が高いので仕方なくなのだが、その目付きは凶悪すぎる。恐い。あと早く続けて欲しい。心臓に悪い。

「…何でしょう」
「……」

無言で頭を掴まれる。
咄嗟に何が起こったのか理解できない私。そのまますごい速度で地面に叩きつけられた。何かにめり込む感覚、走る激痛。

「へぶっ!」
「あ、直った」

抗議の声を上げようとしたが、直ったの一言で思いとどまる。鼻がとても痛むのだが、私には別の問題がある。恐る恐る辺りを見回す。
――ない。嬉しいことに、先程まで触れたくても触れられなかった身体はもうない。

「…もど、れた……?」
「よかったですねぇ」
「ええ、荒業でしたけど」
「家電を叩けば直るのと同じですよ」
「私まだ人間やめてません」

嬉しさと痛みで滲んだ涙を指で拭う。服についた土を軽く払ってから、改めて男に向き合った。

「一応、ありがとうございます」
「構いませんよ。ついでに一つ質問です」
「……なんでしょう」

――◯◯という街をご存知ですか?

思わず思考が固まる。

「……っ、えっと、地元ですけど」
「丁度よかった。案内してください。お礼だと思って」
「恩着せがましい!」

つい声を荒げると、そうですか?と首をこてんとする仕草付きで聞いてくる。先ほどとは違う恐怖で堪らない。大の男のコテン恐い。

「……案内、だけなら構いませんよ」
「どうも」

また再び建物の中に入り、暫く待たされる。現代人の格好になった男が戻ってきた。なるほど、これは準備がいる。
さて、街に戻ったら湿布貼ろう。仮病で学校を休めると良いのだが。


/20140404
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